豚インフルエンザの拡散と人類の拡散

WHOにより、フェーズ5に引き揚げられた模様。
現在の感染進行状況は、Google Mapで確認できる様子。

H1N1 Swine Flu - Google Maps
http://maps.google.com/maps/ms?ie=UTF8&hl=en&t=p&msa=0&msid=106484775090296685271.0004681a37b713f6b5950&ll=4.214943,-141.328125&spn=167.696492,360&z=1
ピンク………感染の疑い
青……………感染確認
黄色…………検査の結果陰性
ドットなし…死亡(マーク内に・がないものは既に死亡)


感染者、死亡者の居住地が地球規模のデータでリアルタイム更新されるようになっていることだけでも驚くべきことだが、感染者、死亡者の「年齢」「性別」も記録されている模様。このデータまで図化するには、Google Map側の制約が大きいのかも。
これに「人種*1」の情報が加わったものが気になるところ。



豚インフルエンザが流行るより数日前、ディスカバリーだったかヒストリーチャンネルだったかナショジオだったか……どれだか忘れたけど、CSで「アステカ文明がなぜ突然消滅してしまったのか(中世中南米人種はなぜ絶滅したか)」について新説を追う、というような番組をやってた。かいつまんだ内容はこんな感じ。

一般的にはアステカ文明は、征服者であるスペイン人が持ち込んだ梅毒を始めとする元々中南米にない病原菌に対する抵抗力(免疫力)を持たず、医学的にも遅れていたので疫病疾病の蔓延を防げずに同時多発的に死亡、絶滅した……とされてきた。僕も昔そんなふうに習ったような気がする。
が、長旅で重病者も多く瀕死状態だったスペイン人を治癒したのはアステカの治療師達であったそうで、アステカ人は薬草の効能や当用に秀でていたため、必ずしも「アステカの医療が劣っていた」とは言えないらしい。
病原菌に対する抵抗力の話で言うと、同じく大航海時代にヨーロッパ人との接触で滅びてしまった種族が多くいる南太平洋の孤島などでも同じ説明が出来そうなのだが、どうも人類の発生と伝播に関係があるらしい。


元々人類は南アフリカの一人の女性*2から発生し、数万年掛けて地球全土へ広がっていくわけなのだが、そのごく初期の段階で何らかの自然現象か疫病かによって「地球の総人口が数千人*3」になるまで激減してしまったことがあった。
それまでの南アフリカにあった居住地から、少数の部族が移動・拡散していき、北アフリカユーラシア大陸に渡って中央アジア*4、ヨーロッパ、中央アジアから東アジア*5に広まった。
アメリカ大陸へは、カムチャッカ半島からアラスカあたりがかつては地続きであったと思われ、この地続きだった北米大陸から今度は南に向かって進んでいき、中米、南米へと広がっていった。
その間、同族(近親部族)間での近親婚を繰り返しながら人数が増えていったわけで、これは発生源である南アフリカから遠ざかるほど近親婚の血が濃くなり、南アフリカに近いほど「原初の遺伝子を幅広く保有」し、またできるだけ異なる部族/種族間で婚姻繁殖するほど、強い遺伝子を継承できる、ということになるような気がする。
身体的な能力が必要とされるスポーツで黒人選手の活躍が著しいのは「歴史的に虐げられてきたから過酷な練習努力に耐えられて屈強」なわけではなくて、「原初のイヴに近い身体的性質を保持しているから」と考えていいのかもしれない。
合いの子というかハーフというか、国籍上ではなく民族・種族的にできるだけ異なる者同士の婚姻は、近親婚によって血を濃くするよりも、優性の遺伝子の伝承・拡散に与する、という話は、ハプスブルグ家の滅亡を反例として引くと理解しやすい。*6


要するに、南アフリカから(陸路で)遠く離れれば離れるほど、近親婚の濃度が高まり、遺伝子的な揺らぎ(ばらつき)が少なくなるので、疫病などに対する免疫力が弱く、一種類の原因によって同一形質を持つ全体が全て一気に絶滅してしまう恐れが高くなる、というような話。
*7


