クリプトン・ドワンゴ争議の和解と共同声明

手打ちのようです。

着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント:メディアファージ事業部 ブログ
http://blog.crypton.co.jp/mp/2007/12/post_63.html
着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント:ニコニコニュース
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000756.html


※いずれも内容は同じ。

この数日初音界を揺るがしてきた、クリプトン・ドワンゴ争議がどうやら和解に至ったようだ。

和解内容の子細は上記リンクに譲るとして、とりあえず感想など。
この共同声明は、意思疎通の不具合によって確認できていなかった点を両者合意で確認し、それを文書化している。こういった手続きは通常の企業同士のやりとりでは当たり前に行われていることなので、それを改めて評価するということはしないけど(本来、してこなかったほうがおかしく、だから問題が起きたわけで)、そうした両社による合意を明文化したものを、広くオーディエンスに公開したという点は、高く評価していいんじゃないかと思う。
というのは、こういう合意ドラフトというのは普通、内部的なものであって社内以外に公開されることは稀だ。
が、今回この問題を「問題」として注視したオーディエンスの多くが両社の利益に大きく寄与/干渉する存在である、という認識が両社共通のものとしてあるということを示唆している
CGMを支えるオーディエンス=匿名のその他大勢という、従来なら軽視・無視していい存在について、軽視しない(しないとできないはまた違うけど)ということなわけで、実は今回の騒動の最終勝利者は、クリプトンでもドワンゴでもなく、無名匿名のオーディエンスなのではないかと思った。それほどに、懸念と要望の達成率が高い。


さて、内容について要約*1とチェック。

1.今回の件については今後は争わない。独自に発言しない。共同声明のみ発表する。
2.ドワンゴDMPとクリプトンは、原盤制作者との契約について両社で協力して進める。
3.今後は、事前に原盤作者と契約する契約締結するまで配信は行わない
4.権利関係の確認
 (1)「初音ミク」のキャラクターの著作権および名称に関する商標権はクリプトン保有
 (2)「初音ミク」を使用して作成された曲データの権利は、使用許諾契約書の諸条件に基づき、楽曲作者が保有。権利行使代行会社は、楽曲作者の意思で決める。(ドワンゴDMPが勝手に決めない
 (3)アーティスト名などに「初音ミク」を引用して着うた配信を行う場合は、クリプトンと楽曲作者または代行会社との間で別途、許諾が必要。
 (4) 「初音ミク」で作った楽曲の権利は、作詞家、作曲家のもの。(ドワンゴDMPのものでもクリプトンのものでもない)
 (5) (4)の作詞作曲者は、楽曲の権利行使代行会社を自らの意思で決められる
 (6) ドワンゴDMPは、「初音ミク」で作られた楽曲が、初音ミクの曲として有名になった場合で、楽曲の管理を著作者に申し入れる際は、信託先管理団体に、
JASRAC
「イーライセンス」他
「管理団体に信託しない」
 などの選択肢があること、及び各々を選択した場合のメリット・デメリットを説明し、どうするかについて作者の意思を確認する
5.音楽著作権の処理に関して、現在のシステム・ルールがネット時代に即応できていない不十分な部分が存在するという認識で一致し、時代に即応した新しいシステム・ルールを構築できないか両社で協力し検討
6.「初音ミク」をより多くの人たちに知ってもらい、愛してもらえるようニコニコ動画をはじめ様々な場を協力して提供。


この文面を作ったのは、伊藤社長でもドワンゴ側の発言者でもなく、法務関係の人間と見られる。用語の使い方とかがいかにもな感じがするw
全体として、「権利の所在の明確化」(確認)、「原盤権」「手続きの選択肢があることの明確化」その他、痒いところに手が届くくらいの解決を見たとは思う。
それこそ意地悪な見方をすれば、この共同声明は「初音ミク」にのみ言及していて、鏡音リン・レンMEIKOKAITOはこれに含まれないのではないか、と突っ込むこともできる*2が、これは文言の問題*3と思うので、そこまで厳密に気にしなくてもいいだろう。


もっともこれは、「ここまでのgdgdな状態」に対する確認に過ぎない、という見方もできんことはない。
例えば、与太話として触れてきたものに、「JASRAC相当の権利管理団体をみんなで作っちゃえ」だとか、「作者に直接送金できるシステムを作っちゃえ」だとかがあるけど、これらは「作品への評価を、報酬の形で作者に還元するには、どういった方法が考えられるか」という論題への回答例と言えるものの、そうした方向についての具体的なアイデアが今回の共同声明に盛り込まれているわけでもない。そもそも、連休中の数日でそこまで盛り込むのは不可能なわけで、それは来年以降に向けた課題になるのではないかと思う。


ともあれ、両社がCGMによって支持を得ている企業であることを、きちんと自覚している=オーディエンスへのフォローをきちんと行ったという点については、これは素直に評価していいでしょう。

*1:さほど要約してないけどw、自分に要点がわかるようにしとこ。

*2:自己レス。KAITOMEIKOは、キャラクター展開を念頭に置いていなかったとかで、初音ミクとは契約諸条件は違うらしい、というのを聞いたことがあるような。

*3:そして現状で未発売で展開がわからないリン・レンに言及するのは勇み足過ぎるし