シーローンチ破綻!

ごく個人的にショック。
シーローンチ社が去る6/22に破綻したらしい。

商用打ち上げサービスのシーローンチが破綻、連邦破産法第11条を申請 - Technobahn
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200906231419&lang=

シーローンチは、石油採掘用の海上プラントを改造して赤道に近い洋上から商用ロケットを発射するという打ち上げ請負企業。*1
カリフォルニア・ロングビーチを母港とし、ロケットを赤道付近まで持っていってから起動発射するという豪快なシステムだった。
2008年1月に、発射直後というか打ち上げプラットフォーム上でNSS-8ロケットが爆散するという打ち上げ失敗事故があった。この影響で1年近く商業打ち上げを見送り、今年1月くらいに漸く打ち上げ事業を再開した矢先だったのだが、1年間無収入だったこと、ライバルとなる民間打ち上げ請負企業がその間に事業を拡大したこと、この不景気、などなど様々な要因が重なったようでついに倒産の運びとなった様子。負債額10億ドルだってorz


どってことないといえばどってことない話なんだけど、巨大な船の上に横倒しにして運んだロケットを、まるで巨大なPAC-3のようにw起立させて発射し、軌道投入するというそのギミックには、たいへんわくわくした。サンダーバードみたいで。
まあ、静岡県人は「秘密基地」って好きだからねえw


日本の場合、ロケット打ち上げは種子島にある。以前は大隅半島にあった。
南にあるのは、「赤道に近いほど、地球の遠心力を利用できるので軌道投入が容易になる」という概念からで、地力でロケット打ち上げをする国の多くの射場はその国の領土(または植民地)のうち、もっとも赤道に近いところに置かれる。
そして、できるだけ進行上に都市・大都市がないところ。
日本だと、大隅半島種子島ともに「海に向かって発射」という形になる。
しかし、種子島は日本有数というか世界有数の「台風銀座のど真ん中」でもある。さらには、打ち上げをする場合は、万一の失敗を考えて周辺漁民による漁業ができなくなるので、漁業補償も必要になる。ロケットの打ち上げに適した季節と、台風発生時期が重なり、漁業補償も重なる。このため、打ち上げ可能日数は非常に制限されたものとなり、ロケット本体以外の環境整備に大変なコストが嵩むことになる。


そういった事情も鑑みて、日本がある意味で「思う存分使える射場」として、いずれ海洋発射という選択肢もあったかもなあと(勝手に)夢みていたので、*2海洋発射型施設であるシーローンチはより一層輝いて見えていたというか。


残念。
エネルギアとかボーイングとかの共同出資で作られた会社+施設だが、これを「まるごと買い取る」ことでロケット発射能力の拡充を図ろうとする国が現れる、というようなこともあるかも。
中国あたりとか。*3

*1:同様に、地上から発射するランドローンチという会社もあった気がする。

*2:実際には、技術的な側面、メンテコスト、商業施設として維持していくのに掛かるランニングコスト、ビジネスとして成り立たせるための打ち上げ需要などなど、課題はいっぱいあるし、あった。今回は事故リスクの余波がビジネス面での破綻の遠因になっていると思える。

*3:北朝鮮には金がないし、太平洋に出る手段もない。中国は太平洋に頻繁に進出し始めていること、アメリカの軍事に関する経済負担の援助意志(ハワイ以西の西太平洋を分割管理する、というジョークの申し出など)もあったりするので、軍事面ではなく「ロケットなど平和利用のための」という太平洋に出る正当な名目を得るために動こうとするかも――とそこまで考えるのは陰謀脳か。