修正記事

中川金融・財務相が、風邪薬でラリって会見というのを理由に、やはり辞任する運びになるらしい。BDレコーダー弄ってる最中に、最初に見た映像がこれかよorz
ただし、衆院での予算・関連法案通過後の辞任を予定している、ということ。たぶん、今夜中に「予算通過後と言わず、今すぐ辞任」という話にすり替わってるだろうなと思う。とか書いてたら、「民主が委員会に出てこないので、辞表提出して即日辞任」することになったらしい。状況変わるの早すぎだ。
でもこれで、「中川財務相が辞めないなら話し合わない」という戦術はこれ以上使えなくなるハズなんだけど、ここでまた「任命責任麻生首相が辞めないと話し合わない」という話になるんだろな。
でも、今解散すると今年の予算案がゼロからやり直しになって、4月から迷惑を被る国民が山ほど出る*1のと、国内の経済対策が水泡に帰すので、絶対にそれが通るまでは解散はなかろう、と予想。
それにしても一連の流れだが、なんというか赤城元農相の「絆創膏を貼ってた」というのを口実に引きずり下ろされた事変を思い出したのは僕だけじゃないと思う。
正直、「風邪引いて大変でした」で済む話だろうに。


ところで、中川財務相が何の国際会議に出掛けていたのかについては、ほとんど報道されていないか、忘れられているのでは、というような気がする。
赤城元農相のケースもそうだけど、どうでもいいことで閣僚が叩かれたり辞任に追い込まれたり、自殺に追い込まれたり、というような場合、実は凄く重要で大切で日本にとってプラスになる重要政策が進行中……てなことが多かった気がする。特にこの何年かはそうで、「それGJ」としなければならないような報道をしたくないときに、割と枝葉末節な事柄でその当事者を猛烈にバッシングして、進行中の政策を足止めさせたり、正当な評価が下されないようにしたり。
おっかねえ話だ。


というわけで、その中川財務相の会見というのはなんなのかというと、IMFに日本が1000億ドル(約9兆円)を出資する、というのについての調印式というか、契約書に署名しにいった、というような話だったらしい。
これもまた、仔細を知らずに「日本がIMFに9兆出した」ってだけだと「日本は世界のATMか!」とぶっちぎれそうな人が出そうな気がするし、よく調べなければ誰だって同じような感想を煽られそうな気がする。
で。
IMF=世界通貨基金というのは、今回の恐慌のような「世界中が金がなくて、支払が滞って、あっちこっちで国がバンバンと連鎖破綻していく」というような緊急事態が起きたときに、それに備えて「繋ぎ資金」を貸してくれるという国際的な金融機関みたいなもの。
近いところでは1990年代のアジア金融危機のときに韓国が国家破産してスッテンテンになりかけたときに、IMFの融資で奇跡の復活を遂げた、とされている。IMFで借りたお金は「借りた」のであって「返さないといけない」というもの。しかも、ちゃんと返せるようにIMFに監視までされちゃうというもので、IMFの取り立てはモノ凄く厳しい。恐慌前までに韓国はそれなりに返済が進んでたらしいのだが、今、またしてもかなりきわどいところにきていて、韓国はIMFおかわりの可能性があるらしい。
で、日本以外の国なんかどうだっていいじゃん、と考えガチなんだけど、資本主義ルールが行き渡ってる昨今、中小国が破綻すると、ドミノのように連鎖破綻が起こる可能性が高い。


卑近な例に当てはめると、例えば取引先の会社が倒産したとする。
そこから仕事を受けていた会社や、納品していた会社(掛け売り)は、仕事がなくなったり、売掛金が回収できなくなる。社内に貯金がある会社はまだしも、売掛金を社員の給与にする予定だったりした場合、社員の給料が払えなくなる。そうすると、社員の首を切って給与負担を減らして会社を温存するか、不渡りを出して会社を倒産させるか。
会社が倒産すると、失業して給料はもらえなくなり、家のローンは滞り……うわああああああ(つД`)コワイ考エニ……


これと同じようなことが、国レベルで起こると大変マズイことになるので、経済規模が小さい国がいきなり破綻してしまわないように、経済規模の大きな、そして外貨準備の余裕がある国が出資して、IMF経由でそうした国の破綻を防ぎましょう、という国際機関がIMF


