三宅議員はなぜ転倒したか?

2010年5月12日の衆院内閣委員会で、小泉進次郎議員が民主党主導の公務員制度改革・改正案に対する反対質問を行っていた。
で、その質問は途中で委員長による職権打ち切りとなった*1
この公務員制度改革については、当初(自公与党時代)、当時の自民、公明、民主の三党の間で合意がなされた内容があったのだが、その合意案は反故にされ、合意案から大幅に後退した民主案がこの日に強行採決された。
通常、本会議に法案が出ていく前段階、つまり委員会の時点で法案の問題点を挙げ連ねたり叩いたりして法案を練っていき、最終的に委員会では全員一致で採決をした後に、本会議に回される。本会議で議員全員参加で紛糾すると収拾が付かなくなるためで、この「委員会審議」というのが与野党の論戦の正念場でもある。
小泉議員の反論は、「政権交代したからという理由で、かつて与野党超党派で三党合意した案を反故にするのはおかしい」というもの。
何がおかしいのかというと、これを前例にしてしまうと、今後は与党案が全て罷り通る、或いは与野党が何らかの妥協点を見つけて合意に至っても、与党はそれを守る必要がない、保証を与えない、ということになる。さらには、極論すると「野党は政治に参加させない」のと同義語になる。
自民党時代にも強行採決はなかったわけではないし、強行採決がなぜ批判を浴びるのかと言えば、「じゃあ、与党に入れなかった国民(有権者)の意見の一切は無視されるのか?」「行政府に与党議員が入るのはともかく、議会からも野党議員をシャットアウトするのが民主政治か?」ということに繋がる。
100人の有権者のうち51人が与党を支持した場合、与党が野党を無視するということは、49人の有権者の意見はまったく顧みられなくなるということだ。さらに、51人のうち26人、26人のうち14人、14人のうち8人、8人のうちの5人、5人のうちの3人、3人のうちの2人……とまあ、最終的には「誰か一人を仲間にすることを皮切りに、残りの26人を味方に付ける」ことで、26/100で全体100を支配できる、というのが民主主義だと言われりゃその通りなわけだが、そのトップに座るのが、常に「優しい人格者」だとは限らない、というか。
ゴールデンバウムを選んだのもトリューニヒトを選んだのも民主主義だったものなあ。*2


で。
その強行採決の際に場外乱闘というか場内乱闘というか、ある意味おなじみの与野党議員によるもみ合いがあった。
今の与野党議員は団塊世代学生運動世代。さらに言えば、学生運動でデモ隊側にいて火焔瓶やゲバ棒を振り回していた側が与党にいるわけで*3、この手のもみ合いというのは学生運動現役時代を思い出して血が滾るんだろうなー、と思う。


その強行採決時のもみ合いで、民主党三宅雪子議員*4が「押されて転倒した」と訴えた。三宅議員は「顔から転倒」、「30秒間立ち上がれず同僚議員に助けおこされ」、「車椅子で委員会室を後にした」らしい。
民主党懲罰動議wを辞さない考えらしい。


これだけ聞いたら、「自民党議員はなんて乱暴なことをするんだ! か弱い女性じゃないか!」といきり立つ人も多かろう。
民主党側も「テレビ映像などを検分して懲罰動議を起こす!」と息巻いているとか。

よくしたものでw、その瞬間をテレビカメラが捉えており、それはさっそく放映された。

http://www.youtube.com/watch?v=ftpgTdZ7ADs

上述の動画は凄い勢いで削除されたようなので、別の動画を。内容はほぼ同じ。スローモーションが大変優雅な感じのもの。
http://www.youtube.com/watch?v=SYRoEHAvtrc

と思ったら、これはこれで不都合動画ということなのか、またまた凄い勢いで削除されている。


じゃあこれだw
映像から邪魔な背景を省き、3人の当事者の動きをクローズアップし、GIFアニメにしたもの……というのを拾った。
動画の25コマ目から40コマ目が核心部分なので、そこのウェイトタイムを20msに伸ばして、スローで検証。*5

……。
まずもみ合いになって押した議員は、どうやら自民党甘利明議員であるらしい。*6
この甘利議員が押した相手というのは、初鹿明博議員(民主)。
甘利議員が議長席に向かおうとしたところ、通路に当たる場所に初鹿議員と三宅議員がいたため、「通せ!」と初鹿議員を押したわけだ。
転倒した三宅議員は初鹿議員の後ろにいた。
映像を見ると初鹿議員を押す甘利議員の手は、三宅議員の身体の前にある。
さらに、三宅議員は、甘利議員が初鹿議員を押したのを肩越しに見て確認してから、初鹿議員を押しのけて自発的に飛んでいる。


