12/8と沖縄そもそも論

普天間基地問題が日米同盟の見直しに発展しつつある件についての覚え書き。

なぜ沖縄に米軍基地があるのか、必要なのか

まず、基本的な前提として、沖縄に米軍基地がある理由を再確認。
歴史的な話から言うなら、日本がアメリカと戦争をして、日本がアメリカに負けた結果、沖縄は米軍の統治下に置かれることになった。
太平洋戦争末期、アメリカはサイパンその他、日本の信託統治領だった太平洋上の島々を点々と攻略した。海戦にあっては「拠点攻略」が基本であるわけで、飛行場=軍港=日本軍の攻撃拠点だった島伝いに日本本土に駒を進めた米軍は、日本攻略の足掛かりとして沖縄上陸作戦を行った。
沖縄本島を足掛かりに、九州、四国、瀬戸内、関西、東京……と進軍していく予定だったのが、沖縄が落ちてしばらくしたあたりで無条件降伏に至った。
その後、岩国、横須賀他、各地に米軍=進駐軍の基地、司令部が置かれた。現在の「米軍基地」の多くは、進駐軍の拠点だったところから出発しているわけで、その点を紐解くと「なぜ米軍基地が日本国内にあるのか?」の理由は「日本が戦争に負けたから」と言える。


国連憲章の中に、既に死文化した項目で「敵国条項」というのがある。
国連=国際連合というのは「連合国」のことで、今の国連というのはそもそも「日本、ドイツ、イタリア」を初めとする枢軸国と戦争をする為の連合体であったため、そこには日独伊を「敵国」として定義づける条項があった。
今でこそ死文化しているけれども、敗戦直後はまだ死文化はしておらず、「旧枢軸国が戦争をやる気を起こしたら、いつでもこれを叩く」というような、保険になっていたわけだ。


米軍が日本敗戦後、そしてサンフランシスコ平和条約後も日本に駐留を続けることになる根拠のひとつがここにあって、「日本が戦争を再開させないようにするため、これを見張る」という口実。
日米安全保障条約についてはいろいろ判断は分かれるところで、今の団塊世代の人達は「(安保を結ぶ)政府はアメリカの犬!」として安保反対を叫んだ。これが学生運動
が、そもそも日米安全保障条約というのは

という片務的な性質のもので、日本に有利な安全保障ということになっている。
アメリカにとって、かつての対戦国だった日本が、戦勝国アメリカに再び牙を剥くようなことがあっては危険なので、日本の再軍備はあまり進めさせたくない。
しかし、日本を丸腰のまま放置しておくと、ソ連・中国の南下により、日本が共産化されてしまう可能性がある。
事実、朝鮮半島の北部はソ連の指導を受けた金日成による北朝鮮が成立、中国がこれを支援。アメリカは朝鮮半島全域の共産化を阻止するために、大韓民国に肩入れした。
これが朝鮮戦争
この朝鮮戦争を継続しなければ、いずれ日本は共産化されてしまっていたわけで、資本主義経済圏(西側)の一員としての国際社会復帰を目指していた日本は、自国の自前の軍備を持たない代わりに進駐軍(米軍)をそのまま対共産主義勢力南下に備えた日本の防衛に充てられる日米安保条約は都合が良かった。


朝鮮戦争が終わった後は、今度は日本はベトナム戦争に向かう米軍の基地になった。ベトナム戦争もその要点は「南下する共産主義」とそれを踏みとどまるべく支えるアメリカ、という構図で、これは1945年以降ソ連が崩壊するまでの間、世界のあちこちで見られた「戦争のテンプレ」であった。
日本で、ベトナム戦争反対を組み入れた学生運動が起こるのもこの頃で、「安保反対」「(ベトナム)戦争反対」はセットになっていた。


学生運動の主役だった学生達の多くは共産主義者だった。
当時の気分としては、「日本に勝ったアメリカに協力することの不愉快」を肯定するために、「日本に勝ったアメリカに敵対する共産主義の味方に付く」という心理的な口実の付け替えを背景に、共産主義というより「アメリカへの仕返し」を行うために安保反対が叫ばれたのではないかなあ、と思う。もちろん、ゾルゲ事件にあるような「共産勢力による陰謀に、学生達がのせられた」という意見もあるが、ここでは一応置いておく。


