「あの人は受験生」

仕事中に、突然なんかのフレーズが蘇ってきて、いてもたってもいられなくなることがある。
多くの場合は80年代、つまりは中学〜高校生の頃に聞いていた曲だったりするのだが、この80年代の曲というのが案外曲者。


単純に「80年代に流行っていた曲」だったら、恐らくは懐メロランキング系を辿っていけば簡単に見つかるのだろうし、そういうのはiTunesからでもAmazonからでも買える。
買うまでもなく、自宅のどこかを漁れば昔買ったCDがあることもある。
が、80年代というのが曲者で、CDがあっという間にレコードを駆逐する、その前夜、その黎明期でもある。
故に、CD化されていない曲も結構ある。
それでも、有名歌手、一世を風靡したヒット曲なら、まだ探せる。復刻版が出てたり、懐メロwCD全集に入っていることだってある。CD化されているものの多くはiTunesから探せる。
インディーズとか、アマチュアとか、話題にならなかった一発屋とか、一発が出ないまま消えていった人々とかは、結構絶望的。


80年代の僕の「音の源」はというと、確かラジオだった。
ラジカセが手の届く値段で出回りだした時代で、レコードはあったけど中学生にはおいそれと買えるほど安くはなく、ラジオで聞いた曲をエアチェックして、60分や45分のカセットテープに編集して入れたものを、それこそテープが伸びてびろびろになるくらい繰り返し聞いた。
が、ラジオのDJが読み上げる曲のタイトルなんかは詰めてしまうので、曲そのものは入っていても、タイトルがわからん曲が結構あったりした。
しかも、その80年代の僕が聞いていたラジオというのが、コッキーポップだったりポプコンのラジオセミファイナルだったりしたわけで……。
CDどころかレコードまでたどり着けなかったバンドやデュオの曲がまたこれがわんさかあり、下手するとカセットテープの中の音源以外に手掛かりがなかったりするものもあったり。
運良くレコード化されているものも、その後CDにまではたどり着けていなかったりで、そういう曲のフレーズが脳内を埋め尽くしたりすると、やっぱりこれが手に付かない。


数年おきに脳内渦巻くフレーズに「ユーミンの歌にあった、I love you more than you love me*1」というのがある。繰り返しテープで聞いた大変好きな曲だったのだが、曲のタイトルがなかなか出てこなくて、悩んで検索したら、同じことで悩んでやっぱり検索してタイトルにたどり着いてた先達がいた。
これは「あの人は受験生」という曲の一節らしい。そういえばそんなタイトルだった。
すげえなあ、インターネットw
で、タイトルがわかると聞いてみたくなるもので、Youtubeかニコ動にないかしらんと探したら、Youtubeには原曲音源が。

ニコ動にはVocaloidに歌わせた(!)Ver.がそれぞれ見つかった。凄すぎだよ!

「あの人は受験生」はたまたまオリジナル音源も残ってたけど、この手の「もはや厳しい」または「賛同する人は四桁届くかどうかギリギリ」みたいな曲に至るまで、ボカロに歌わせている人がいるというのは、なんとも心強いというか嬉しいというか。おっさんホイホイ


さらに探していくと、当時よく出入りしていた楽器屋さんで流れていた「窓ガラスのへのへのもへじ」だとか、コンセントピックスの「顔」だとかがわさわさ出て来た。
好きな曲ではあるのだが、このへん、今懐メロにお金を出す世代*2やムード歌謡、演歌、クラシックを買う世代*3に比べても半端で、なおかつバブル後のJ-POP興隆期との狭間でもあって、発掘も再評価もまだしばらくはされないんだろうかな、とか思った。
時代的には、フォークとJ-POPの間、メジャーでアイドルが隆盛していた頃で、フォークギターをエレキギターエレアコに持ち替えた、ニューミュージック*4がぽつぽつと流行りだした頃。
ライブハウスに入り浸る人間はたぶんまだ「不良w」かそうでなければごく少数派、そもそもそういうライブハウスも決して多くはなかった時代ではあるまいか。*5


あと10年か20年かしたら、「あの頃のヒット曲」とか「懐かしの青春の」とか言う括りで、僕らが80年代に聞いていた音楽が商品化されたりするんだろうかなと思うけど、カセットテープ以外で聞く方法がない、と諦めていた、限りなくインディーズwの曲を、こうして追っかけていって再び聞くことができるっていうのは、いいな、と思った。


そんなわけで、久々に、「ああ、これ埋没系名曲だったなあ」というのを堪能。
多分、今聞いて気に入ってる曲なんかも、20年も経ったら「埋没系名曲」になってるかもしれないし、突然フレーズが蘇ることもなく、そのまま忘れ去ってるのかもわからない。


今年だと「アノ風ニノッテ」「Perfect World」「蜜の夜明け」は結構気に入ったけど、20年後くらいに果たしてそれらのフレーズが突然脳裏に蘇って、「あああ、あれってなんだっけかあ!」と検索衝動を突き動かしてくれたりすることはあるだろうか。あるといいな。

*1:そして、ここで言われている「ユーミンの歌」というのは、松任谷ではなくてまだ荒井だった頃の荒井由実「少しだけ片想い」の一節。http://www.youtube.com/watch?v=lwLcoN9xh4M 

*2:50代後半から上の団塊世代

*3:さらに上

*4:初期のチャゲ&飛鳥やTHEが付かなかったころのアルフィーの時代

*5:静岡はヤマハのお膝元wなので、僕はポプコンばっかり追ってた記憶がある