竹の子書房九州総会

現在、竹の子書房は読者とおぼしき人々が、把握出来ているだけでおよそ184人くらい*1
製作に関わっている、或いは興味を持っている人々が、把握出来ているだけでおよそ106人くらい*2
社員証、と呼ばれるものの交付を受けているポジティブメンバーが、およそ55人くらい。
で、入れ替わり立ち替わりで特に高いテンションで勤しんでいる人が、だいたい40人ぐらい。多すぎです。
友達が友達を連れてくるパターンで増大していくうちに、組版要員は二倍に、表紙デザイン要員も二倍に、イラストレーターは当初の10倍くらいに、著者はええと数えてません。
絵描き・字書きはともかく、地味な組版要員と表紙装幀要員が一人ずつ増えるだけで、処理力が飛躍的に向上した。このへんは校正もひっくるめて『編集要員』と言っていいと思うのだが、例えば僕が校了期間に突入して他の一切に手が回らなくなっても、その間を補完する要員がいて、それでちゃんと全体が滞りなく動いている、というのは実は結構凄い事だ。


「超」怖い話や恐怖箱なんかもそうで、最終的には例えば僕が車にはねられるとか飛行機が落ちるとか階段から落ちるとか、そういった不慮の出来事があったりした場合でも、他の誰かがいればそれらは継続される。読者に取って必要なのは著者個人ではなくて、「怪談を集約・集積・研磨し、再配分する機能」を有したレーベル、ないしシリーズであるわけで、「超」怖い話や恐怖箱はその点で求められたスペックをかなり満たしつつあるのではないだろうか。
書き手の誰かが不調・スランプや、嗜好の変化、やむにやまれぬ個人的事情などで書けなくなることがあっても、別の誰かがサポートに入ることで、レーベルは滞りなく「怪談を集約して再配分する」という読者にとって最も重要な関心事に応え続ける。


ロボットには「操縦することで滑らかに人間の動きをトレースするもの」と、「指示を与えなくても自ら自律的に行動するもの」とがある。スペースシャトル最後のミッションに搭載されているロボノート2は基本的には前者で、日本のロボット研究者が割と熱心なのは後者。
「超」怖い話や恐怖箱で目指しているのは、どちらかといえば後者。竹の子書房についても、いずれは特定のチームリーダーが必ずしもいなくても新刊は滞りなくリリースされる、という形になっていくのが望ましく、目指す方向性は後者。
必要なのは「指示出しをするリーダー」ではなく、「交通整理をする手段の確立」と「アンカー」であって、アンカーは実作業に伴う権限はないと話にならないけど、地位が高い必要は必ずしもない、とかそういう。その意味で竹の子書房という緩やかな集合体は、トップというのがいるようでいていない。長付きであるなしに関わらず、苦労を背負い込むのが楽しくてしょううがない人は、あれこれと「やり甲斐」を見つけてのめり込んでしまい、アイデアを出してかき回すのが好きな人はそのようにし、アンカーを楽しむ人はどんどんアンカーをおもしろがっている、とそういう。


絵を描く人、文を書く人、デザインする人、組版する人、加えてラジオCMを作る人、ラジオをする人。ギャラが出ないので義務じゃないです。締切もないです。本社と給与口座と給与明細とATMは心の中にしかないです。まあ、それはそれでいいじゃないか、という人が竹の子書房社員を名乗っていると、そういう感じ。


先頃、「第一回関東総会」という交流会というか、要するにオフ会があった。主に関東圏の竹の子書房社員がわらわらと集まっての宴会であったわけなのだが、ほぼ全員*3が互いに初対面であるにも拘わらず、怪談であったりBLであったり、竹の子書房という実体のない集団の今後wであったりについて、随分とディープに語り合っていた。
繋がりが竹の子のみなので、話題の大部分が竹の子書房絡みなのだが、それで5時間も話題が保つってスゴイなあ、と思っていたら、先週末には「九州総会」というのが行われたらしい。
九州組ということで、雨宮淳司氏、ねこや堂氏なども参加された模様。雨宮さん、そういうイベントにはほとんど現れない方らしいのだが、「物静かで怪談は饒舌」だったらしい。
居酒屋に「竹の子書房九州総会」で予約を入れたら、居酒屋の人が気を利かせて、こんな箸袋を用意してくれてたらしい。

九州総会、行ってみたかったなあw


何分にもTwitterで緩やかに繋がっている、つまりは全国に散らばっているものだから、他に、関西組、北海道・東北組、中部・東海組などもいるわけなのだが、そちらでも「こっちでもやんねえかなあ」という雰囲気がふつふつと。誰かが手を挙げて「じゃあやるわ」と言おうもんなら、「じゃあ、それで」「じゃあ、それで」と飛びつくんだろうなあ。


このように、竹の子書房というのは物好きな大人が、わざわざ強制されてもいない苦労を自ら背負い込んでおもしろがる、という大人の放課後活動らしいです。時々、思いがけないビッグネームが参加表明しているのに気付いて目眩がします。


この三カ月ほど、電子書籍を巡る状況はめまぐるしく動いていて、ビッグネーム作家*4による電子書籍の独自配信とか、個人がリリースした電子書籍Android向けペイメントシステムとか*5、電子雑誌Airの事業化とか、おもしろそうなものが次々に出てきた。
また、EPUBでの縦書き表示、ルビ、柱、縦横混在表示などなどを実現するEPUB3.0の策定も順調に進んでいるらしい*6
フォーマットがXMDFのような有償ライセンスが不要な何かになるのは歓迎すべきことで、そのためのオーサリングツールが出てくるのを今は待ちたいとこ。
が、それまでに「個人レベルで電子書籍をリリースするとしたら?」という命題が抱える、その他の課題についても取り組んでいかないといけない気がする。


コンテンツの値段は、たぶん思っている以上に今より安くなる可能性が高い。
勝ち組と負け組*7の格差は、恐らく今以上に大きく開く。勝ち組の成功方式を負け組が真似ても、まったく効果を得られないのは多分確実。
バリューのない商業作家は恐らく相当な苦戦を強いられる。
バリューがあっても需要に応えられるだけのコンテンツのストックを保っていない作家は、利を実に変えられない。
特に周知宣伝の部分で、個人は埋没する。


とかなんとかに加えて、他にも幾つもの課題がある。
このへん、竹の子書房の三カ月で見えてきた事柄でもあって、「やってみなきゃわからないことは、例え無駄足になってもとりあえずやってみる」という竹の子書房の精神で得られた「買えないもの」の価値は大きい。
そこに商機があるんじゃないかな、と考えてみたり、欲を掻いたらたぶん破綻するなあということがあったり。
3年後のことはわからんけど、僅かなりとも「生き残りのためのヒント」を自分達の手と目で見つけ出したいものだと思うのだった。


竹の子書房は現在、平均して週に二冊以上くらいのペースを保ち、月産新刊10冊をキープ中。
若い頃、同人誌やってたこともあるけど、ヒマ人の学生ですらこんなペースで本出したりはしてなかったと思う。何やってんだ大人。僕以外の大人の人達がどうも頑張りすぎだと思います。



http://www.takenokoshobo.com/


……おっと、怪想の再校のプリントアウト終わった。
読むぞー。

*1:代表アカウント@takenoko_shobo をフォローしている人。

*2:作業用アカウント@ts_p をフォローしている人。

*3:一部例外除く

*4:村上龍のG2010

*5:Androbook

*6:もう実作業はかなり進んでるようで、正式策定は2012年頃

*7:という表現が正しいかどうかはともかくとして、バリューがある人とない人と言い換えてもよい