サイトアクセスの傾向

さぼり記の一番下に貼り付けてある日本地図は、マーケティングツール「なかのひと」のもの。
江古田!町内会と、さぼり記と、「超」怖い話公式サイトに貼り付けて、それぞれの動向調査をしている。
これは「どこから来た人か?」「どのくらいのアクセスがあるか?」を調べるものなんだけど、同時に「直前直後に見ていたサイトの傾向から、年齢・性別を推測する」というようなサービスもある。
要するに、直前に「化粧品、レディスの服、スイーツなどのページを見ていれば若い女性」、「プリキュアをチェックしていれば小学生女子、ポケモンなら小学生男子、アンパンマンなら小学校低学年か未就学児童」てな具合。
ある程度の傾向ということなので、概ねそんなところだろうし、それが正確かどうかはわからないけれども、母数が大きくなればなるほど正確性は上がっていくんじゃないかな、と思われる。


さぼり記は時事ネタなどトピック的なエントリーや、それが2ちゃんねるのどこかのスレに貼られた場合wなどに、爆発的にアクセスが増える*1が、通常は平均して一日に1000〜1200くらいのアクセスがある。

これはさぼり記の傾向で、男女比で言うと女性が25%、男性75%で男性が圧倒的に多く、25歳をピークになだらかな山を形成している。
本業の実話怪談屋としての書き込みよりも、「ガジェット(物欲)」「時事問題」の記事が多いせいかな? とも思う。あと最近は少ないけど「Vocaloid」と、呑食関係。
10代がちょっと、それと40代にもちょっと山があるのは、ゲーム関連が10代で、40代は時事関連に引っ掛かってるのかな? と想像。



で、これは「超」怖い話公式サイトのほうの、もっと言うと超-1関連*2のアクセス傾向などを知るために設置されたものなのだけど、さぼり記とは形成されるグラフの形がまったく違う。
アクセスの76%が女性で、24%が男性。年齢は25〜30歳、40歳、50歳と、ピークがいくつもある。全体的に年齢層は高め。
「超」怖い話公式サイトの場合、それを見る目的はほぼ「怖い話を見たい」という、それ一点に絞られる。話題の方向性が複数あるさぼり記と違って、かなり専門的に特化したページと言える。
また、「超」怖い話公式サイトへのアクセス情報(URIとか)というのは、このさぼり記を除くと、後は「超」怖い話のバックナンバー*3ぐらいにしか露出がなく、他は怪談好きの方々のblogなどからのリンクなど、同種の趣味傾向の方からのものに限られるだろうと思う。
その意味で、公式サイトのほうのアクセス傾向というのは、そのままほぼ「超」怖い話の読者傾向そのものと見てよい。


つまりというかやはりというか、怪談は女性が消費するモノだということが窺える。


ところで、ここからが面白いところ。
男性と女性というのは、情報に対する向き合い方が違うのだそうだ。
例えば、男性というのは情報を自ら発信したがる。作りだし、訴え、クリエイティブな何かができないか、と情報を「作る」側に執心するのだそうな。
一方で、女性というのは情報を活用したがる。既にある情報を俯瞰し、精査して、有益な情報を取り出して使う、と情報を「受け取る」側に執心しているらしい。
これは生物学的な性差に全依存する話というわけでもないので、「男性及び男性的な性質の強い人」「女性及び女性的性質の強い人」というくらいの認識でいいと思う。


例えば、ネットに書き込むのは男性が多い。作家として作品を書くことを目指そうとする人は、男性と女性で言えば男性の比率のほうが高い。新聞記者・テレビ記者などのように、報道に関わるのも男女比でいえば男性のほうが多い。もちろん、職業的な問題については、「それを受け止める社会の問題」もあるので、一概には言えない。
blogなどのように、男性でも女性でも関係なく情報発信できるものはあるが、それらについての厳密な性差調査が行われているわけでもないし。


が、「チラシ(の裏)を書きたがるのは男で、チラシを握ってスーパーに走るのは女」と言われたら、結構腑に落ちるw


話を怪談に戻すと、実話怪談を書きたがる人というのは、男性も女性もいるけれども、人数比率で言ったら圧倒的に男性が多い。超-1などでは特に性別に制限や条件を定めているわけではないし、もっと増えて欲しいとも減って欲しいとも、そうした性差によるバランスを取ろうという意識も取り組みもしていない。来たモノをそのまま出す、という方針を堅持しているためだ。
だが、やはり男性のほうが多い。
商業的に実話怪談を書かれている作家諸氏を見渡してみると、もちろん女性作家はいる。いるから目に付くし、「少ない、いない」という意見に違和感を覚える人もいるだろう。だけど、いるけれども、多くはない。


