福田総理辞任表明

昨日の21:30の辞任表明記者会見はライブで見た。
いろいろ触れたいことがあるのだが、今は校了直前なので保留。
後で書くことをちょっと覚え書き。


「総理辞任は無責任」
 →早く辞めろと言ってたのはどこの誰だw


「リーダーシップを発揮すべきだった」
 →リーダーシップを発揮すると独裁者呼ばわり(小泉元総理)、意見を聞くと操り人形呼ばわり(安倍前総理)。


「このタイミングでの辞任は無謀」
 →民主党の代表選と同じ日付で総裁選をやるなら、秋の臨時国会への影響は最小限。むしろ、このタイミングがベターだったような。


「国際問題が山積のこの時期に」
 →国際問題はいつも山積みだけど、洞爺湖サミットが終わり北京五輪が終わり、北朝鮮問題は「動かない」ことが確定したばかりで、グルジア問題は無関心でいるわけにはいかないものの現状では日本にできることはない(自衛隊黒海に派遣することはなさそう)。日本にとっての次の課題は給油特措法改定だけど、安倍前総理辞任のときと同様、民主党が協力しないことで意見を変えない(そして話し合いにも応じない)と言っている以上、国対や水面下での交渉は効果が無く、「目に見える場所で盤面をひっくり返す」以外に打開策がないのもまた事実。国際問題について、民主党の協力を得られないことを前提に局面打開を考えるなら、公明党を慌てさせるしか手はないような。
現在の国会は、参院民主党国民新党新党日本、他で過半数衆院自民党公明党で2/3。衆院過半数で決定した内容は参院が「2カ月間採決を取らずに先延ばし*1にして、2カ月後に否決、衆院が2/3の賛成で再議決」という、重要案件を決めるのに2カ月掛かるという、参院民主党による国会牛歩戦術が効果を上げている。
しかし、衆院で与党が2/3を得るためには公明党議席を足す必要があって、自民党だけで単独2/3はない。
給油関連特措法は公明党の合意が得られない場合は2/3再議決ができないので、事実上頓挫する。


民主党はこれを狙っていて、「とにかく衆院選をやれ」と迫っているわけなのだが、衆院選民主党が大勝(1/2以上の議席獲得)をした場合は政権交替になるけれども、衆院選自民党議席数を減らして*2も、1/2以下にならなかった場合、今まで以上に「何もかも決まらないねじれ国会」が続くことになる。
次の参院選まであと2年あるわけで、それまで民主党が第一党にならない限りねじれ状態は続く。
では、民主党が第一党になればねじれ状態は解消して、全てがうまく運ぶのかというと、これについては実はかなり不安がある。


国会中継(できれば委員会中継)を見たことが一度でもあれば納得いく話なんだけど、民主党の国会戦術というのは菅直人仕込みで、上から下までその全ての質問者が「揚げ足取りと罵倒に終始し、回答者に回答をさせずに質問(という罵倒)だけをする」というスタイル。質問というより、問題提起はするけれども、解決策や打開策、代替案は一切出さないというスタイルなのだった。
これは「代替案を出すと与党に丸呑みされて手柄を横取りされるから、自分達が政権を取るまで出さない」ということらしい*3のだが、コレは要するに、白紙委任してくれたら解決策を教えると言うようなもの。
選択肢を提示して、「どちらがいいか?」というのを選ぶのが民主的選挙なんだけど、「あいつはダメだ。俺のほうがマシ。俺のやり方は、俺が選ばれたら教える」という人に、白紙委任するというのは、ちょっとどうかと思う。
政権担当能力があるかどうかは教えず、やらせてくれれば教える、というのは、ちょっとなあ。*4


ともかく、選択肢を提示して欲しいところ。
民主党は代表選は無投票で済ますみたいだけど、自民党は総裁選で「異論各論の主張」をやって、民主党代表選と同じ日に総裁選をやる、と。無投票で済ます民主党代表選は演説も政策論争もないから、ダイナミックな動きがある自民総裁選のほうが注目は集まりやすい。小泉元総理以後、公開の総裁選で選ばれた総裁の支持率というのは、少なくとも就任直後にはべらぼうに高い(政策に関する理解がもっとも浸透しているのは、総裁選の最中と直後)ので、自民総裁選で注目を集め、無投票再選の小沢代表を埋没させ(元々、小沢一郎というのは寝技が得意なのであって、自己主張を人前でするのが苦手な政治家なので)その人気がさめやらぬうちに解散総選挙議席減を最小に抑えるというのが、福田総理が今この時期に辞任をセッティングした理由じゃないかなと思う。


会見では「先週末に決意した」という話だったけど、その根拠要因を考えるに、
・小沢代表の無投票再選の確定
民主党からの離脱劇による揺さぶり(民主党執行部による「離党者とぶって姫の扱い」を民主党所属の小沢無投票再選に不満を持つ分子に見せつける)
これが、「無風の民主代表選に、自民総裁選をぶつける」ことの意味を最大限にする、最良のタイミングだと考えたのではないか、と想像してみた。


国際的に総理が顔を出さなければ面目が立たないイベント(サミット、北京五輪)が一段落し、民主党が小沢代表の無風三選を決め、民主党から造反者が出……。
なんとも狙い澄ましたやり方。


元々権力に汲々とするタイプではない上に、年金疑惑のときに菅直人を道連れに官房長官を電撃辞任したときに見せた「自分もコマのひとつとして使い捨てる」という、小泉元総理や安倍前総理とはまた違うスタイルを見せつけられたなー、と実はちょっと感心している。


報道・セケンは「無責任」「敵前逃亡」という非難囂々であろうと思うけれどもw、前任者が批判されればされるほど、後任はそれとの対比や期待から、支持率・人気が上がる。これで、小沢一郎が自民総裁選候補者を掣肘するような「政策論争」をするなら注目度も上がるけれども、民主党内は「無風三選」を決めてしまったことで、それをするチャンスも失われた。
この「前任者への批判」というのは美濃部都政の後の鈴木都政鈴木都政の後の青島都政青島都政の後の石原都政のようなもので、次の政権にとっては非常にシンプルだけど効果的な追い風になる。
ただ、前任者が引き際に悪役を引き受ける覚悟があるかどうかというところが重要であるわけで、福田総理はこのタイミングが全て計算の上であるとするなら、ローエングラム元帥麾下にあってはオーベルシュタインなみの業師であると言えるような。
その意図は理解されにくく、当人が「いい人だと思われたいとは、どうも思っていないように見えるw」というところも相まって伝わりにくいだろうけれども、先発小泉、リリーフ安倍の後を、最初から中継ぎのつもりで引き受けて次に繋ぐ最良のタイミングを狙っていたのだとすれば、またしてもフフンの狙い通りかもと思ったり思わなかったり。





……こっ、これは覚え書きだから!

*1:塩漬け

*2:前回が勝ちすぎているので減るのは当然

*3:小沢代表、菅直人の過去の発言

*4:作家で言えば、過去の作品を見せずシノプシスも見せずプロットも語らず、「ページよこせ。文庫書き下ろしさせろ。俺がどのくらい書ける人間なのかは、次号掲載誌上/文庫発売日に書店店頭でわかる」と編集者に宣言して白紙委任を迫る作家(志望)がいたとして、実力の片鱗も可能性も過去の成果も今からやろうとすることの概略も、なーんにも見せない人に無条件の白紙委任をする編集者というのは、ごく稀だと思う。というような例えw