IMFを通さずに直接支援すると、踏み倒して返してくれない国が続出し、結局「もらったもんは返さない、体質改善しないからまた同じことをやらかす」ということになってしまう。
国対国の支援の場合、相手国の体質改善(構造改革)を要求すると内政干渉になってしまうので、なかなか難しいということで、第三者的な国際機関IMFが、構造改革要求と引き替えに金を貸す、という仕組みができたらしい。


今、外貨準備*2に余裕があるのは主に中国(1位)と日本(2位)なのだそうで、日本はここに9兆の出資を行った*3、というのが今回中川財務相が行ってきた国際会議というか、調印式の内容。


これっていうのは、米中などの大国が内向的な保護主義(自国優先主義)に進みつつある中で、かなり画期的な国際支援となっているらしく、出資そのものは各国でも相当な称賛を浴びているらしい。つまり、「財政出動」という日本の行動は支持されているわけだ。
でも、これを「日本が褒められた」と紹介してしまうと、2兆円の給付金や75兆円の金融対策法案全般を、効果が期待できるポジティブな政策、と紹介しなければならなくなってしまう。


なので、それについてはお口にチャック、ということにするための絶好の口実が、今回の中川叩きであるようだ。
体調管理のミスから風邪を引いて、なんとか会見に出ようとして薬倍量飲んだらラリった、というようなことで、まあ同じようなシチュエーションで、自分以外に誰もピンチヒッターがいないような状況だったら、自分でもそうするだろうしなあと思うと、風邪を引いたってことそのものが事故にあったみたいな不可避の出来事であるわけで、まあ気の毒だなと思うのだった。肌が弱くて吹き出物が出たから絆創膏貼ったってだけで、同じように辞任に追い込まれた赤城元農相のケースもそうだけど、体調不良ってのはこの場合、しょうがないと思うんだけど、そこまで完璧でなきゃいかんのかいな。こえーなあ。*4


で。
恐らく例によって数日中にキャッシュが消えるだろうと思われるので、このエントリの賞味期限も長くはないと思うのだけど、時事通信の記事が「修正」されてたらしい。

時事ドットコムIMF拠出で署名=過去最大の1000億ドル−中川財務相
http://72.14.235.132/search?q=cache:F89-zTrkWIUJ:www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009021400138
IMF拠出で署名=過去最大の1000億ドル−中川財務相
 【ローマ13日時事】中川昭一財務・金融相と国際通貨基金IMF)のストロスカーン専務理事は13日、日本政府がIMFに最大1000億ドル(約9兆円)を拠出する取り決めに正式に署名した。IMFの資金基盤を強化し、金融危機を受けた加盟国への資金提供などを後押しする。
 日本政府は昨年11月の主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)で、麻生太郎首相が提案の目玉として表明していた。 
 加盟国支援が必要になった場合、要請を受けた日本が約100兆円の外貨準備からIMFに貸し付ける形で拠出する。加盟国による資金提供としては過去最大で、ストロスカーン専務理事は「人類の歴史上、最大の貢献だ」と謝意を表明。財務相は「有効活用を期待したい」と述べた。(了)
(2009/02/14-10:03)

まずこれが修正前の記事で、Googleキャッシュに残っていたもの。
そんで、次が修正後の記事で、現在公開中のもの。

時事ドットコムIMF拠出で署名=過去最大の1000億ドル−中川財務相
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009021400138
IMF拠出で署名=過去最大の1000億ドル−中川財務相
 【ローマ13日時事】中川昭一財務・金融相と国際通貨基金IMF)のストロスカーン専務理事は13日、日本政府がIMFに最大1000億ドル(約9兆円)を拠出する取り決めに正式に署名した。IMFの資金基盤を強化し、金融危機を受けた加盟国への資金提供などを後押しする。
 日本政府は昨年11月の主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)で、麻生太郎首相が提案の目玉として表明していた。(2009/02/14-10:03)

修正前の記事で、太字で示した部分は、中川財務相の辞意の意向表明の後に削除、修正された。
その一節は別に会見不明に関わる云々とは無関係の部分で、前述したように「IMFへの出資の意味と意義、それに対するIMFからの謝意」という奴で、麻生政権の政策の後押しに繋がるものだが、担当閣僚の辞意と引き替えに削除しなければならない内容とは思えない。


これはどういう意図なのか?


