緑
髪が緑に戻りました。
もう10年じゃきかないくらいずっと、同じ美容師さんにお願いしている。
初めて担当して貰ったとき、彼は別の店の雇われ美容師だったのだが、気づいたら別の店の雇われ店長になり、5年ほど前に独立開業してオーナー店長になり、今も現場に立って後進を始動しつつ僕の頭を緑にしてくれている。
お互い歳食ったねえ、という話を会うたびにしてる気もする。
先だって旧友を亡くしたばかりなのだが、今日は「本田美奈子が死んだ」という話が飛び込んできてびっくりする。
本田美奈子は別に同級生でも知り合いでもないのだが(あたりまえ)、世代的に同期に近い。よく知っている人が若くして死ぬ不思議、ではあるかもしれない。
本田美奈子の通夜で棺桶の中を覗き込む機会はないだろうけれども、やはりこれも驚いた。
人の死とは、哀しみよりも早くそして多くの部分を「驚き」が支配する。
驚きから早い段階で冷めてしまったものは、参列者の前で号泣する。
驚きに支配されたままのものは、参列者の前で「茫然自失」する。
気丈に見える人の何割かは「見る側の誤解」で、ほとんどは茫然自失であるらしい。
美容院でブリーチ&カラーをしている4時間ほど(毎回)の間、他のお客さんの話に耳を澄ませることがしばしばある。それは面白く楽しく、時に刺激的でもある。
今日聞いた話で記憶に残ったものは、以下の通り。
「夜眠りに落ちるのは死ぬのと同じ。朝目が覚めるのは生まれるのと同じ。毎日24時間ごとに死んで生まれてる。そう思えばなんでもできるし、死んでしまうことそのものは別に怖いとは思わない」
何かの宗教にありそうな言葉で目新しさはないが、「毎日死ぬ、毎日生まれる」というのは「死そのものを恐れる」人には救いになる言葉のように思える。
怖いのは「死に伴う痛みと苦しみ」であり、痛みや苦しみがなければ死を恐れる人は案外すくないかもしれないな、という話を上の空で聞く。