ベトナム戦争が終わった後も、アメリカはアジア(フィリピンのスービックや沖縄)に米軍を駐留させ続けた。
これはさらなる共産主義勢力の南下に備えたもの。
資本主義経済圏での「復興のお手本」となっていた日本が、経済的に復興できたのは、軍事力の整備に大きな費用を割くことなく、中東〜インド洋〜西太平洋という資源輸入・製品輸出のための重要な航路=シーレーンの安全保障を、米軍に頼ってこられたからとも言える。


以上から、米軍基地を国内に置くことの理由は次のようにまとめることができる。

  • 共産勢力の南下を阻止するため(東西冷戦、イデオロギーの暴力の阻止)
  • 日本の経済活動の基盤となる海運航路の安全確保のため


近年では自衛隊他、日本が海防能力を高めて来つつあるので、アメリカ側からは「日本も国力に応じた安全保障努力を分担すべきだ」という意見が増えつつある。そろそろ独り立ちしろ、むしろ協力しろ、ということなのだが、集団的自衛権を行使しない、他国に何があっても手を差し伸べない、という国是が硬直化してしまったことと、「戦争反対」が宗教になってしまったことで、アメリカの負担は軽くはならないまま。


*1

米軍基地が存在する意義

歴史的な事由と重ね合わせてみると、米軍基地が沖縄にある理由は

  • 日本攻略の為に沖縄に上陸したから
  • 朝鮮半島ベトナムに近く、共産勢力南下の防波堤になるため

であるわけで、その意味では沖縄以外の場所に米軍基地が移転した場合、その価値はかなり減じてしまう。
「そこに米軍がいる」
「そこからいつでも米軍は展開可能である」
という事実が、沖縄攻略を考える他国に、心理的な抵抗感を与えることになるからだ。


ソ連が崩壊した今、沖縄の米軍の警戒対象は、北朝鮮と中国にシフトしている。
北朝鮮は日本を既にミサイルの射程内に収めていて、テポドン2はアメリカまで届く、という触れ込みだ。そもそもノドンは日本国内にある全ての米軍基地に届くわけで、その意味でも在日米軍北朝鮮を警戒しない理由はない。
中国はこれまでは「大陸国」「陸軍国」であった。これはソ連、ロシア、インドなどとの国境争いを始め、背後に杞憂を抱えてきたため。
が、資本主義的経済活動を活発化させた中国は、資源確保のためにアフリカ各国をその影響下/衛星圏下に置く、という戦略を持った。*2
そのためには中国は自前でアフリカ及び中東など資源国と自国を繋ぐ海上航路の確保……つまりシーレーンの自力防衛ができるようになる必要が生まれてくる。
空母、潜水艦、渡洋艦隊……アメリカの太平洋艦隊が持っているのと同じ装備を持ち、太平洋、インド洋を自在に航海できるようになる……その中国にとっての大航海時代の最初の一歩は、「まず海に出る」ということになる。
その中国にとっての海の玄関口は、台湾と韓国と日本=沖縄によって塞がれている。
中国が尖閣諸島の領土権を主張している話は知られているが、「中国側の大陸棚にあるから」という理由で沖縄の中国所属を嘯いている話は案外知られていない。


もし、沖縄から米軍基地が撤退した後、なおかつ中国を仮想敵国とせず、なおかつ離島防衛に本腰を上げない場合。
中国は何の遠慮もなく太平洋に出入りできるようになる。
以前、中国の原子力潜水艦が日本の領海を潜航したまま航行する、という事件が起きたことがある*3
沖縄から米軍が撤退し、南方離島防衛が手薄になれば、喜ぶのは中国だ。

与那国島陸上自衛隊の配置検討 浜田防衛相(自民党政権
http://www.j-cast.com/2009/07/08044920.html
与那国に陸自配備しない 北沢防衛相(民主党政権
http://www.y-mainichi.co.jp/news/14522/


以上から、日本が中国を仮想敵=脅威として意識するなら、沖縄に米軍は必須であるし、小沢訪中団140人が「中国は脅威ではない」と言うなら、沖縄に米軍基地があるのはむしろ不都合だ、ということになる。

沖縄以外の場所に米軍基地を移転させてはダメなのか

大阪府橋下知事による「関空に移転させては」という意見や、「硫黄島にでも移転させれば」という夢想論や、「グァムに移転させろ」という暴論が出たりしている。
が、「沖縄でなければならない理由」は、前述した通り。


関空は比較的近いといえば近いのだろうが、防衛戦略上の要衝である沖縄からは遠い。スクランブルを掛けてもタイムラグは発生する。
ましてや、関空上空もまた航空上の「過密地帯」であるわけで、民間機が飛びかう中を軍用機が緊急発進する……なんて運用には、航路がそもそも耐えられないのでは。

