悪筆フォント

仕事柄DTPをやったりする関係もあってフォントが好きだ。
日本語のフルサイズのフォントはなかなか安くないのだが、欧文(英数字)のフォントは安くいろいろ手に入りやすいので、Windows3.1時代からあれこれ集めていた。
秋葉原の秋月商店に通って輸入物のフォントを漁ったものだった。(そして、海賊版ではない輸入もの製品CD-ROMの中に、しばしばウィルスが混入してたりした。大らかな時代であった)
 
この手のフォント弄りをしている人が、一度は夢見るのが「自分フォント」。僕も夢見ないではないが、気が遠くなるような字数のフォントをタブレットでちくちく書いたり直したりしていく作業は、性格的に不可能ということで断念していた。
最近スキャナを衝動買いしたが、実はこのときはフォントを漁るために池袋ビックカメラに出向いたのだ。もちろんフォントは買ったが、そこにソースネクストの「まるで手書き」というソフトがあった。手書きで書いた自分の文字をスキャナで読み取り、そこからTrueTypeFontを起こそうっていう、まああるといえばあるソフトだ。
その時点では「まあ、うちスキャナないですしねぇ(名刺用の小さいのしか)」ということで手に取った後に棚に戻してたのだが、その直後にフラットベッドスキャナを衝動買いしてしまった。「ないですしねぇ」と棚に戻した手前(そしてソフト売り場とスキャナ売り場が離れていた手前)、そのときには買わなかったのだが、スキャナをいじくり回しているうちにむらむらと欲しくなってしまい、ソースネクストのサイトからDL購入してしまう。
 
で。
正直言って僕の字は悪筆である。
右肩上がりとか左に倒れて、とかの騒ぎではなく、「癖に一貫性がない」というくらい汚い。それでいて「ああ、AZUKIの字だな」とわかる程度には統一されている。ま、それが癖というものであるわけだが……。
この悪筆がそのままフォントになる。なんとなく痛快。
というわけで、さっそく元になるデータを書いてみる。
ぶっちゃけて言うと、示された例文を200字の原稿用紙に書き写し、それをスキャナで読み取って、テキストデータと照らし合わせながらTTFに置き換えていくというものらしい。
つまりは「書き取り」をしなければならんわけである。
自慢じゃないが、「文章を書く」商売をしてはいるものの、日常的に打っているのはキーボードである。たまに請求書書いたり申請書書いたり封筒の宛名書いたりすることはある。献本に付ける挨拶状はさすがに印刷しているが、個々の相手に入れる一筆は手書きになる。献本用の封筒に宛名を書くこともしばしばある。ごく稀に、拙書にサインを入れさせて頂くこともある。が、どれもこれもスゲー悪筆である。これは受けとった人が迷惑というか、古本屋に売りにいけない汚さというか……。
その悪筆をフォントにするためには、まず自分の汚い字を改めて正視させられることになるわけで、これがなかなか苦痛であった。だいたい、200字書くと3文字くらい間違える(笑)
よく知っている、よく使う字なのに、「書くのは数年ぶり」なんて字もある。(だいたい、請求書に書く文字は決まっているし、薔薇・魑魅魍魎・蜘蛛・躁鬱なんて、手書きの手紙に書く機会はほとんどない(^^;)
気分的には自分に何かの罰を与えているような気持ちになる。
一方、「俺って字が汚いなあ」というのを再認識しつつ、写経をしているような気持ちにもなる。
で、とりあえずその自罰的写経によって書き出された自分原稿を認識させ、自分フォントを作って、それで漱石草枕の一節を印刷してみた。
 
 
 
 
 
……夏目先生、ほんとうにごめんなさい。orz
なんか、名作・草枕が予備校生がチラシの裏に書いた独り言みたいになっちゃいました。
 
 
ま、なんだな。
これは、たまにはペンでも筆でも持って、心静かに書道の練習でもしろってことだな、と思った。
今のところの計画では、「普段通りの悪筆」で常用漢字をあと1800字書いて、AZUKI悪筆フォントを完成させ、次に「超」怖い話にご協力頂いた方に献本する際の挨拶状に使ってみようかと思っている。
無礼この上ない字というか、読めない人が出てくるかもしれない。
それでいいのか、自分。