夜間電力は余っている

日本の電力消費には幾つかのピークタイムというのがあるらしい。
同じ時間に起きて、同じ時間に始業、同じ時間に飯を食い……しかし、帰る時間はばらばら。
なので、
「起きて部屋を暖める(或いは冷やす)時間」
「通勤電車がフル稼働する時間」
「最も暑くなる時間(夏季限定で、午後の1〜3時頃)」
このへんが一番、電力消費量が多くなる。
電力消費というのは、常に満遍なくではなくて、人間の活動時間帯に合わせて延びたり縮んだりしているわけだ。


今、冬が終わり春に向かう時期なので、暖房もそろそろ使わなくなりはじめ(今朝は寒かったけど)、日中も暖房冷房ともに使わずに過ごせるので、電力消費は低めで推移。
計画停電が取りやめになったりしているのは、そういう事情らしい。
意識的な節電効果もあるだろうが、気候的な問題も大きい。
これが冬真っ盛り(暖房)や夏真っ盛り(冷房)だったら、事情は大きく違っていただろうし、昨日以前のエントリにもあるように給電能力が劇的に回復しない限り、春の計画停電が終了しても夏、冬の復活は十分にあり得る。


それと別に、今「夜間の節電」が割と盛んで、夜早じまいをしてしまう飲み屋、パチンコ屋などの遊戯店、早じまいはしないけど「節電に協力しています」というアピールのために明かりを消している店などが増えているのだが、実は【夜間電力は足りている。というかむしろ余っている】らしい。
それはヤシマ作戦計画停電のお陰ということではなくて、元々夜間というのは電力消費量が日中に比べて多くない。というよりも、集中するピークタイムがないので、分散気味で電力消費量の総量の割に瞬間的な需要は跳ね上がらないらしい。

朝は始業時間がどこも同じなので、同じ時間目指して全員が一斉に動くが、夜は「早く帰る人」「残業してる人」「いっぱい引っかけていく人」「二軒目三軒目に行く人」などなど、それぞれのライフスタイルに合わせて分散していくので、実は日中ほどのピークタイムはないのだそう。
もちろん、夕方の17〜19時台の帰宅ラッシュや、終電間際のラッシュはないではないが、それでも朝のラッシュや日中の折り目正しいピークに比べれば遙かに分散されている。


揚水型水力発電は、ダムに貯めた水を放水することで発電機を回す。
夏のピークタイム(午後)に電力需要が急伸するときに、ダムの蛇口を捻って放水された水で発電機を回し、発電するわけだ。
では、この放水された水はどうなるのか。下流に流れていってしまうのか……というと、違う。
夜のうちにポンプで汲み上げてダムの上に戻しておく(揚水)。
そのポンプを回す電力はどこから……というと、夜間の「余った電力」でそれを回すのだそう。
ピークタイムに比べれば、例え熱帯夜があろうがなんだろうが、それほど莫大な電力は必要にならないから、夜間には電力が余ってくる。
これは夏以外のシーズンでも同じで、日中と夜間を比べると夜間は圧倒的に電力が余る。


オフィスでも家庭でも、一般的には夜は明かりを消してPCやテレビを落として寝てしまうわけだから、確かに電力の消費量は下がる。
昨日のエントリにあったが、発電出力の微調整ができないのが原発で、これをコアとしてその上に発電調整ができる火力発電とピークタイムを補う水力発電を組み合わせて給電総量を調整しているわけだが、水力、火力を全部止めて原発だけになった場合に、原発の発電量は「下げる」ことができないので、作りすぎた電力は「余る」ことになる。
今回はその原発の給電力が下がっていることが日中のピークを支えきれないかもしれない懸念を作り出していて、「節電」「計画停電」に向かっているわけなのだが、夜の給電能力について言えば依然として「余っている」のだそうな。


てことは、ナニ?
夜間の飲食店の節電や、街灯・防犯灯の消灯、コンビニの営業時間短縮・夜間営業禁止などの話が上がってるけど、そこらへんは――というと、実はどうもまるで関係ないらしい。


えー。


もちろん、今まで無駄だったことを節約してくことで支出は下がるし、それそのものは悪いことじゃない。
ナニも無理して使わないとこの電気点けっぱなしにする必要は無いわけなのだが、かといって「節電のために夜の営業を自粛」とかってのは、実はあまり意味がないらしい。
まあ、セケン的に気まずい、というのはあるかもしれないw
それを考えると、計画停電で夜19時台から22時台まで停電になっているグループなどについては、どの程度効果があるのか? というのは気になるところではある。
現在、本数を減らして運行されている通勤・帰宅列車=電車は当然相当量の電力を消費するので、それらに回す電力を確保するのだと思えば17〜20時くらいまでの節電、計画停電には大きな意味があるが、21時以降翌朝4時くらいまでの節電は、もしかしたらあんまり意味が無いのではないか――?
というか、夜間の第三次産業*1の萎縮は逆に、「お金を回す」という経済の基本から考えると、むしろ復興にブレーキを掛けることになるのではないか。


「今、それをするのは不謹慎だ」
「節電に協力しないのは不謹慎だ」
という殺し文句が行き交っている。もちろんそれは、時間帯によっては非常に正しいのだが、のべつまくなしに正しいわけでもないようだ。


皆さん、何事もほどほどに。

*1:飲食店、イベント、エンタメ、風俗産業w