彼岸花とタイトルの話

次の次になる恐怖箱 彼岸花は、正式名を「恐怖箱 超-1怪コレクション 彼岸花」。長いw
表記上は「恐怖箱 彼岸花」で、「超-1 怪コレクション」という文字はサブタイ扱いでちょいと小さくなります。長いので。
長すぎると背表紙にタイトルが全部入り切らなくて大変なのですw


本日は、タイトルを巡る編集者視点的な話。


2006年の怪コレはシリーズ続くと思ってなかったので、慌ててVol.2、Vol.3に。
ところがこの数字の連番入りというのは、実はあんまりよろしくない。もちろん、第一巻から揃えている人や出している側にとっては数字が増えていくのが楽しみだったり手応えだったりする部分はあるのだけど、怪談本というのはリピーターさんはもちろんのこと、一見さんが手に取ることが多い書籍でもあり、連番数字が付いていると敬遠されてしまうことがある。大ヒット作品に限らないけど、数字が付いているならやはり一巻から順に読みたくなるのが人情というもので、デスノートを11巻から読み始める人というのはあまりいないわけですorz *1そうすると、こういう反応になります。
「そうか、これは3巻(11巻でもよし)なんだ。ここには1巻が見あたらないけど、読むなら最初から読みたいから、そのうち1巻を見つけて読んでみて面白かったら買うことにしよう」
ところが、年に何冊も出る本じゃないですから、最新刊を見つけることが出来ても、バックナンバーの旧刊はそうそう見つけられないわけですね。ヘタすると絶版になってたりもしますし。
そうすると、「3巻」と銘打ってあったことによって、初めてそのシリーズに触れた人を逃してしまう、商機を逸してしまうことになるわけです。読者さんというのは絶えず少しずつ入れ替わっているものでもありますが、巻数を重ねていくほどに新しい読者を新たに獲得するのは難しいんですね。ドンと稼いで微減、みたいな世界なので。
怪談本のように「どこからでも読める、一冊でも読める、途中から一話だけでも読める」という読み物であっても、本そのものに数字が付いているとそれだけで一見さんは遠のいてしまう……というわけで、数字連番は避けるというのがここ何年間の傾向になっています。これは怪談に限った話でもなく、「β」とか「R」とか「RC」とか「夏」とかなったりしてますね。「超」怖い話本体のナンバーズは、作る側がタイトルを考えるのが楽なようにw、それでいて順番や何冊目なのかが一見さんにわかりにくいように、ということで一般的なアルファベットではないギリシャ文字が使われています。最初キリル文字で始まったものの、БとBの区別が付けづらいとか(口頭で注文するときに間違いやすいとか)13に似ていて縁起が悪いとか、そういう大人の事情で途中からギリシャ文字に変わりました。*2
2007年は二巻組だったので、Vol.4〜5という数字ではなくて2冊で一組になるような語をタイトルに当てることになり、それぞれ「黄昏の章」「夜明けの章」というタイトルに落ち着きました。
このときVol.4と付けていたらやはり一見さんに敬遠されてしまったかもしれません。タイトルはホント馬鹿にならない。「2」というのは、一作目の威光で楽ができるように見えつつ、絶対に一作目より苦戦するんですw 一作目を見ていない人が蚊帳の外になってしまうので。


そして2008年。
既に2009年の超-1開催が決定しているというか、これからずっと超-1をやっていくことになったわけなのですが、そうすると怪コレも、今年から毎年同じルールの名前を付けなければなりません。*3
そういうわけで、彼岸花
怪コレシリーズは、これからずっと花の名前です。
蝶が集って花が咲く、という感じで。



実際のところ、タイトルというのは捻りすぎてもいけない、長すぎてもいけない、ありがち過ぎてはいけない、造語過ぎてもいけない。いろいろダメだしされやすいものでもあり、また短いながらも書店やコンビニの棚に並んだときに一見さんの気を引くものでなければならない、という過酷な条件がついて回ります。著者が悦に入って決めても、営業さんから「これじゃ売れません」「目立ちません」「それっぽくないです」と突き返されてしまうということもあるわけですw


本全体のタイトルもさることながら、もちろんこれは個々の収録作などにも言える話で、「超」怖い話、怪コレ、恐怖箱その他でも、第一稿で付いていたタイトルが、完成までに変更された例は幾つかありました。
ちなみに、経験に学ぶ気をつけるべきタイトルには次のようなものがあります。

  • タイトルは出オチになってはいけない*4
  • 魅力がないのはいけない*5
  • タイトルだけが列挙される場では、本編よりタイトルに力を入れるべき*6
  • タイトルはストーリーの要約になってはいけない*7
  • 捻りすぎてはいけない*8
  • 長すぎるタイトルは覚えきりにくく、省略されやすく、カバーや背表紙に収まりきらない*9
  • 短かく、ありふれた言葉過ぎると他の誰かとかぶる*10
  • だからってなんでも造語にすりゃいいってもんでもない*11
  • ダジャレはほどほどに*12
  • オチや内容と無関係すぎてもいけない*13
  • オチや内容と関係が在りすぎてもいけない*14
  • タイトルはそれひとつで作品になっていなければいけない、というくらいの意気込みが重要*15


だからって無難ではいけないわけで、事ほど斯様に難しいわけです。
単語ひとつでタイトルにするよりは、二〜三文節くらいのタイトルを考えたほうが広がりが出るんじゃないでしょうか。少なくとも、エピソードタイトルに関しては。
でもなんか、細かいタイトルがずらずら続くのって、スイッチ入れてもアイキャッチばっかり次々に出て、なかなか本編が始まらないゲームやDVDみたいでちょっと腹立つw
自分とこでもやらかしちゃってるから、余計気になるんだろうなと思いますorz


タイトルって本当に難しい。

*1:デスノじゃないけど、大人気作をそうと知らずに最終回の一話前から読み始めてしまった経験アリ。

*2:「弩」怖い話はうっかり数字を付けてしまったため(ry

*3:毎回頭捻るのやだよ、という本音がなきにしもあらず。タイトルを考えるというのはいろいろ大変なのです。「極」怖い話が元は「酷」怖い話だったようにw

*4:オチを透かし通されて、読者に新鮮な驚きがなくなるから。

*5:瞬間的に記憶に残りにくいから。

*6:似たタイトルが多いと埋没するから。

*7:テレビ欄のサスペンスドラマのサブタイのように、内容が全てタイトルでわかるなら、本編を読む必要がないから。そこからオチを読む人がいるから。

*8:独りよがりになるから。

*9:怪コレクションとかorz

*10:「エレベーター」とか「追憶」とか。

*11:「超-1」とかw

*12:「怪歴」とか「怪記」とか「怪医」とかw

*13:結局、あのタイトルに何か意味あんの? と言われて凹むから。

*14:内容の要約に(ry

*15:氷原公魚先生の至言です。