ここまでに、

  • 三宅議員の自作自演
  • 三宅議員は初鹿議員の巻き添えになった
  • 三宅議員は甘利議員の起こした風圧で飛ばされた

などの説が出ているが、個人的には

  • 三宅議員はポルターガイストで飛んだ
  • 三宅議員に何かが乗り移っていた
  • あの一瞬だけ内閣委員会の地軸が傾いて、三宅議員だけがそれを感じ取った
  • 何らかの強烈な磁場が発生していて、甘利議員と三宅議員は対反発していた
  • よそ見をしていたときに、三宅議員の手を正面から引っ張った霊がいた

などを挙げておきたい。


ついでに陰謀論も書いておこうw


この初鹿議員というのは、松下政経塾に不合格wの後、自民党逢沢一郎議員の秘書などを務め、1997年の東京都議会選に出馬して落選。
その後鳩山由紀夫の秘書を務め、2001年の都議会選に初当選。民主議員として。
さらに2009年の総選挙で民主から東京16区から出馬して初当選の一年生議員。
甘利議員も知らない相手ではなかろうし、「かつて自民にいた落ち零れ風情が、政治家になりたいがために裏切って民主に」という認識が、甘利議員側にはあったんじゃないかなあ、という憶測が。
初鹿議員が押される寸前の「見くびった表情」というのを見るにつけ、これは初鹿議員と三宅議員が実は最初からコンビ打ちというか美人局的な意味wで、甘利議員をハメるためにわざとやったんじゃないか? と見ることもできる。
だって、「鳩山総理の秘書だった一年生議員」と「その背後に偶然いたのが美人wが売りの一年生女性議員」とかって、狙ってるとしか思えない。押されて倒れたのが男性議員なら話題にならない。女性なら話題になる。悪印象も刷り込める。元フジテレビ職員だった女性議員。「絵になりやすいシーンの作り方」も心得てる。
初鹿議員は自民議員には「裏切り者」で名を馳せているわけで、あの表情で突っ立っていれば、カッとさせる効果は十分。


つまり、わざと。ではないのか。


選挙運動中にドアに指を挟んだとかで骨折と見間違うばかりの包帯ぐるぐる巻き選挙活動を続けた野田聖子とかの例に漏れず、女性であることを武器に「か弱いかわいそうな私に酷いことをするの!」というのを売りにする女性国会議員に対して、最も怒らなければいけないのは女性の自立とか男女同権とかを訴えてる人達じゃないのかなと思う。
この手の国会乱闘と言えば松浪健四郎*7だの、馳浩*8だの、神取忍*9だの、ハマコー*10だの、いずれも武闘派らしく大変漢らしい*11、古き良きw自民系武闘派議員と言われた人々が頭に浮かぶが、三宅議員の今回のそれは、サッカーの「わざと倒れて相手にレッドカードを叩き込む」というそれに通じるものがある。しかも「か弱い女性に手を挙げるなんて!」という世論を喚起しようというのが見え見えの。
男性議員が乱闘で倒れても服破かれてもバリケードの椅子をぶん投げられても、顔を押さえながら車椅子で退場とか絶対にしないよね。
男女平等にするためには、「女性議員でも車椅子に乗せない」か、「男性議員がもみ合いで倒れた場合も車椅子に乗せて運ぶ」か、どっちがより平等だろうw


それにしても、こういう映像がすぐに出てくるのはいいこと。テレビ番組の報道映像は、もっと広く公式にアーカイブして繰り返し視聴できるように整備していくべきだと思うんだけど、すぐに権利者削除されてしまう可能性が高いので、早めにチェックして保存しておくといいかもしれない。
しかし、この映像を元に懲罰動議とか、民主党は本気でやるつもりなんだろうか。





PS.
ま、一応の公平を期すため、三宅雪子議員の釈明を。詳しくはTwitterで。
http://twitter.com/miyake_yukiko35
「本人が言っているのだから、三宅議員の言い分は正しいし、釈明は信頼できる」のか、
「本人が言っていても、言っている内容が正しいとは限らないし、むしろ嘘をついている」のか。
結局、誰が言っているかよりも、何と言っているか、さらには「そう言っている発言者を信用・信頼できるかどうか?」次第で、発言内容の信頼性なんてものは簡単に揺らいでしまう。
共感できれば信頼でき、疑わしければ信用されない。
それは実名(たぶん)の国会議員でも同じこと。というか、国会議員の発言がこれほど信用されるかどうか疑わしい、と思われてしまう時点でいろいろ問題大ありだ。


さて、三宅議員は信用されますかね?
転倒の翌日である今日も、本会議に車椅子やら松葉杖やらで登庁したらしいんだが、車椅子に対する大げさ感、悪印象を広めることになりませんかね?