で。
現在、豚インフルエンザが猛威を振るっているのはメキシコ。
中米。
現在のメキシコ人はそのままアステカの血統の純粋後継者、というだけではなく、スペインから入ったラテンの血wと、北米のエスキモー、インディアン、南米アンデスの人々などなど、モンゴロイドと濃密に混じった血統を持っている。
そう考えてつつ、先のアステカ絶滅の話と人類拡散と近親婚と遺伝子の話なんかを乱暴に重ね合わせてみると、現時点で豚インフルエンザの感染者のうち、メキシコからの帰国者・移動者などによって罹患後移動した者と、それに二次・三次的に接触して感染した者には、罹患の確認がされていても、死亡者が出ていないことの理由が浮かび上がってくるような気になってくる。
今後はわからないけれども、現状で死者が全てメキシコ人(部族・種族的意味で)だとするなら、アステカ滅亡の説明が当てはめられるかもしれない。


Google Mapのデータは「年齢・性別・罹患者/死亡者の所在地」はわかるものの、それが人種的に何人なのかについては、恐らく表示しにくいだろうと思う。
アメリカは、建前として人種差別撤廃に肯定的でなければ、社会的信用や発言力が危うくなる「自由の国」である。
故に、「黒人だから平気、白人だから平気」というような話題をデータとしては出しにくい。故に、Google Mapにそういったデータが上がってくると、人種差別として非難される恐れがあるからだ。
アメリカは密入国/不正入国も含めて、中南米からの人間の流入が多い。このため、メキシコ方面の遺伝子を持った、「国籍はアメリカ、人種は中南米」というアメリカ人の死者は数日内に出るのではないか。
このとき、アメリカでの死者の人種が公開されなければ「人種に拘わらず罹患、死亡する」という説明の材料になるし、人種が公開された場合には「なぜメキシコでだけ死者が出ているのか」の説明の一助になるかもしれない。


なお、メキシコでのみ死者が出ていることについて、「病院に掛かることができない貧しい人々が多いから」というニュース解説がされたりもしているけれども、
「発症から数日で死ぬ*8
「現場で対症方針が定まらず、原因がH1N1ことがわかっても対応ができていない」
「罹患が認められたが、快方に向かった」
という例があることなどから、貧しさとはあまり関係ないような気がする。メキシコ以外に死者が出ていない理由は、貧しくないから*9というのは、その意味でちょいと拙速な結論のような……。*10
ともあれ、エイズエボラ出血熱SARSのような、「罹ったら100%死ぬ」という疫病ではないと思われる。


遺伝子の耐性に関する話というのは、多分に人種差別に繋がりやすい上に、僕のような門外漢が正しく説明できる部類の話題ではない。
ので、「今わかっている情報を、やや乱暴に重ね合わせた」という以上でも以下でもない、ということは付け加えておく。



20090430 16:34追記

asahi.com朝日新聞社):豚インフル、米国内で初の死者 訪米中のメキシコ人幼児 - 国際
http://www.asahi.com/international/update/0429/TKY200904290146.html

アメリカ国内で初の死者が出ているが、「訪米中のメキシコ人男児」であって、「アメリカ在住の非メキシコ系アメリカ人」の死ではない。
単純に「アメリカでも死亡者」と理解するのは正確ではない。

*1:語族・文化的民族というより、DNA方面の差違

*2:原初のイヴと呼ばれる

*3:2000〜3000人程度

*4:中東から東へ

*5:中国、日本などの北東アジアや、タイ、ベトナム、フィリピンなどの東南アジアなど

*6:ハプスブルグ家は一族から王の血筋を「輸出」することでその権勢を一族で占有し続けたが、「血の純化」のため、近親婚を繰り返した結果、身体的虚弱者、精神的虚弱者(ぶっちゃけ狂人)を多数輩出することとなり、最終的には遺伝的血管から性的不能者を輩出するに至り、その正当な血統が途絶えたとされている。日本で言えば大正天皇で発現した「皇室の血の純化」に対する危機感が、現皇后陛下東宮妃殿下を迎える根拠になっている、とも言えるかも知れないけどそれはまたいつか。

*7:攻殻機動隊」の原作第一巻のクライマックスあたりで、人形遣い草薙素子の間の対話の中に、これとほぼ同じ概念の話が出てくるので、そっち関係の人wは改めて攻殻機動隊(最初の)を読み返しつつ、「揺らぎや変容を加えた進化」について考えたりすると理解が早いと思う

*8:タミフルなどウィルス増殖を抑える薬の投与が間に合わないほど、急速にウィルスが増えるため

*9:飛行機で旅行できる=貧しくないということと、ウィルスの増殖速度に関連性はないような気がするので。

*10:だいたい、治療方法が判ってないのに、金があれば掛からない、すぐ治る、というのもおかしい言い分