電子書籍作成(0)

先だって、株式会社デネットさんという会社から「電子書籍作成」というePub作成ソフトのモニターを、というお話をいただいた。
承諾したところ、本日サンプルのソフトウェアが到着。
早いとこインストールしてみたいのだが、今は目の前の締切がそれを許さないので、まずは箱を眺めて箱書き情報から語ってみる。


ざっくり言うと手持ちのテキストデータと画像データから、ePub*1形式のファイルを生成するというもの。
ePubは実質HTMLと変わらないので、HTMLの作成能力/経験がある人なら使えるはずだ。


現在流通している電子書籍の方式は、ePubかPDFか、そうでなければXMDFか.BOOKか、まあそんなとこかなあ。
電子書籍研究団体であるところの竹の子書房では、InDesign組版されたものをPDFに吐き出す方式を採っており、基本PDFで配信している。
PDFは無料ビュアーがあり、PCはもちろん、iPhoneiPad、Andoroid、kindle、一部のガラケーでも表示が可能だ。
また、InDesign上で作成したデザインをそのまま表示できる、つまりグラフィック性を重視できるので、大変見栄えがよろしい。デザイナーが凝ったことをやっても、それが紙に出てこないというだけでちゃんと反映される。
本業での稼働率が高いInDesignの習得演習から始めた、という経緯はあるけれども、今後「商業誌を紙に印刷、同じデータからPDFを吐いて電子書籍を作成」といったフレームワークになるだろうことを考えると、同じInDesignで作成できるPDFはいろいろと実用性もあり、便利。


ただ、PDFもいいことばかりではない。
まず、グラフィック性重視ということは表示させる端末の性能や環境にいろいろ左右される。現在はiPhoneRetina表示向けということで、960×640のフォーマットで表示されることを念頭にデザインされている。IS03もほぼ同じ。iPadだと若干左右が余る。これが他のAndroid携帯やタブレットPCなどではさらに違いが出てくる。そういう意味で、PDFはデザイナーの意図を再現させやすいが、もし完璧にやろうと思ったら対応端末ごとに別のデザイン、別のファイルを作り直さなければならず、大変めんどくさい。
また、PDFはリンクを埋め込むことができるが、これに対応してくれるのはPCからAdobe Readerで開いた場合で、iOS系端末やAndroidのPDFアプリの多くは、URLにリンクを埋め込んでも開いてくれない。


対して、1ファイルで異なる端末で概ね同じような感じに表示させるユニバーサルデザインを優先視しているのがePub
基本的にはHTMLの拡張なので、ブラウザのようにウィンドウサイズが変わってもそれぞれに対応する。1ファイルで異なる環境に対応してくれるので、複数のファイルを用意する必要がなく、相手の環境をあまり気にしないで済む。*2
基本的にはHTMLの拡張なので*3、画像の配置やリンクなどはブラウザでWebページを見るのと同じ感覚で扱えるし、HTMLと同様の挙動のページが作れる。Webとの親和性も高く、ePubファイルからWebへのリンクもさせやすい。
その代わり、ページの形状や位置に依存するデザインが、内容と連動しているような場合には、PDFほど厳密なことができない。
そして、ePubは現在のところ横組みしかできない。HTMLに縦組みがないのと同じで現在のところこれはどうにもならないのだが、これについてはePub3.0という縦組み対応の標準化が完成されれば、縦組み、ルビ、柱、縦横混在デザインなどができるようになる。が、これはまだ早くて2011年年末か来年以降の話。


ePubという方式はアメリカなどでは既にスタンダードの地位を得ているのだが、日本では表記方式の問題以上に、ePubをオーサリングできるソフトウェアがほとんどなかったことから、ほぼまったく普及してこなかった。
昨年夏に「InDesignからは出力できる」という情報を得ていろいろ試していたのだが、InDesignから出力できるらしい方法は少なくとも「僕が求めているレベル」に及ばなかった。そもそも凄く分かりづらいし。
HTMLをePubにするフリーウェアではSigilというものもあるのだが、これまたやっぱり分かりづらい。
そのへんもあってePubへの興味が薄れ、「とりあえずPDFで」という方向に流れつつ、PDF由来の課題、電子書籍のパブリッシングに当たって「資本力のない個人、及び中小、小規模出版社が直面するかもしれない諸問題」を洗い出すための研究団体*4という形に竹の子書房は進化していったわけなのだが……。


だからといってePubを諦めたわけじゃないんですよ、と。
いずれePub3.0対応をするところは出てくるだろうけど、その前にまずはePub2.0以前のものを試してみなければ話は始まらない。フルマラソンをする前に、まずは1km走からですよ!*5


というわけで、ePub形式の電子書籍を作るためのソフトウェアを、これから試してみるよ、という話の枕。
この先、竹の子書房でリリースする(または過去にした)電子書籍を、実際にePub形式で新造/再リリースすることを念頭に置きつつ、使っていきたいと思う。

デネット 電子書籍作成

デネット 電子書籍作成

http://www.de-net.com/pc3/seihin-annai/ebook/
株式会社デネット http://www.de-net.com/

*1:ただし現バージョンは2.0以前、横組みのみ対応(´・ω・`)

*2:必ずしも万能ではない

*3:大切なことなので二度

*4:手弁当、道楽要素が強いことは認めますが、同人サークルじゃないですw 商業的に活動している人同士の情報交換技術交流団体ですよ、と

*5:そこからか