今回の1000億ドルを加えて、日本はIMFへの出資額は全加盟国による出資額の3割に相当する額になるらしい。
で、このIMFに出資したことによって、日本は「どの国に融資するか」「どのように融資金を回収するか」「被融資国の財務体質の改善・構造改革についての指導と監視」などについては全てIMFに一任することになるわけなのだが、ぶっちゃけて言うと、日本に対して「金貸してくれ」という全ての依頼について、「IMFに言ってくれ」で片付けられるようになるってことじゃないかな、と思った。


例えば、踏み倒す気満々で、しかも何度もやらかしていて、さらにそういう生活を改める気がまったくないヒモwがいたとしよう。かわいそうだからと金を都合してきたけど、何度も金をたかられたらこれ以上はかなわん、と。
そういうときに、ヒモにたかられてた女がついにキレて、
「金はあるわ。でも直接貸してもあなた返さないじゃない! 残りは子供の給食費なのよ! だから、このお金はあなたの後見人に預けとくから。借りたいならその人に土下座して頼みなさいよ。でも、その人は返済は待ってくれないし、アタシほど甘くないからね!」
と。
……まあ、これが例えとして正しいかどうかはともかくとしてw、「いくらでも金を借りに来て、なおかつ返す気がないような人」の救済方法としては、妥当なところだろう。
これを国レベルにまで引き揚げたのが、今回の日本によるIMF出資の意図するところじゃないかなあ。*5


救済のために金を出すのはいいとして、だからって「困ってる国相手に非情の借金取りになる」というのは、日本人は割と苦手そうというか、借金取りってできそうにない感じがしてw
だったら、借金取りはIMFにお任せ、っていうことで、なおかつ「保護主義に走らず、有事における国際的な救済基金の維持に尽力した」という実績を作っておくほうが国益には叶う。これは、軍事的なプレゼンスを発揮するわけにいかない日本にとって、ODAにも似た効能を狙えるものでもある。


まあでも、そうは報道されんわな(^^;)
「日本はまたもや世界のATM」
「頼まれもしないのにスネ夫のび太に」
「1ドルも出さないアメリカ/中国はうまく立ち回った。日本も見習うべき」
「そんな金があったら給付金に上乗せすべき。9兆を2兆に上乗せしていたら、一人当たりの取り分は5倍の6万円くらいにはなった」
などなど、その辺りが踊るんだろなといつもの胃が痛くなる暴走IFで。


僕らはいつからレミングスにされちまったんだろう(´・ω・`)

*1:昨年の暫定税率騒動で道路関連予算が組めなかった地方自治体が山ほど出た件は、もう忘れられてんだろうかなあ。

*2:ドル

*3:中国のほうが外貨準備(正確には米ドル=米国債権)の残高が多いのに、それを出さないので国際的な批判を浴びてるらしい。

*4:でも、野党党首は風邪引いてドタキャンしても、風邪引いて入院しても、食後に昼寝しても問題なしw

*5:韓国について特に思うところはないけれども、近年で一度デフォルトをやらかした経験がある国、(そしてここがスッ転ぶと日本の輸出業(特に工業製品の部品輸出とか、観光収入とか)がダメージを食らうので、できればほどほどに潰れないでいたほうがいいんだけど、だからって金を貸しても全然感謝してくれないというか、本当に返す気があるのかないのか(ry )という意味で、韓国経済の破綻というのが現実味を帯びてくると、いろいろ日本にも影響があるかもしんない。近場では、韓国ウォンの対ドル暴落が凄いことになってきているらしく、ワロス曲線ヲチャーの方々は固唾を呑んで見守ってるんではなかろうか。それが現実になったとき、韓国はできればIMFにおかわりを泣き付くのは避けたいところで、できれば日本に直接支援を要請したいところだろう。IMFに融資を頼んだ場合、「前に貸したのにお前はなにをやってたんだ」と叱られるのは必至で、またしてもIMF監視下に置かれてしまう。民主党あたりはこのへん、「IMFへの融資は日本の金の使い途が日本に決められないので、日本が直接支援すべき。例えば韓国とか」という方針で、融資金をホントに回収する気あるのかしらん、という気がしないでもない。