江古田落語怪

すでに一昨日の話になるが、江古田落語怪 第一会が開催された。
僕は客の一人として座って見るだけー、のつもりでいたわけだが、小さいシークレットな催し故そういうわけにも行かず(^^;)
座布団を並べ、机を片付け、また上がってくる客に「あ、この度は」と挨拶したり。


開始前の挨拶でも触れた話だが、ざぶとんが敷き詰められた座敷、来ている人はそれぞれ互いに知らない人同士、たまに知ってる人もいる、なんでか黒い服を着た人(冬だから(笑))に普段着の人も混じっている、テーブルの上に飲み物が出ていたりする、その場にいる主のような人が、来客があるたびに「あ、この度は」となんでか平伏して挨拶している。
自分でも「何かに似てるなあ」と思ったのだが、これはお通夜に非常に似ている。
折良く、江古田斎場ではお葬式があったらしい(実はその翌日もあったらしい。盛況である)。


会は、三遊亭好太郎師匠のお弟子さんで、三遊亭かっ好さん(前座。ナポレオンズの背の高い方の息子さんだそうで、今年入門なのだそう)による「傘の断り」という話。その話を枕にした「金明竹」というのがまた凄くて、上方の御店の丁稚が言づてをしにやってくるのだが、もんのすごい早口でまくし立てるのを、与太郎と店のおかみさん合わせて4回も同じ口上(とんでもない早口言葉)を聞く。一緒になって客もこの早口口上を聞くのだが、4回も聞かされたのに与太郎もおかみさんもちゃんと話を覚えていなくて、話がまるで噛み合わない……というもの。
いや、あの早口を噛まずに言うというのが、落語の修行の第一歩であるらしい。


続いて三遊亭好太郎師匠(真打ち。三遊亭好楽師匠のお弟子さん)による新作落語「紙人形」が掛かる。これは、「方法とその効果について」を改作したもので、高座に掛かるのは今回が初めて。もちろん、師匠がこれを演じるのも初めてなわけで、紙粘土の人形にクギを刺す動作に特に力を込めた、とのこと。

中入り(休憩)後の三席目はお楽しみ落語ということで、枕では「宴会芸」「酒飲み」「酔っぱらいの迷惑話」を流して、「親子酒」が掛かった。酒癖の悪い息子を諫めるために自分も禁酒を誓うオヤジだが、やっぱり耐えきれなくてどうしてもと酒をせがんで飲み始めてしまう。その酒を飲む仕草がまたうまそうで、客は涎を垂らしながらその様子に見入ってしまう。結局1杯、また1杯と杯を重ね、3杯も飲んでいいぐあいにできあがってしまったところに息子が帰ってくる。が、その息子は息子で禁酒をしていたはずなのにやはりぐでんぐでんになっている。本来は「知り合いの家(だったか、大家さんだったか)」に呼ばれて断り切れず飲んだ、という下りなのだが、この日は「作家の加藤さんが原稿が上がってめでたい、祝いの酒だから飲んでいけと断り切れず、二升五合飲みました」とちょっとサービスがついたり。

僕の怪談のうち、笑いが入るほうの怪談を「心霊落語」と呼んでいただいているが、今回は笑いの入る余地のない話のほうを演っていただいた。
今度は笑いの余地のほうが多い話をお願いしてみたかったり。でも今度っていつだろう(^^;)


「携帯電話の電源は切っておいて下さい」
とお願いした後、自分の携帯電話の電源が切れっぱなしになっていたことに気づくのは、日曜になってからのことであった。