車椅子に座り、ミニスカートで傷めた足をアピールする三宅議員。タオルを掛けているのは、ミニスカートの中が見えないようにするためで、タオルをたくし上げているのは傷めた足を誇示するため。

本会議に松葉杖を突いて登壇し、同僚議員に支えられる三宅議員。傷めた足がわかりやすいようにミニスカートです。

足を組んで、傷めたはずの右足を何ともないほうの左足で痛めつける三宅議員。本当に痛いんですか。

歩きにくいので同僚議員の手助けが必要な三宅議員。包帯が減っています。



写真は産経新聞が撮影公開したもの。


僕は職業柄、どちらかといえばネガティブな言葉やネガティブな心象を扱う文章と接することが多いんだけど、近年本来字義がポジティブな言葉や、労るニュアンスを持つ言葉などが、どんどんネガティブなニュアンスにすり替えられていることを大いに懸念している。
「障害者は【害】の字がネガティブだから言い換えろ」とかそういうレベルの話ではなく、「美しい」「ゆとり」「車椅子」が、そういう言葉になっていっちゃうのかなあ、と何か心配している。
言葉狩りじゃなくて、言葉殺しだよな。こういうの。




PS2.
新聞、雑誌、テレビ、2chwなどの見出しでは、三宅議員について
「美人の女性議員」
「かわいい車椅子の議員」
といった形容詞がとびかっている。
本人も負傷を強調するために、包帯巻きの生足をミニスカートで強調したりしてるし。
でも、大切なことを忘れている。


この人、今45歳だよ。*12




PS3.
馳浩衆院議員(自民党)の日記による、当人の弁。

http://www.incl.ne.jp/hase/schedule/s100513.html
(中略)
議員会館のエレベーターに、民主党三宅雪子さん、松葉づえ姿で乗り込んでくる。
えらいものものしい。
「どないしたの?」
「昨日の内閣委員会の強行採決で転んじゃって・・・」
と、痛々しい包帯姿。
「運動不足なんですかね、自分で転んじゃって、恥ずかしい・・・・」
と三宅さん。
強行採決与野党阿吽の呼吸でやるもんだけどね。 新人はまだ要領がわからないんだね・・・」
と、同乗の共産党の宮本たけしさんと世間話。
(後略)

あるえ?
自分で転んだのに、なんで懲罰動議の話になってんの?

*1:普通は与党側から質問打ち切り動議が出され、それを委員長が受け入れてから質問が打ち切られ、その後に強行採決wなり採決が行われる

*2:銀河英雄伝説。ゴールデンバウムは民主的に選ばれて終身大統領→銀河帝国初代皇帝に。トリューニヒトは民主的に選ばれた後、保身のために惑星同盟を銀河帝国に売り飛ばした

*3:誤解のないように触れておくと自民党側にも学生運動経験者は多数いる。安倍内閣官房長官を務めた塩崎議員なども学生運動世代。民主党側では旧社会党系議員、労組枠の議員など枚挙に暇がないが、最近の政府答弁ではJR東日本労組の幹部連には相当数の革マル派の浸透があることを認めている。JR東日本労組は民主党の支援組織。

*4:小沢ガールズ、とされる新人議員の一人。元フジテレビ社員でマスコミ枠。まあ、顔で当選した人ですね。http://www.miyake-yukiko.com/

*5:他は10msにしてあります。拾ったときのオリジナルは、すべて3ms。

*6:経済産業大臣http://www.amari-akira.com/ 戦国時代の武田氏重臣であった甘利虎泰の子孫でもあるらしい。トリビア

*7:保守党、自民党。元アマレス選手

*8:元プロレスラー。アマレス出身

*9:女子プロレスラー。柔道出身。女性議員。

*10:元議員・浜田幸一。現悪党党首。武闘派。

*11:繰り返しますが、神取忍議員は女性です。でも、柔道時代は国体の男子選手より強く、女子プロレスラー時代は男性レスラーとも互角に(ry

*12:三宅雪子 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%AE%85%E9%9B%AA%E5%AD%90