硫黄島に移転させろ……というのは、これは関空がダメな理由と同様、防衛戦略上の要衝から遠すぎる。加えて、硫黄島は水がない。生活都市圏もない。
この硫黄島移転論は沖縄から出ているものだが、「近くに街がなければ民間人の被害者も出ないだろう」という意図によるものだろうけれども、基地というのは整備されたインフラを伴わなければならないわけで、関空はまだしも硫黄島という選択肢はあり得ない。*4

グァム移転についても、防衛戦略上の(ry
司令部がグァムに移転するのだから、基地も持っていってくれ、という主張もあるのだろうが、基地まで全て引き揚げてしまった場合、南方地域に米軍が緊急展開しなければならないような場合、グァムから沖縄に一度降りて、それから再展開しなければならなくなる。
沖縄に降りるべき基地がなくなっていた場合、グァムから展開して対応しなければならなくなる。
補給なしでグァムから沖縄上空やその先まで飛んで、無補給で戦闘ができるほど米軍は万能ではない。

そもそも、そうした米軍による沖縄沖への展開というのは、「日本に安全保障上の危機が差し迫る場合に、日米安保条約に基づいて米軍が防戦を行う」というようなケースで必要になるわけで、本来は日本自身が自衛隊をもって行うべきことだ。
専守防衛という国是によって、防衛(ディフェンス)のみ、敵地攻撃ができない日本に代わって、米軍が「敵根拠地、策源地の攻撃(オフェンス)」を担当するというのが日米安保の骨子であるわけなのだが、グァムにまで移転させろ、というのは、そのオフェンス担当の配備を守って貰う側が邪魔するようなものだ。

普天間基地移転問題の選択肢

普天間基地移転問題には幾つかの選択肢がある。

  • 辺野古沖移転案*5
  • 県外/国外移転案
  • 現状維持

まず、辺野古沖移転案は自民政権時代までに合意したもので、アメリカ側のオバマ政権もこの合意に基づいた移転以外は認めない、としている。
また、上述のように、拠点防衛という防衛戦略の性質を考えた場合、沖縄以外の場所への移転というのは戦略上意味がないので、県外/国外移転はあり得ない。
アメリカとしても、西太平洋〜インド洋の管理を中国に任せるほど中国を信頼してはいないし、太平洋艦隊が往来する自由を放棄することはあり得ないからだ。

そして現状維持になった場合。
実は、アメリカはあまり困らない。
普天間基地の移転は、そもそも「住宅街に囲まれた普天間基地の危険性」というところから出発している。騒音、事故などに対する配慮をという日本側・住民側のメリットと、海に面した港も手に入れられるというアメリカ側のメリットの妥協からくるものだ。
だが、この移転問題が頓挫した場合、アメリカは今まで通り普天間基地を運用すれば良いのだから、特にアメリカは困らない。むしろ、移転を前提にしてきた現地住民のほうが困ることになるのでは、という見方もある。県外移転を旗印にしてきた民主党も、またひとつマニフェストが反故になることが確定してしまうので、それはそれで困ることだろう。
民主党が仮に「出ていってくれ」と騒いでみたところで、実力行使が出来ない以上強制力はどこにもなく、日米間の関係が悪化するだけのことだ。
安全保障におけるオフェンスを米軍に委ねている日本が、オフェンスを蔑ろにするからには、自衛隊を拡充し、専守防衛を修正して、自前の「竹光ではない宝刀」を整備しなければならなくなるが、その【実質的再軍備】に必要なコストは、おもいやり予算で賄う米軍の駐留費用を桁で幾つも上回る。
結局、支出ばかりが増える、ということになりかねない。

アメリカ側の政治的事情

アメリカ側は、辺野古への移転を前提に「移転準備のための予算」が組まれているのだが、このまま鳩山政権が結論を先延ばしにした場合、「移転は行われない」という前提で移転のための予算が承認されない可能性が出て来ている。

直前のブッシュ時代は太平洋の西と東を分ける日米両国の同盟関係は非常に良好で強固なものだった。アメリカはいろいろ敵の多い国でもあるわけで、経済大国の同盟国との関係は非常に重要である。
が、オバマに代わった途端、それまで良好な関係にあった日本と不仲になった、ということになれば、これはオバマの外交能力が問われる。
かつて、「日本が共産主義圏に飲まれないように繋ぎ止める」ということがアメリカの利益だった時代の成果が、ここへきて「日本が中国に飲み込まれる」ということになって、アメリカの影響力が及ばない存在に、オバマの時代にそうなった、ということにでもなれば、オバマの失点、アメリカの失墜は小さくない。

