移民1000万人と外国人参政権

どうやら、今はこの本の売り上げを押し上げて、Amazonのポータルに置くことで情報衆知をしよう、という祭が進行中らしい。
内容はあの多母神元空将監修の元、

・移民1000万人が外国人参政権を持つと日本が乗っ取られる

というテーマについて論じ、外国人参政権と移民1000万人の合わせ技は危険である、と溶いているもの。


外国人参政権も、移民1000万人も、それぞれしばしば引き合いに出るテーマなのだが、これを合わせるとなかなか危険。
この主張に対する反論としては、
「1000万人といっても全体のたった1割程度。10人に1人が日本人でなくなったからといっても、大多数は日本人なのだから問題はないし乗っ取られることもない」
というものが代表的なところなのではないか。
この後に「これだからネトウヨは」とか「保守は心配しすぎ」とか「日本はその程度では動じない」といったそれぞれの立場からの補足が付いたりはするだろうが、概ね「1割程度では大勢に影響は与えない」というところでは一致している。


が、実は1割あれば影響を出すには十分足りるのではないか、と思う。


民主主義は51%の支持を取り付けることができれば「多数派」を名乗ることができる。51%を掌握するには26%を説得できればよく、26%を意のままにしたいなら14%を味方にすればよい。
対立する意見が二つなら1/2より1%でも多ければよく、対立する意見が三つ、四つと増えていけば、そのぶん「第一党」を確保するのに必要なパーセンテージは実は下がる。
先の2009年総選挙における民主党の獲得票数は、実は全体の4割弱程度だったが、それでも議席は7割を得ることができた。2位以下の得票を死票にする小選挙区制では、そういうことが起こりうるという証拠だ。

2009年総選挙での民主の得票割合は、実は郵政選挙のときの自民とほぼ同程度で、自民から民主に流れた票の規模は有権者全体の10%程度だった。
1割である。
1割が動けば、与党は簡単に交代させることができる。
つまり、1000万人、1割というのは政権を交代、掌握するのに実は十分な数字と言えることになる。


もちろん、実際には1000万人が全て大人とは限らないが、親に連れられてきた移民の子供も成長しいずれは選挙権を得る年齢になる。
1000万人の外国人有権者というのが全て同じ指向性を持つとは限らないではないか、と言われるかもしれないが、現状で永住資格を持つ最大規模の少数民族コロニーである在日韓国人/朝鮮人は、日本から受けている「仕打ち」という括り方をすれば、概ね同じ指向性を持つと言って過言ではない。
今後増える定住外国人としては、中国人(大陸人)の増加が挙げられる。
実際、既に増えている。池袋北口周辺は何年か前から道を歩いているとたまに日本語が聞こえないことがあるくらい*1


そうした層が1000万人。
この1000万人を、
1億人3000万人 vs 1000万人
という構図で図ると、「1割にも満たない、たいしたことない」という感想になるのは納得できるところだが、実際には「1億3000万vs1000万」ではない。
以前にも触れているが、既に日本国内でも「民主55:45自民」という勢力構図があり、さらに社民、国民新、公明、みんなの党などの小政党が、それらの差を埋めるバランサーとして機能しようと狙っている状態だ。
諸々の小政党の支持者が仮に3000万人くらい(実際はもっと少ないと思うけど暫定で)だとして、残りの1億人のうち5500万が民主、4500万が自民だとしよう。鳩山政権が発足して半年、民主の支持率は落ち続けており、来週か再来週には危険水域とされる30%を割り込む勢いであることを考えると、民主の支持率は以前ほどは高くないかもしれない。
そうすると、民主と自民は拮抗してくるわけなのだが、そこに「1000万の外国人」という票田が出現したらどうなるか?


