罰当たりなおばけ屋敷

僕の本業である怪談稼業は、どちらかというと実話系怪談がメインなので、「想像上の怪談」はあまり扱っていないんだけど(^^;)、もしそんなのがあったら絶対に近寄りたくないなあと思うおばけ屋敷の例を考えてみた。
ただし、極めて罰当たりな話なので、あくまで「そんなのは絶対にあってはいけない」というお話として。
おばけ屋敷の話題は若干シーズンオフ過ぎるけど、シーズン合わせで書くのもわざとらしいので、シーズンに入る前に。

ライド型ではなく、必ずウォークスルータイプで。
キャストは全て、実際の遺体をプラスティックコーティングしたものを使用。*1
必ずガイドが付く。ガイドは全員霊感があり、かつ無責任で小心者。
ルート内の大道具小道具は、墓石からなんてことのない日常家具に至るまで、全て何らかの曰く付きの場所から供出された「実物」を配置。
テイストは踏切→病院→墓場→和風建築と、それぞれのシーンを巡る形で。
建設場所は、大規模災害/事故が起きた跡地などに。
24時間営業だがAM2:00〜4:00は予約制。
実際に入った客からは肩凝り頭痛などの健康被害が続出。
建設中から曰くつきの事件が続出、公開後に企画立案者が発狂して怪死を遂げる。
もちろん、企画会社が早々に倒産して転売されてしまったりするので、期間限定。


でも、お手軽(^^;)Jホラーのネタとしては、こういうのは割とありそうでチープ。開き直ってコメディにしてもベタすぎる。怪談とコメディは紙一重で表裏一体だよなと思うのはこういうとき。


ただ、これが実際にあったりすると、とんでもなくやだなあとは思う。
内容如何はともかく、特に立地の問題。
もし罰当たり覚悟で作るなら、大事故/災害などでぽっかり空いてしまった土地だの安く売り出された立地だのが使われるかもしれないが、遺族が大量に残っていて、社会からバッシングを受けるようなものはやはり商売にはなりにくいだろなと思う。
怪談を模倣したおばけ屋敷はリアルなほどいいけど、リアルに近付きすぎるとバカにされるのではなくて倫理的に「死者をバカにするな」「死者を怒らせるな」「祟りがあるぞ」「呪われるぞ」という話が出てくる。もちろん、ストレートにそういうことを言うわけにはいかないので、「遺族の気持ちを考えろ」という論旨でブレーキが掛かる。
おばけ屋敷というのをエンタテインメントとして提供しようという時点で既にそれは死者への冒涜だと思うんだけど、それがどの一線を越えると「笑って済まされなくなる」のかというと、やはり「遺族の心情」という生きているものへの配慮が持ち出されるところからなのかな、とも思う。


ちなみに、過去の取材経験などから鑑みるに、都内最恐おばけ屋敷というと浦安ネズミーランドツンデレラ城と、豊島園のおばけ屋敷であるらしい。
どちらも「だって、あそこ居るもん」という話をしばしば聞かされる。
浦安ネズミーランドの話はかなり頻繁に聞くのだが、何しろ大資本相手なので大々的に記事にはしにくいようで、都内最恐心霊スポットとして取り上げられることは少ない。
豊島園のほうは昔から「出る出る」言われてるところなのだが、豊島園そのものが関東ローカルなせいかw、全国向けに紹介されることはあまりない。
このあたり、怪談にも大人の事情が見え隠れしてるなあ、と思う。


実際、怪談を書いていても大人の事情で出せない話、遺族の心情を考えてしまい込まざるを得なくなる話というのは多数ある。大事故・大災害に関連した怪談というのはないはずないのに、あまり世に上がってこないのは、それらが極めつけに恐すぎるからというよりは、そうした「遺族への配慮からの自主規制」によるものだと思ったほうがいいかも。


さて。
個人的には立地が怖いおばけ屋敷としては、池袋ナムコナンジャタウンもののけ番外地を挙げておきたい。
あそこ、別に内容はまるで怖くないんだけど(^^;)、なんつっても巣鴨プリズン跡地という東京有数の心霊スポットに、よりによっておばけ屋敷を造ろうというナムコの心意気が凄いと思う。
あそこは巣鴨プリズン以前も刑場だったりした場所なのだけど、そこでの死者が「刑罰を受けて死んだ罪人」だから、遺族に配慮しなくていいということなんだろうか。


真に残酷なのは、死者の死亡理由をタテに遺族への配慮を差別化する社会でござい……と締めると、ちょっと社会派すぎだろか。

*1:タイにあるというシリラート死体博物館とタイアップ