起承転安倍

ちょっと前まで、「起承転小泉」というのが流行っていたが、それはそのまま「起承転安倍」にスイッチされたらしい。


実話怪談は、起きている恐怖を延々描き続けるタイプのエピソードと、体験者だけがその「恐怖違和感」に気付かず、最後の数行で「あっ!」とその違和感の正体が明かされるタイプのエピソードに、概ね大別されると思う。
もちろん、例外につぐ例外が次々に発掘される世界でもあるので、性急なパターン分類は避けるべきだとは思うが、数頁程度の分量の実話怪談では「最後の数行でそれまでの違和感が一本の線になる」というスタイルは珍しくはない。


で、冒頭に書いた「起承転安倍」「起承転小泉」というのは、一見すると社会不安に警鐘を鳴らす記事や、流行観測記事などの茶の間話から入っていって、最後の数行だけを「安倍政権(ちょっと前までは小泉政権)批判」に繋げる、というアクロバティックな記事のこと。
最近では毎日新聞朝日新聞中日新聞東京新聞などの社説コラムの類で頻繁にそうした形態のかなり無理なオチにねじ伏せようとする構成のコラムを見るようになった。例えば、

「最近の流行はエビちゃん
  ↓
流行と言えば胸にワンポイントが入った服が流行ってる
  ↓
マークは帰属を示す
  ↓
帰属を示す服と言えば軍服
  ↓
軍靴の足音が聞こえる
  ↓
右翼の若者が世界的に増えているタカ派で右翼な安倍政権は危険)」




スローライフスローフードが流行している
  ↓
世間が慌ただしいから
  ↓
IT普及のせい
  ↓
ITが普及すると足で稼ぐ刑事(を描いた小説)は流行らない
  ↓
通り魔犯罪が増えているから
  ↓
折しも安倍政権が発足した。こぞって思考が鈍れば、ムードが先行する。ムードに包まれた国の行方は、戦前をみれば明白だろう。これは、確かに、こわい*1

……えーと、ちょっと待て(笑)
それはギャグで言ってるのか(笑)

要するに、最近の新聞社では世の中の出来事を紹介しつつ、その原因は「小泉政権の失政の結果」であったり、「誰もが多数派になって(同じ意見の人が多い=多数派の形成)安倍政権を支持するのは危険」に結びつけることでコラムのオチにするというコラムを書くのが流行っているらしい。
これは、「○○○があった→それは幽霊の仕業です!」と決めつけて終わる古いタイプの怪談みたいなもので、あんまり続くと読む方も飽きてくる(^^;) それこそ「またそのオチかよ!」のように言われかねない(´・ω・`)

実話怪談ではアクロバティックな構成を探求することもしばしばあるし、途中経過で違和感を匂わせつつも、最後の瞬間までオチを読まれないように注意深く構成を考えるべきだとは思うけど、前振りとオチが乖離しすぎるというのもどうかと思う。
ということで、大手新聞を参考に、自分の反省材料にしたいと思う。

MSN-Mainichi Interactive:ムードはこわい
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/hassinbako/
asahi.comメンズウェアの胸元 ワンポイントおしゃれに復活 - ファッション - 文化芸能
http://www.asahi.com/culture/fashion/TKY200609110089.html
中日新聞:兵庫県で塾帰りの女の子(9つ)が胸を刺された
http://www.chunichi.co.jp/00/uho/20061002/col_____uho_____000.shtml
ゲンダイネット:サラリーマンの悪循環「おなら恐怖症
http://gendai.net/?m=view&c=010&no=18306


PS.
ちなみに、「起承転安倍(小泉)」で、最後のパラグラフにだけ警鐘を装った愚痴(笑)が入るスタイルのものの他に、「起安倍安倍安倍安倍安倍」というのもある。もまえらもちつけと誌面に突っ込みたくなるが、新聞にはコメンタリーもTBもないし(^^;)
朝日と毎日はインターネット草創期からオンライン版に力を入れ*2ていたし、朝日はRSSフィードにも対応しているが、TBやコメンタリーで読者の反応を反映させるようなことはしない(笑)*3
もし、朝日や毎日の記事にTBやコメンタリーが付けられたら、毎日炎上しそうだよなあ、とちょと思う。

*1:オチ部分は原文ママ

*2:る素振りを見せ

*3:朝日のライバルで、新聞受難の時代に唯一部数を右肩上がりにしている産経新聞はそれをしていて、izaというblog連動もしているが