2009BD

「2009BD」或いは「2009 BD」で検索をしても、今日の時点ではたぶん組み立て式BMXの記事か、ブルレイディスクドライブの記事しか出てこないんじゃなかろかと思う。
正解「2009BDは、小惑星の名前」ということらしい。

ほぼ地球の軌道とほぼ同一、めずらしい地球近傍天体が発見 - Technobahn
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200901270032

地球と衝突コースに入る小惑星アポフィスとか、地球から離れたアステロイドベルトあたりの小惑星とか、ア・バオア・クーとか、おいら宇宙の炭坑夫とか、小惑星と聞くといろいろ想像が巡ってしまうのだけど、このまだ識別名しか名前がない小惑星は、今年に入ってから発見されたものらしい。そして、Technobahnによれば地球の公転周回軌道とほぼ同じ軌道上を、一周369日で回っているんだそうで、さらに言えば今日*1、地球に最接近するらしい。
Technobahnの記事だと大きさとかそういったものは詳しく判らないんだけど、最接近距離は約64万キロ。月と地球の距離が約38万キロくらいだったと思うので、その2倍よりちょっと近いくらい。遠いようでいて、天文学的にはえらいこと近いような気もするが、衝突の可能性はほぼないらしい。ヘー。
それにしたって、地球と同じ公転軌道を回ってる小惑星があったことに気付いたのが今年に入ってからで、しかも気付いてすぐに最接近距離に入っちゃうってのが凄いな。なんというか、存在も知らない敵に、いきなり懐に入られて喉口にナイフ突きつけられてる、みたいな。
それなりに大きな小惑星なら、もうとっくに発見され尽くしてるような印象があったんだけど、実際にはまだまだ見つかってないものも多い様子。
小惑星と言ったところで、大気圏に入ってきたら燃えちゃうから平気。……というような気もする一方、ツングースカを半径30キロに渡ってなぎ倒し、焼き尽くしたときの天体の大きさは60〜100メートルくらいだった、というし。*2
去年の秋だったか、カナダに落ちてきた隕石も度派手に燃えたわりに、大きさは数百グラムだったというし。
アポフィスは2029年に地球との衝突コースに入るかも、と騒がれ、「いや大丈夫っす。45000分の1っす」とNASA出した確率を再計算したドイツ人の少年が「450分の1かも」と言い出して、それをまたNASAが「いやいや大丈夫っす」と打ち消して(ry このアポフィスの大きさが270〜410メートルらしい。これが落ちてくると*3「結構な被害が出るらしい」という話と、「別に氷河期に逆戻りして人類が滅亡するほどの被害にはならない」という説といろいろあるらしい。
このテーマは「地球最後の日」から「宇宙戦艦ヤマト」から「アルマゲドン」まで何度となく出てくるネタなのだが、今回の2009 BDみたいなものが、そんなすぐ近くにあって、しかも見つかってすぐに最接近だとか、人類はまだまだ自分達の偶発的な危機について知らないことだらけなんだなー、とか思えてくる。仮に2009 BDが衝突コースだったとして、大きさが100〜200メートルクラスだったら、それだけで「何もかも手遅れ」だよな、とかいう気になってくるし。もう、イチローのレーザービームと盆回しが聞こえてくる感じで。


起こり得るかもしれないけど、それは起きないかもしれない。
たぶん、大多数のことは「おそらく起きない」という勝率の高すぎる賭けに勝つことで進行していくんだろなと思うけれども、「しかし絶対的に0%だとは誰にも断言できない*4。そして、その勝率は既知の前提条件が詳細に判明していくことで、いくらでも変わる」というおっとろしいもの。
自分が知っていることだけが世界の定理とは限らない。
我々が知らないだけで、いきなりどうにもならなくなるかもしれない世界の冷酷な定理っていうのはナンボでもあるのだなあ、今日を生き延びられてラッキーだったなあ……と、2009BDの記事を見て思うのだった。




さて、IFのお時間です。
もし2009BDが地球衝突コースに入っていて、そのことが今日発表されて、明日がその日だとしたら。
「早めに見つけられなかったことを理由に科学者がなじられる」
アメリカ、ロシア、中国などの核保有+ロケット技術保有国に対して、今すぐ小惑星の爆破/軌道修正を試みるべきだ、という国際世論が」
「心静かに死ぬために、と終末論を宗教的に諭す輩があちこちに」
「とりあえず暴動と略奪とレイプをしてみる輩があちこちに」
「名作アニメを見まくる輩が(ry *5
「全ては日本の力不足が悪いのだ、という報道が一斉に」



そのとき、民主党は――。
衆院幹事長「麻生政権が悪い。民主党政権になれば小惑星との衝突は回避できる」*6
参院幹事長「小惑星というのは漫画で見たことはあるが、イメージがわかない。過去に地球に小惑星が衝突したということがあったのか」
そして、取り急ぎPT*7の立ち上げを発表する。


もちろんあくまでIFはIF。妄想の産物なので、まさか実際にそんなことを言うわけはなかろうとは思うけど、非常時にも日常の言動の延長線上の行動を取るのだとしたら、そういうかもしれないね、という想像をされても仕方ないかもしれない。
政治とは常に最悪に備え、責任追及は後回しにしてもいいから対応策を迅速に行うことが求められているわけで、「最悪」を発生前に想像できる想像力というのがあるのかどうかを、日常の言動でチェックされちゃうって、怖いよなーとか思う。


ところで2009BDは地球と同一軌道上を回る小惑星=探査衛星を送りやすいということで、イトカワに挑戦したはやぶさのような、試料を持ち帰る探査衛星を送る対象にも上がるかもしれない、とのこと。そういう候補に挙げられるかもっていう話が出てるってことは、やはりそれなりに大きな直径&質量を持っているのでは? と思えてくる。小惑星イトカワは直径330メートルだったというし。着陸して試料を持って最発進もしようってんだから、それなりの大きさがあるという前提なんだろうし。

しかし、話は戻っちゃうけど、それなりの大きさがあるだろう2009BDを今まで見つけられなくて、見つかったすぐ後に最接近って……改めてやっぱ宇宙が一番怖ぇー。

*1:日本時間では昨日だけど、世界標準時的には「今日」

*2:最近アメリカが打ち上げた軍事衛星もアンテナを展開すると100メートルくらいになるらしい。

*3:掠めるだけでも

*4:実話怪談は「たぶんあり得ないけど、100%あり得ないとは断言できない」という、限りなく低い「万一の可能性」を排除しないことの上に成り立っている。その意味で、幽霊がいるかどうかというのは、宇宙人がいるかどうかとか、小惑星が地球に衝突するかどうか、それによって自分に被害が及ぶということを想像できるかどうかというのと同じくらいの重さを持つ問いであろうかと思う。「ないとは言えない」という点で。

*5:平野耕太の短編にそういうネタがあったなあ。

*6:原油価格高騰も、リーマン・ブラザーズ・ショックによる株価暴落も自民党政権の失政で、交替さえすればうまくいく、身長が伸びて彼女が出来て髪の毛もフサフサ、というのが最近のテンプレなのでw

*7:プロジェクトチーム。そういえば、「クマ被害対策プロジェクトチーム」ってどうなったんだろ。政党のPTって多いけど、特に民主党のPTは数が多すぎて、実際に何やってるのか、その後どうなったのかがさっぱりわからん。どこかに一覧とかWikiとかないかなw