現在の駐日大使ジョン・ルースは、オバマ大統領の選挙戦を支えた50万ドルの寄付金を「かき集めた人物」で、謂わばオバマのスポンサー。
本業は起業家+弁護士で、行政経験も外交経験もなく親日派でも知日派でもない。しかし、「オバマ大統領の親友で、側近」であるが故に、日本大使という論功報償を受けた人物でもあるわけで、ルースの機嫌はそのままオバマの対日印象に直結する。

かつて、湾岸戦争時に日本は90億ドルに上る戦費を拠出した。最終的に日本の戦争拠出金は130億ドルにも上る。これを決めたのは当時の小沢一郎なのだが、「日本は金だけ出して汗も血も流さなかった」と、札びらで兵士の顔を叩く行為が、酷く批判された。その反省もあってイラク戦争時には復興支援に人を出す(=自衛隊派遣)が行われたし、アフガン戦争においても地上部隊を送るわけにはいかないが、索敵中心の海上部隊の給油補給活動という、地味だが重要なディフェンスを担って評価を得た。
が、ここへきてアフガンもまた「金だけ出す」という方向に舵を切ることになった。またしても小沢一郎の方針。
アフガンに拠出金をいくら積もうが、やはりオバマもそれを評価はしていないようで、「そんなことより普天間のほうをはっきりさせろ」と迫ってきている。
態度保留でやり過ごし、というのは多分ぼちぼち通用しないところまで、オバマも追い詰められて来つつあるのではないか。

日本側の政治的事情

鳩山政権は、衆院では民主党のみで圧倒的多数を誇っているが、参院では単独過半数を得ているわけではない。民主、社民、国民新の三党を合わせてようやく過半数。故に、連立が重要な意味を持つ。

2007年の時点で、民主109+社民5+国民新4+新党日本1=119議席で、これに無所属の民主系を合わせて、なんとかギリギリで与党民主党過半数をキープできているのだが、国民新が抜けても社民が抜けても、参院過半数は維持できなくなり、参院での法案決定権を喪失する。
2007〜2009年までの、安倍・福田・麻生政権はこの参院での過半数を失ったことによってねじれ国会、衆院参院与野党の勢力が逆転する状態に見舞われたことで、国会運営が空転した。最終的に衆院多数や衆院2/3で再可決するにしても、常に2カ月の遅滞を生じた。麻生政権での経済対策が遅れに遅れたのも、この参院の与党過半数割れがネックになっていたためだ。
普天間問題を巡って社民が連立から離脱した場合、鳩山民主政権はそのままでは政権運営が難しくなる。このため、たった5議席社民党の反対にここまで振り回されることになってしまっている。
もっと言えば、社民党の反対というのも「社民党党首選挙のためのアピール」に過ぎないわけで、結局のところ社民というコップの中の小さなお家騒動のために、日米同盟が揺らいでいる、ということになる。


民主にとって選択肢は幾つかある。

  • 社民の連立離脱を阻止するために、日米同盟を捨てる
  • 社民の連立離脱が障害ではなくなる時期まで結論を先送りにする
  • 社民を切って、公明党を連立に引き入れる
  • 社民を切って自民党と大連立

まず、社民の連立離脱阻止の為、日米同盟を捨てるというケース。今正にそうなりつつある。
が、この選択は時限的なもので、来夏2010年夏の参院選民主党単独過半数を取ることができれば、社民・国民新は連立に必ずしも必要ではなくなる。そうなれば、「文句があるなら野に下っていただいて結構」と大見得を切ることができるようになる。*6
その意味で、「結論は参院選後に(民主が勝って社民を切れたら)」というところまで先送りしたい、というのが民主の本音だろう。


しかしこれは、「民主が来夏まで国民の支持を維持できるなら」「民主が参院選に勝つなら」という前提があってのこと。現状、鳩山内閣の支持率はじわじわと下落傾向にある。マスコミの支持率調査は全力でこれを支えるだろうけれども、鳩山民主が支持を得るためには社民の主張を飲まなければならず、それなら結論を先送りしなくてもいいはずなのだが、社民の意を汲んだ結論は戦略的にアメリカが受け入れない*7
参院選に勝てなかった場合、ますます民主の方針は不鮮明になっていくわけで、日本の内政・政局に振り回されている間に、アメリカ議会は移転予算の凍結、引いては「普天間基地の移設そのもの」が消滅し、「現状維持、今までと同じ場所を維持する」という結論が出てしまう。
そうなれば、騒音問題・事故問題など含めて、普天間周辺現地の人々が最も大きな被害を被ることになる。


