インターネット規制法(放送法改正案)、衆院を強行採決で通過

覚え書きとして。

インターネットを政府の規制下に置く放送法改正が衆院を通過

規制の対象を放送からインターネットまで拡げ、政府の権限を大幅に拡大する危険性をはらんだ放送法の改正案が、27日、衆院を通過した。
改正案は、現在異なる法律で規制されている放送と通信を一元化し、
縦割り行政の弊害を排除するというもの。民主党政権は25日の委員会強行採決に続き、27日には衆院本会議でこの法案を可決させたのである。
しかし、縦割り行政の弊害を排除するものといいながら、大きな問題が隠されている。
立教大学社会学部の砂川浩慶准教授は、この法案にはクロスオーナーシップ(メディア機関による相互持合い)の制限や日本版FCC(米連邦通信委員会)の設立など、これまで民主党が提唱してきた放送行政の改革がまったく含まれていないだけでなく、放送や言論に対する政府の権限を拡大する条文が多く含まれるなど、従来の民主党の主張と逆行した内容になっていると批判する。
特に砂川氏は、この法案が規制対象を従来の放送事業から、電気通信を使ったすべてのメディアに拡げる内容となっているため、条文を見る限り、ブログやツイッターなどインターネット上の個人の情報発信までが、政府の規制下に置かれることになる点を問題視する。

http://www.videonews.com/interviews/001999/001450.php

普天間問題、福島罷免、という話題で糊塗される中、民主党は既に10を超える数の法案を「5時間くらいちょろっと話し合って、議論打ち切って強行採決」というスピード採決(民主はそう言ってる)によって通過させている。
自民が200時間掛けて議論して可決させた郵政民営化法は、5時間の議論を途中で打ち切って採決された。


強行採決されたものは、実は我々の日常生活に深く関係のあるものばかりなのだが、ほとんど話題になってないのがコレ。
法案名・通称は「放送法改正案」。なんとなく影響を受けるのはテレビ局やラジオ局のようなイメージが強いのだが、実体としてはインターネットを政府の規制下に置く法案。
記事にあるように、blog、TwitterSNSから2ちゃんねるに至るまで、インターネット上のあらゆる個人的な情報発信に至る全てが、政府による規制の対象下に入る。
極論すれば、時の与党に対して不利益を与える、または疑問を抱く、不安視するような発言、解説を行い、それをblogなどに掲載する行為などは、【放送と同じ】と見なされ、政府の権限でこれらを規制することができる、ということになる。


そんなことできるわけがない、と思われがちなのだが、個人blogを潰す方法などというのは実に簡単で、

  • blogなどを提供しているISPに対して、「事業資格」「免許」などの資格規制を施し、それを楯にする
  • ユーザーの接続を提供しているISPに対して、以下同文
  • 中国で行われている類似の施策に倣って、政府によるフィルタリングを施行する。特定のサイト、特定のキーワードに関しては、どれほどblog他で発信しても、フィルタリングされるので誰も読めない
  • 韓国で行われている類似の施策に倣って、インターネット完全実名制を施行する。自分の実名、実生活への影響を考えれば、発言を思いとどまる人は大量に出るだろうし、結果的に表立った批判*1は抑制される*2
  • 発信者を名誉毀損、侮辱罪、国家転覆罪、脱税、えーとそれから……で直接起訴*3。脱税なら検察庁扱いだし、政府の都合でどうにでもできるし*4


などなど。
陰謀脳は持っていないつもりなんだけどw、現与党の所業を浚っていくと、なんというか「イマドキこんなベタな陰謀誰も書かねえよ!」というような陳腐な態度、陳腐な政策強行、陳腐な人心掌握*5などが伺える。
商売柄、事実/現実はいつだって想像を超えてばかり、商売あがったり、と思うことがしばしばあるのだが、今次の政権ほど「使い古されたアイデアをそのまま実行してる」という陳腐さはないなと思う。このまま書いたら絶対に売れないw
「キミィ、70年代じゃないんだからイマドキこれはないよ」
と編集さんに言われちゃうw


モノカキは、「ペンは剣より強い」ような錯覚に陥りがちだ。
実際には、ペンはしばしば剣に負けるし、権にはもっと弱い。
実話怪談書きなんて、はっきり言って弱い。社会的影響力がある、と言えるほどの立場はなく、ヒット作が出たところでそれが巨万のナントカを産むでもなくw、出版界にあっても印税ウハウハ伝説からは果てしなく遠い。大して注目もされないおかげで、まっとうな人が眉を顰めるような話であっても、なんとか訊いてなんとか書いて、買い手に引き渡すことで体験者、読者の間を繋ぐお手伝いができている。
が、法治社会に生きている以上、「おまえはそれ以上何も言うな。書くな」と、それが法律で決まったら遵守しなければならない。
「怪談などという社会悪、社会に不安をもたらし、民心に怯えと不明をもたらすものは発行禁止」
こんなことを言われたら、そうですね、と従わなきゃならない。*6
それが悪法であっても、大勢が権力を与えた議会が、そうした法を定めたなら守らなければならない、と言ったのはソクラテスだっけ?
好き勝手を今後も書き続けるためにも、好き勝手を許す余地というものを奪わない政府であってほしい。
独裁者に手柄の献上競争をするような政権など望まない。
与党支持者でなければ人に非ずみたいな、それこそ中国共産党みたいな政権に生殺与奪権を与えることを許す気はない。






尊敬する宮武外骨*7は、凄まじい回数投獄され破産しそれでも辞めなかった。
1/10000くらいでもいいから、斯くありたい。
スコブル斯くありたい。*8

*1:政府批判

*2:そういう社会では、密告が横行することになって、互いに誰も信用できないという、一億総晩期のスターリンみたいになる。こうした表だった批判を許さず密告を奨励するような状態というのは、まさに最晩期のスターリンがそれで、相手より先に相手を密告しないと自分が密告されてしまう、という。独裁者は誰も信用しないもので、独裁者の部下は信用されないまでも粛正されないために、絶えず独裁者の鼻息を窺い、手柄献上競争に走る。今の民主党はまさにその状態で、小沢一郎の眉間のシワを読み取って、いち早く鳩山叩きをしたものが次の政権でもいいイスに座れる、というていたらく

*3:これは最近、陰謀ネタでおなじみの二階堂.comが近いことやられてたので様子見

*4:Twitterで民主の衆院議員私設秘書の人の行状について書いたりしたので、ある日突然さぼり記が消えて無くなる日もあったりして。

*5:失敗してるけど

*6:非実在青少年に限った話ではなく、怪談なんかもっとも社会的に許容されにくい分野だと思う。本来は。これが規模が小さく、影響力もないからお目こぼしされているに過ぎない。影響力があると過信したり、またそう思われたりしたら、いつでも抹消されてもおかしくない。同人誌、ネットで続ければいい、という逃げ道を塞ぐのが先の放送法改正案で可能になるわけで、ここらへんがほとんど話題に挙がらないのこそ恐ろしいと思う。

*7:主義主張で言うと、社会主義者だった宮武外骨と僕とではずいぶんどころか光年の隔たりがあるんだけど、「表現の自由への執着」という点については、脱帽するより他にない。外骨は愛すべきバカ(褒め言葉)であると思う。

*8:僕はただ、酒飲んでクダまいて訊いた話を書き伝えて、そういう機会を次代の著者にも引き継ぐ程度のことができれば十分なんだけど、発表や執筆の機会までも奪われる可能性がある事柄には、それが片鱗であっても反対したい。