今年の竹の子書房の活動とその感想

今年の3月くらいから竹の子書房密林支社と題して、「電子書籍を有償頒布する」という課題に取り組んでいる。詳しくは、密林支社のWebページ http://www.takenokoshobo.com/kdp/ に譲るとして、将来的に「電子書籍個人出版するためのノウハウ」の獲得は、執筆を生業とする同業者の間でも興味と期待と懸念の材料にはなっていることと思う。


これから執筆する新作を展開すること、旧作を改めて電子書籍化すること、絶版本の電子書籍化、著作権の消滅した古書の電子書籍化などなど、一口に「電子書籍化」「電子出版」と言っても抱えている問題は様々。
特に「著者」としてやってきた人達は「原稿さえあれば簡単に本が出せる」と考えがちだし、そのように煽っている電子書籍ハウツー本も少なくない。
だがしかし。実際には「編集作業、校正作業」があり、できあがった本を店頭(Amazon)に並べるだけでは売れないわけで、さらには「販促活動」というものも考えていかなければならない。
特に、著者としてのみ本作りにかかわっている人にとって、「書いて並べれば勝手に売れるもの」と思っていた本が、「売ろうとしないと驚くほど売れない」ことに気付かされることは多いのではないだろうか。
常々「電子書籍はとにかく売れない」と繰り返してきて、まあ実際売れないんですけどw、それであるが故に「紙の本を電子書籍にするために掛かるコストを、電子書籍の売り上げでは回収できない」「売れるように工夫(宣伝)をしても、その宣伝コストを電子書籍の売り上げでは回収できない」という、なんとも逃げ場のないジレンマから脱する方法が見当たらないのもまた事実。

電子書籍は紙の商業誌に比べて少人数で動けるから、紙の本より売れなくても収益は確保できるはず」
と誰もがそう思う。まあ、僕も昔はそう思ってましたw
実際にはどうかというと、紙の本と電子書籍の大きな違いは「完成したデータを、紙に印刷するか電子データとして配布するか」という完成品の頒布方法の違いなんだけど、それ以前の「データを完成させる」っていう工程は、紙でも電子でも実は言うほど大きく違わない。
つまりは、「データができあがった後」ではなく「できあがるまでに掛かる手間暇とコスト」には大きな違いがない。
元々薄利多売でそうした制作費を確保してきた出版という産業形態から見た場合、電子書籍は少なくとも桁二つくらい市場規模が小さい(2013年でもそういう感想は変わらなかった)以上、紙の書籍と同じだけの制作コストを掛けられないのが実情だった。
しかもこれ、「著者の印税」とは別枠の、編集・制作コストの話だからね。


校正をかけない本のクオリティは「誤字が目について内容が頭に入ってこず読むに堪えない」になってしまうわけで、そのために校正が必要なんだけど、よい校正仕事は「完成品のどこに問題があったのかまったくわからない状態に仕上げる」ということであって、完成品だけ見ると校正要らないじゃん、と逆に思えてしまうのが素人の浅香光代という奴で。
実際、その校正に掛かる手間暇は「著者単独」ではどうにも軽減できない。
おそらくやはりここがネックなのだなあ、というところに何度も何度も立ち戻った。