スキャンダルとモチベーション

ここんところ初音関連がヒートアップしすぎです。自分。
しかし、そんだけ話題に事欠かないということか。
仕事もあるので今日は手短に。


対TBS「ご立派ですね」問題、Google初音失踪事件、そして「JASRAC問題」「ドワンゴ契約問題」……と、続くこと続くこと。
これが人間の歌手だったら、スキャンダルで一発粉砕コースではないだろうか。かつての鈴木亜美とか今どこにいるのかわからない華原朋(ry


今回の契約・著作権問題は、その意味で作者のモチベーションを削ぐ危機かもしれないなと思った。大物つったらなんだけど、メガヒットを飛ばした作者が矢面だったり当事者だったりしたこともあって、彼らからの新曲はそうそう上がってこない*1
また、目立ってしまえばそういう生臭い環境に突き出されることにもなりかねない。まあ、そこまで計算している人ばかりではないだろうけど(^^;)、「一連のやりとりを見ていて、すっかりやる気をなくしてしまった」というナイーブでセンシティブな作者も少なからずいるんじゃないかと思う。
出版の世界では、かつて教科書記述内容の問題で筒井康隆氏が絶筆宣言を行ったことがある。これは一連の問題とはちょっと違うけど、作り物をする人は、本来やりたいことと違うところで騒動が持ち上がると、一気にやる気が失せてしまうという事例と言えるかもしれない。


じゃあ、契約問題とかでgdgdになってるから、これからもうヒット作は出てこないのかというと、そんなことは全然心配しなくていいんじゃないか、という気もする。
新しい才能というのは、放っておいたって出てくる。
そういう思いつきを公開する場所があって、できあがったものにリアクションをする誰かがいるという事態は、それ以前と今後とで今のところ微塵も変わっちゃいないからだ。
一山当てた作者だけに才能があるわけじゃない。彼らにそんな才能があること、あったことも、彼らが楽曲を公開するまでわからなかった。彼ら自身にも。


だから、今がチャンスと思ってる人もいるかもしれないし、チャンスとかそういうのと関係なく、今回の事態で大して波を被らなかった人、凹まなかった人、逆に「これを逆手にとって」なんて考えてる人もいるだろう。


初音ミク」に「鏡音リン・レン」が加わり、年明けからは鏡音リン・レンに合う曲も出てくるだろうと思う。頼まれてもいないのに、内面を想像して代弁する、というのが一連のVocaloidシリーズの堪能の仕方だろうと思うからだ。
箱絵と歌声だけが存在するフィギュアと、どう向き合うのか。
どんな声を聞き取るのか。
声なき声を〈声〉に起こすのか。
スキャンダルすらもモチベーションに転化する異才の群れが、次に何を繰り出してくるのか。


初音ミクがソフトウェアだバーチャル歌手だ楽器だと言ったところで、それに歌わせる歌を作ってるのは人間である。TBS問題やGoogle初音失踪事件なんかは、逆に作者達の闘志を掻き立てることにも繋がったようで、大いにモチベーションがうpしていたのではないかと思う。


初音ミクは、楽器であり、仮想の存在であり、アイドルであり、単なるソフトウェアであり、音声フィギュアであり。
そして、作者自身の代弁者であり、リスナーを反映する依童でもあり。


人は、嬉しいときにも歌うし、悲しいときにも歌う。
文章の世界なんかはそうなんだけど、何かに対する怒りとか憤りとか、そういうものに満たされているときは、精神的にかき乱されていても、凄い勢いで言葉やフレーズが浮かんできたりするもんだ。
そして、泣いている人、落ち込んでいる人、怒っている人を慰めるのは歌だと思う。
困惑し、怒り、辛い思いをしている人……というのを、初音ミクという依童に投射して、またそれを慰める歌を書こうという優しさが、現れるだろうとも思う。


だから、僕はなんの心配もしていない。




消えろ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1835655


ここあ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1838472


Angel Heart
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1840253

*1:この数日はそうだった。もちろん、新しい注目作者は出てき続けている。「ハト」とか