悪ノ娘 ぽいもの

悪ノ娘」と「悪ノ召使」は、ベルばら風世界観を持った架空の中世ヨーロッパ風ストーリーを持つ歌で……そりゃもう、宝塚の匂いをプンプンさせるwヅカファン狂喜乱舞な物語である。
いつぞやの組曲『メルト』のような派生曲も生まれつつあるらしい。
で、冒頭の台詞や歌詞の内容、挿入されるSEとしての台詞などなど、見せ場の多い歌でもあるので、これを好んで歌う歌い手も数多い。また、実力派の歌い手がこぞって、それぞれのアレンジで見せ場を作ったものを公開しているのも嬉しい。
http://www.nicovideo.jp/mylist/6808294
なんというか、同じ脚本を花組月組雪組星組宙組のそれぞれが演じているかのような。
このあたり、同じく架空の中世ヨーロッパ風ゴシックな世界観を持つ「カンタレラ」も、同様にうっとりするような歌い手群の持ち味の違いを楽しめた。
悪ノ娘」に関して言えば、ねーちんVer.も好きなのだが、公開されたばかりのなまこにゅる粉Ver.が大ハマリ。
この歌は、歌の主題でありピカレスクな主人公である「齢14の悪逆非道の王女様」をどのように解釈するかというところで、味わいが変わってくる。ねーちんVer.はロリ声「ツン(またはヤン)系ロリ王女による悪逆非道」という声と内容のギャップがおもしろかったのだが、なまこにゅる粉Ver.は「それ絶対に14歳じゃないし、それ絶対にSMだし」な、妖艶な掴みが要所要所で最高にハマった。
どうでもいいけど、「さあ、ひざまづきなさい」はいいとして、だ。
「さあ……四つん這いになって尻をお出しなさい」はどうなんだwwww*1
それに合わせて、or2ってな、四つん這いになって尻を出す弾幕を出すのはどうなんだwwwwww
他、召使(レン)の声もなまこにゅる粉があてているわけなのだが、最後の最後まで聞き所満載。個人的には決定版です。
……なんともエロい艶っぽいんですがw


鏡音リン 悪ノ娘 ぽいもの Ver.なまこにゅる粉
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3489079




しかしまあ、アレだ。
一本筋が通った悪役とか、行くところまで行っちゃってる悪役とか、魔王的存在って好きな人多いなと思った。カンタレラの廃頽的な雰囲気だって、決して褒められた潮流wではないはずなんだけど、やっぱりそういうピカレスクなものに惹かれるというか憧れるというか。
現実には自分が手を染めることが出来ないからこそ、そういう悪逆非道だったり廃頽的だったり、純粋悪のようなものに憧れる、というのはあるのかも。
正義の味方は相変わらず人気あるけど、同時に「誰からも憎まれ、誰からも恐れられる孤高の純粋悪(または独善)」というのも人気ある。
なんだかんだでヒトラーナチスドイツという、世界史&国際社会では悪とされる存在とその様式に、なんとなくな憧れがあるのは日本くらいと言われているのだけど(ナチスドイツのコスプレをしていても、別に逮捕されないしさほど大きな問題にもならないし、そういう趣味を満たす専門店も商売が成り立つ程度にあるし)、そういうものを好きだからといって、それを嗜好する人自身が悪逆非道であるというわけでもない。当たり前の話。


「自分には現実には出来ないことを、投影したものを趣味好みとする」というのは、むしろ逆に現実にそれをしてしまわないための安全弁なのではないか、と思う。
その昔、幼女連続殺人犯(1985年頃)の部屋にスプラッタビデオがあったため、「その手のものを見てると人を殺したくなるのだ」と随分ホラーが苦しんだ時代があった。狂気を孕んだJホラーが消費する嗜好品として台頭してくるには、さらに10年ほど待たなければならなかった。
つい先頃も、「ひぐらしく頃に」が、少年少女による親族殺人に影響を与えた、「デスノート」が少年少女の心身を頽廃させた、などなどとやり玉に挙げられているのだけど、大多数はそれを「できないことを、自分の代わりにやってくれる悪の主人公」の行動に満足するところで、発散している。
この先、そうした「自分の代わりに悪を行う」「自分の代わりに美しく散り果てる」という、ある意味で「生け贄」になる物語中登場人物が、「模倣を生むからよくない」というような名目で抑制されるようになり、物語世界には善人と正義の味方しか出てこなくなったら……。
まあ、やっぱ物語というのは「圧倒的な悪」をどのように攻略するかによって構築されたものというのが、わかりやすく爽快でもあるわけでw、そうした圧倒的な悪の描写を禁止されたら、いちばん困るのは正義の味方なんだろなー、とかつらつら考えてるうちに夜が明けてしまった。

*1:見所です。