消灯

昨晩、竹の子書房のネットラジオ、サデとコータのニョキニョキ☆ラジオに、久々にゲスト出演。
遺託も発売になったことだし(まだ見本届いてませんが)、今回はニョキラジが発火点になったリアルタイム・メタ実話怪談もあったことだし、ということで、諸々リスナーの方にもご報告を……みたいなことをやってたわけなのだが、問題の話の概要を話している真っ最中に、僕の仕事部屋の蛍光灯が消えた。
うちのペンダントライトは、部屋の入り口にあるメインスイッチは入れっぱなし状態で、それを手元のリモコンでOn/Off操作するものなのだが、昨夜はリモコンは入り口に置いてあり手元にはなかった。
放送中の突然の消灯に、一瞬、台風による停電を疑った。
が、PCは二台とも動いてるし、そもそもモニターは通電したままだ。
原因が思い当たらず、とにかくリモコンからスイッチを入れてみるのだが、1秒ほど点灯したかと思うと、すぐに消えてしまう。何度繰り返しても同じ。
確かに電球は煤けているけど、まったく点かないではなく、十分な光量で一度点いてから消える。
しかも、32形、40形の大小二つの灯が、同時にそうなる。
昨日は雨は小雨になっていて、しかし雷もなかったはず。
原因がさっぱりわからない。
というより、「話者、体験者が干渉を受ける怪談」をしている最中にバツンと電灯が切れるとかもう、怖いのなんの。


現在、ニョキ☆ラジ第二放送で今週分の再放送を放送中なのだが、1時間45分を超えたあたりから、僕の消灯時のパニックぶり、というか素で慌てている様子がそのまま放送されている。
「自分が絶対安全圏にいて、しかし本気で怖がっている人の右往左往する様を見るのは本当に面白い」
とは、放送時のMC高田公太の言。
酷い話wなのだが、確かにそれは「実話怪談を娯楽として読む」という行為の本質を突いているとも思う。
遺託では、思いもよらず自分が怪談の成立に不可欠なキーパーソンの一人として登場してしまうという、稀有な実話怪談に立ち会う機会を得たのだが、昨夜の放送はそれをリアルタイムに体現してたなあ、とかなんとか。


そもそも怪談は信用されにくい。
作り話としての創作怪談は、聞き手も「作り話だ」という前提を共有して、一緒に怖がろうとしてくれる。
聞き書き実話怪談は、聞き手は「体験者は実在するのだ」という前提を割とすんなりと共有して下さる。これは先人の苦労の延長線上にあるもので、作家のその先にいる、或いは「いるけれど約束として存在を伏せられている」体験者の存在を、肯定的に認めた上で信用されるものだ。
体験者が実在し、体験者がそれを実際に語り、その体験者とのやりとりを目撃、同時に体験する人が複数存在し――。
実はこういう証言者が多く居合わせる怪談というのは、多いようでいて少ない。
「クラス全員が目撃した怪談があってさ」
と何十年か前の記憶として頂戴することはままある。
が、遺託巻末に収録の「位牌の遺言」は、昨年末の出来事である。
体験してる時点でも、そして書きまとめている時点でも、
「これを信用して貰うのは、至難の業」
と思った。
だけど、ねえ。証言者がこれほど多い怪異もねえ。
というわけで、遺託収録の「位牌の遺言」と、それを巡る周辺の出来事は事実であり、そこに登場する人々は実在しています。もし裁判になったら弁護側の証拠としてログを提出でき、複数の証人喚問ができるレベルの。







「こんなことがあるから実話怪談は止められない」と、誰かが言っていた。
「こんなことがあるから実話怪談は怖い」と、僕は思う。
怖いからこそ、真摯に向き合わないといけない。です。