やるな、レプリカ
僕自身はET-STIIを手に入れてウホウホなので食指は動かないのだが、レプリカ(モーターサーフィン)の新型が出回りだしたようだ。
レプリカは価格が安いこと、駆動方式(リアタイヤを駆動させる方式)、フックと本体の固定方式などがG-Motionと微妙に異なる。価格はともかく、それ以外の部分は、メリットとデメリットの裏表で、どちらを好みにするかという問題でもある。
バイクで言えば、悪路走破を楽しみたいならオフロードバイクに乗るし、サーキットを走るならレーサー/レーサーレプリカを選ぶようなもので、オフロード車とレーサー車のどちらが良いか悪いかというのは答えが出ない問題でもある。
このことを踏まえて、例えば駆動方式。
G-Motionはバードキャリーというカゴ状のものでリアタイヤの溝を直接噛んで回す、という方式を採っている。これがオーストラリアの特許らしく、写真や図での説明はできないのだが、口頭で言うとまあそういう感じ。メリットはラフロードに強い、ということ。路面からいろいろな異物が巻き上がってきても、少々のことでは駆動力が落ちない。デメリットは、エンジンのトルクをバードキャリー→リアタイヤで伝えるため、パワーロスが出る(バードキャリーが空転とか)場合があるということ。
レプリカはエンジンからチェーン2本(途中に中継ギアを挟む)を伸ばし、リアタイヤのリムに巡らせた大きなスプロケットにチェーンを直接掛けて回す。メリットはエンジンのパワーが全てリアタイヤに伝わる(空転によるパワーロスが生じない)ということ。オンロードではピカイチに早い。デメリットはチェーントラブルが多いということ。この乗り物はチェーンに負荷が掛かり続けるのだが、当然負荷が掛かったチェーンは伸びてくる。このとき、伸びたチェーンが暴れて脱落したり、パワーロスに繋がったりする。チェーンが2本あるということは、そのリスクは大きくなる。さらには、チェーンが泥や草などを噛んで脱落しやすくなるため、ラフロードに弱くなる。
駆動方式については、G-Motionとレプリカはどちらが良い悪いというよりは「どちらのメリットを取り、デメリットに目を瞑るか」という関係であるわけで、ユーザーがどこで乗るかという選択に従って長所短所は入れ替わる。
フックの固定方式の場合、G-Motionはパン側が完全に固定されていて動くのはアップリンク(オリグメントバーのフロント側付け根)とフックの先端(フロントタイヤのラバージョイントに接する部分)の2箇所だけ。対してレプリカは、この2箇所に加えてフックとパンを固定している部分が可動式になっている。3箇所動くため、ステアリングは非常に柔らかい。直進安定性と乗りやすさを求めるならG-Motion、ステアリングの難しさを受け入れてもトリッキーなノリ味を求めるならレプリカ、という選択になる。これも、ユーザーの好みに左右されるのではないだろうか(でも、初心者にレプリカのステアリングは難しすぎる(^^;)あれは慣れてからならおもしろいと思うけど)。
パーツの精度(フレームなどに当たりはずれが結構ある)ということと、ラフロード走行時のチェーントラブルなどが多く指摘されてきたレプリカなのだが、注目すべき点もある。
現在、レプリカを扱っている業者は幾つかあるようだが、ヤフオクで「モーターサーフィン」の名前で流している業者をこの数ヶ月チェックしている。が、ここがリリースしているモデルは、モデルチェンジが猛烈に早い。だいたい20数台リリースしたところで、もう新型になっている。
それも、モデルチェンジ時には、前回の問題点がちゃんと改良されている。
- 最初はブレーキなし、アクセルのみだった。
- 43ccのエンジンを49cc(実質は52cc)に変更して大排気量化してきた。
- プルスターターの他にプルモーター(セルスターター)が付いていた(が、これは後に廃止された)。
- 次にリリースされたときは、ディスクブレーキを装備してきた。
- 実はサイレンサー(エンジン消音器)も搭載している。
- 今年の初夏にリリースされたモデルでは、グリップ先端にキルスイッチが付いた(G-Motionは本体エンジンの上に付いている)。
- 夏に出たモデルでは、アクセルを固定する機能を装備してきた(これはエンジン付きマウンテンボードに見られるものらしい)。
- 9月に入ってから出てきた最新モデルでは、チェーンテンショナーを標準装備してきた。
G-Motionには、レプリカにあるアクセルロック、グリップ先端のキルスイッチ、チェーンテンショナーは実装されていない。(チェーンテンショナーは03モデル以前にはあったが、04、ST-I(2005DX)以降は省略されており、ユーザー各自が独自に改良している)
G-Motionとレプリカは、その開発コンセプトの違いから細部が微妙に異なるため、どちらが良い悪いとは一概に言えないのだが、2本のチェーンというアキレス腱を持つレプリカが、チェーンテンショナーを独自に装備してきたことは注目に値する。チェーン1本のG-Motionと、チェーン2本のレプリカでは、テンショナーを設置する位置も自然違ってくる。従来のシャシーに手を加えないとするなら(既存の成形用の金型はそうそう変更できないだろう)、どういう形でテンショナーを入れてきたのかは是非見てみたいところだ。
こうしてみると、価格及び機能面でレプリカが一歩抜きんでている印象がある。
一方、レプリカはパーツの工作精度の信頼性という点に不安が残る。
セルモーター(現行モデルでは廃止)は1〜2回の点火でバッテリーが上がってしまう(1時間走ると充電できるらしい)ため、実用性がないということで廃止されたらしい(クレームも多かったようだ)。
フレームが全体に微妙に歪んでいて、メンテの際に分解しにくいという説もあったようだ。
プルスターターの紐が切れたという事例も初期の頃にはよく聞いたが最近はどうなのだろう。
最近では、グリップ先端のキルスイッチ(G-Motionユーザーには非常に羨ましい機能の一つだが)が途中で断線してしまっていて、チョークを締めることでしかエンジンオフができない、というものもあった。
新しい機能を矢継ぎ早に取りこんでいく改良精神の旺盛さに、部品の工作精度や耐久度が追いついていないのかもしれない。
これらの工作精度や信頼性、さらにはアフターサービスやパーツ入手が今以上に安定していくことがあれば、レプリカはG-Motionにとって単なる「コピー品」以上のライバルになるかもしれない。
JWCにはG-Motion乗りもレプリカ乗りもどちらもいるので、一概に純血主義(笑)を唱えるつもりはないのだが(笑)、ジャンルとして認知度が広がっていくことそのものは喜ばしいことだと思っている。