そこで、社民を切って公明を引き入れる、という選択肢が浮上してくる。連立政権の成立の過程でも、「ガタガタ抜かすんなら公明と組むぞゴルァ」という民主の恫喝もあって、社民・国民新が渋々下った、という場面があったことは記憶に新しい。
外国人地方参政権公明党がかねてより主張していた法案でもあり、民主党公明党は政策的には共同歩調を歩めるシーンが多い。
長い自民党との連立与党経験からも、「与党であることのメリット/旨味」を経験している公明党が、野に下った自民にいつまでも義理立てする理由は多くはないわけで、民主としては社民を捨てて公明を取るという選択肢を経ることで、普天間基地問題に決着を付けるという選択肢もある。
が、民主党幹事長小沢一郎は、かつて公明党に煮え湯を飲まされた経験を持つ。民主党代表時代には公明党幹部に接近してみたりと、柔軟な姿勢を見せもしたが、先頃も「政治と宗教の接近」について協議する委員会*8を立ち上げてみたりと、公明党との対決姿勢は解除されたわけではない。
だが、いつでも翻せる。
民主党はそれほど頑なな政党ではない……というと柔軟性があって現実的、であるかのように錯覚しそうだが、右でも左でも自由自在にブレることができるので、いつ左を切って天を掴む真似をしないとも限らない。


最後に最も可能性が低いが、ないとは言えないと思えるのが、自民党との大連立。
かつて、自民と民主の大連立の可能性が、福田内閣のときにあった。
これは小沢一郎が持ってきた話で、当時の福田総理は乗り気だったが、結局小沢一郎が党内をまとめきれなかった……ということで、話は流れた。
今回、そのときとは立場は逆だが、民主党側から自民に大連立を申し込む可能性というのはあり得るのかというと、これもゼロとは言えない。
例えば、民主が参院選で敗北して、単独過半数も、連立三党による過半数も、公明を数に入れた過半数も見込めなくなった場合。
衆院は解散しない限り過半数を維持できるわけだから、参院過半数を得て安定政権にするには、最大野党との連立を考えざるを得なくなる。
野党自民党としても、この提案が現実に為されたら、たぶん相当悩むのではないか。与党最大会派として国政に影響力を行使する機会の復活というメリットと、参院選で負けた後の与党民主党の凋落*9、沈む船につきあうべきか、という選択を強いられることになる。


ただこれも、2010年参院選後の話であるわけで、それ以前に民主・自民の大連立が浮上する可能性は低い。
敢えて話を出して、自民の分裂を誘い、分裂した側の一派と民主が連立する……という寝技は、或いはあるかもしれない。
だがそれは、自民としては下手の下手だ。


どちらにせよ、政界再々編という政局を踏まない限り、普天間問題は解決しないことになる。
そこまでアメリカは待たない。
そして、普天間基地移転は事実上停止される。


日米同盟は、やっぱり今、すげーやべーところにいるのではないかと思われる。
ここでは「中国の出方」について敢えて触れていないが、小沢一郎の方針と中国のメリットが完全に一致しているところからすると、「日米安保条約の破棄と日中安保条約の締結」というのを、もしかしてギャグではなくて本気で考えているのかもしれんなあ、と陰謀脳が働いてしまう。

*1:朝鮮戦争特需と自衛隊設立のそもそもについては、話が広がりすぎるのでこの項では割愛。それはまたいずれ。

*2:日本から出たODAを、中国がアフリカ各国へのODAに転用していることが問題になっている他、資源の輸出国から消費国に転じた中国は、アフリカ各地の資源を優先的に買い集める方向の戦略を立てている

*3:国際法上、公海以外の他国領海へ潜航したまま侵入した潜水艦は、撃沈されても文句言えないらしい

*4:硫黄島は現在は米軍・海自の洋上での訓練拠点になっているが、水がないという点は今も変わらず。これが最大のネックになっている

*5:自民党共和党時代の合意。オバマもこれを踏襲・継承

*6:民主党内左派から社民と同調する声が上がった場合はまたきっと迷走するだろうけど

*7:いやんなるほど上述したので理由は割愛。

*8:ターゲットはもちろん公明党

*9:参院選で負けると言うことは、与党が国民の支持を失ったということの証左でもある