1000万を上積みすれば議席数で相手に大きく水を空けることができる。
日本人の多くは「政治は忌むべき汚らしいもの」という意識が強いので、参政意識は弱く周囲の動向に流されやすい。
そこに明確な指向性を持った1000万人の票田が現れたら――?
民主も自民も、これを味方に引き入れるという誘惑には耐えられない。
かつて自民が公明を連立に引き留めるために公明党提案の法案を実施したように、そして民主が社民・国民新を連立に引き留めるために、彼らの主張を一概に無視できないできたように、それぞれ公明・社民・国民新の立ち位置に、1000万人の外国人が立つことになる。
そうなると、競争する民主・自民は、それぞれ外国人にとって好都合な条件の政策を競争しあうことになり、また外国人の意向を色濃く反映した政権ができる可能性が高くなる。
中国人ロビーと韓国人ロビーが共同する可能性は必ずしも高いわけではないが、彼らの間には共闘できるテーマもある。
それらの1000万人の外国人が母国を捨てて日本に定着し、日本人として暮らしていくことを望むのであればまた話は別だが、日本国籍を得ずに母国の国籍を維持し、母国の命令に従順な政権を作るために日本に移民してくる、ということになった場合はどうか?


そこまで外国人に統一された意見があるとは思えないし、実際には外国人同士でも意見は割れるだろう。
割れるだろうけれども、割れた片割れの奪い合いに発展することは想像に難くなく、結局第一党を争う勢力のどちらもが外国人票田の獲得競争に揺れることになる。


そうすると第三極として外国人に対して排他的な挙動言動を取る勢力が伸びてくることになる。
極東ロシア、フランス、ドイツ、オランダなどなど、ヨーロッパの幾つかの国で極右の台頭が叫ばれるようになって数年が過ぎている。ネオナチも外国人排他勢力だが、実はアメリカの民主党政権というのも広義ではリベラル右翼であったりする。
どうも日本では右翼・右派=軍事的(旧日本軍的)=好戦的=戦争好き、そしてリベラル=中道左派=平和的という連想が働くためか、アメリカ民主党を右派として捉える向きは少ないのだが、そもそも右派というのは「自国優先主義」であるわけで。
アメリカにあっては民主党共和党アメリカ第一主義であるわけだが、アメリカのために国外の情勢・地勢を思案する共和党に対して、民主党は他国のことよりまずアメリカ国内の直接利益(内政)を優先する*2民主党は、実質としてはより右派的と言える。人種差別をせず黒人大統領を誕生させたのだから、そんなことあり得ないと思われがちだが、それも「アメリカ国内が国外を優先する」という思考であることの反論にはならない。
トヨタ問題は、アメリカが国有化したGMを救済するための茶番だという主張を信じるなら、アメリカは国内産業救済のために、ライバル企業を排他しようとしている、という説明もできてしまう。


二次大戦前夜もそうだったのだろうと思う。経済的にしんどくなってくると、「まず国内」「他人の台所より自分ちの今夜の飯!」という指向が強くなるのは避けがたい。
外国人移民は母国に家族を残した出稼ぎであるわけで、日本国内で稼いだ賃金は日本国内では消費しきらず、母国に送金される。日本の富が国外へ流出というようなことを言うつもりはないが、日本国内の消費の励起に結びつかないということは抗いようのない事実だ。


移民に仕事を奪われる云々に関して言えば、現状でも外国人が就いている仕事の多くは低賃金で日本人がやりたがらない仕事なので、仕事の奪い合い云々は発生しにくいかもしれない。が、同じ仕事でも日本人は受けないので外国人が、という形で人件費圧縮が行われてきたわけだが、派遣禁止、正社員雇用の促進が進んだら、結局日本人でも就職できる人数は少なくなり、安く雇用できるはずの外国人も職にあぶれ、しかし現場は常に人手不足で、高給取りの正社員は次々に「使い潰され」という状況に陥っていくかもしれない。
安月給の正社員、という身分はすぐに生み出されるだろうけど、果たして奢る生活に慣れた日本人がそれで満足できるかと言えば、結局そうした正社員生活も外国人労働者が占めるようになり……。


問題の根幹は、高度成長期とバブルという「奢った時代」を基準としない、その時代の成功体験は忘れる、ということを日本人自身が己に徹底すべしということではないかと思う。
現在の30代以前はバブル崩壊後に社会に出ているので、奢った時代の記憶はあまりなかろうと思う。下流/草食男子という括り方をされている、低消費世代などはこれに当たる。
40代後半以上の、バブル時代の高消費生活を今も忘れられない世代が完全に消え去るのにはまだ当分時間が掛かるだろうが、その間にその世代が1000万人の外国人奴隷を囲い込んでバブルを再現する夢を見続けようとする限り、1000万人移民と外国人参政権導入への奔流は止められないんではないだろうか。

*1:本当

*2:モンロー主義なんかその典型