雑誌・書籍のアンケートなどは、愛読者ハガキなどのアンケートの戻りを集計することで数字を出すのが一般的なのだが、これまで幾つかの雑誌や書籍を手がけてきて思うこととしては、それらの多く、つまりアンケートに対して「意見を述べる」という行動を取っているのは圧倒的に男性が多い。*4
アンケートから読者傾向を類推してはいるものの、サイレント魔女リティwの声は主張されないので、アンケートに反映されない。
「超」怖い話・恐怖箱などでは以前から「読者は女性が多いんじゃないかなあ」とは薄らぼんやり思っていた。オフ会などに足を運んでくださる方の比率も、どちらかといえば男性が多い。けれども、女性も少なからずいた。
さらに言えば、以前にも触れた「男性と女性の恐怖の受け取り方の違い」について。実話怪談は、というか「超」怖い話の系譜に類する実話怪談は、「その後についてあまり語らない」「読者にカタルシスを与えない(ナゾがナゾのまま終わる)」「読者の想像力によって恐怖が補完される余地がある」など、どちらかというと男性より女性、または女性的な受け止め方をする人からの評価を得ているのではないか、と思える。


今回の「なかのひと」の性別推計は、この「女性の比率が高いのではないか?」という予想を裏付けるデータになっているように思う。
また、年齢分布で言うと、20代後半から50代くらいまでにわたって広く、そして年齢層が高い。
「超」怖い話・恐怖箱は「大人向けの怪談」または「その恐怖が成立するのに必要な前提条件」について、職業や因習などに関わるものが多いので、ある程度の年齢を重ねていないとわかりにくいという側面があると考えられる。
また、18年やってきた=読者はそのまま成長している、とも言える。40〜50代の読者は18年前には20代、30代前半だったはずだ。それらの読者が離れずにリピーターとして来ている、これがその年齢層が多い理由だろう。
20代後半〜30代前半が多いのは、竹書房「超」怖い話が再開した2003年(6年前)に、社会人になったくらいの層ではないかと思われる。彼等は18年前の勁文社版創刊の頃には小学生かそれ以下なので、勁文社版をリアルタイムで追っていたとは思いにくい。
ここでも、「超」怖い話は大人の怪談という位置づけ、さらには女性が惹き付けられる分野なのだなあ、と再認識できる。


この「大人の女性」というのは、同時に占いやスピリチュアルな方向のものの一大消費者層でもあるのだそうで、以前、恋運暦(イーストプレス)に書かせていただいたときに、対象年齢は27歳と言っていた気がする。たぶん、そのまま読者は上に伸びて(読者の成長に合わせて)、今はアラフォーと言われている人々とも重なってきているのかもしれない。


では、女性は皆夢見がちで荒唐無稽な怪談好きなのか――と男性諸氏は理解をまとめてしまいがちだが、そういうわけでもない。
先に触れたように、情報を発信したがるのは男性で、情報を受信して活用したがるのは女性。さらに、ファンタジー小説などで「現実と接点がある世界観」を好むのが女性で、「現実と接点がない世界観」であるらしい。もちろんこれだって一概に断定的に言える話ではないのだが、学園モノは女性向け、剣と魔法の世界は男性向け、みたいな傾向はあったらしい。*5


数字だけで傾向をテンプレ化することは非常に難しいし、乱暴だし、危険だ。
が、同じ人間が関わって作っているふたつのサイトのアクセス傾向が、ここまできっぱり分かれた理由は何か? というのを考える上で、両者の違いや傾向をあれこれ類推するのは、割と面白いかもしれない。

*1:最大で一日に2万とか

*2:超-1関係は現在は恐怖箱公式サイトの中にあるのだが、統合されているのでどちらとも言えなくもない。

*3:現在は主に冬のみ

*4:対象読者がほぼ女性のみの女性誌、その逆にほぼ男性のみの男性誌なんかは別。ここでは、対象読者の性別を特に想定していない本について触れている。

*5:これが一概に言えないのは、男性の女性化と女性の男性化によって、その境界が曖昧になってきていることが挙げられる。80年代になって少年誌にラブコメが出てくるようになったあたりで、男性の女性化は始まっていたと思う。一方で、満たされなかった学生時代に郷愁を感じるのは男性で、目の前の現実の充実を求めるのが女性、という調査もあったりするらしいので、それぞれが都合のよいデータを引っぱってきているだけ、と言えないこともない。僕も含めて。