参院選について、数えてみたり考えてみたり

[時事]政策と政局で見る外国人参政権
http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20100112/1263324054

参院選の趨勢ネタは、以前にも書いているのだが、今回は別の切り口から。

今年の夏は参院選がある。2007年以来3年ぶり。
で、その趨勢次第で、いろいろな未来があり得る。
衆院選は趨勢によって政権交代もあり得たわけで、2005年の郵政選挙で壊滅しかけた民主党は、2009年の衆院選で同規模の逆転劇を演じ、政権交代した。
議席数の差はおよそ民主(与党)3:1自民(共産その他を除く野党)という感じで、国民の75%が民主に信任を与えた、というように見えるし、実際そのように報道された。
ところが、実際の獲得票数を比べてみると、民主55:45自民で、1:1とは言わないまでも、少なくとも3:1の差が付くほど大きな支持率=得票数の差があったわけでもなかったのだった。*1
つまり、小選挙区制の場合、例えば1人区だったらトップ当選以外の2位以下の得票=支持は、全て無に帰す。100人の有権者がいる選挙区で1位が55票、2位が45票だったら、支持率が10票差しかなくても、当選者にその地区100%の支持があったことになり、45%の不支持は無視される。
もちろん、惜敗率によっては比例区での復活当選という救済措置もあったりすることはあるわけなのだが、基本的には「死に票」が非常に多くなり、ドラスティックに獲得議席に差が出るが、厳密な意味での「有権者の意見の反映」にはならない。
小選挙区制というのはそういう選挙制度であり、これを提起したのが小沢佐重喜、つまり小沢一郎の父親で、これを父子二代の悲願として実現させたのが小沢一郎
郵政選挙で大勝した小泉純一郎元総理は、小選挙区制の特性を生かし切って郵政選挙で大勝利を遂げたわけなのだが、小泉元総理自身は小選挙区制には最後まで反対していて、有権者の死に票が出にくい中選挙区制を強く支持していた、というのは皮肉な話。


で、参院選はどうなるのかというと、やはりこの「得票差と議席差」に若干以上のラグが出てくるのではないかなあ……と薄ぼんやり想像している。
そのへんを踏まえつつ、民主党自民党の勝敗ラインを、自民党側から考えてみた。

おさらい。今回の改選議席

まず、参議院についての簡単なおさらいなど。
現在の参議院は、選挙区選出が146議席比例区選出が96議席で、合計242議席参議院の任期は6年なので、全体の半分、121議席が3年ごとに改選される。


現在の議席数差はこんな感じで、
民主……110
自民……82*2
となっている。
自民は、小泉政権時代の2004年と前回の2007年と、連続して民主に負けていて、前回の2007年参院選でついに参院与党から転落、民主が参院第一党となり、それからの2年間は目を覆うばかりの政治的空転が起きたのは、記憶に新しい。衆院で2/3を持っていても、参院で民主、野党が過半数を占めたため、民主は政策のことごとくを反対、あるいは審議拒否することで政治的決定プロセスを最大2カ月遅延させるという牛歩戦術を駆使。この2カ月のハンデは麻生政権が倒れるまで、延々続けられた。
自民は、まずはこの参院を奪回するところから始めなければならないのだが、では具体的にどのくらいの議席を目指さなければならないのか?

86議席――自民が単独過半数を奪回

まず、現在の議席の内訳を見ると、

  2007(獲得議席) 2010(改選予定) 議席
       
民主 60 50 110
自民 37 45 82

*3

と、こんな感じ。
もし自民党が単独で過半数122(121+1)を確保しようと思ったら、今回の参院選の改選で合計86議席が必要になる。改選は45議席なので、今回だけで40議席をさらに積み増ししなければ、自民の単独過半数は難しい。
というか、マスコミによるキャンペーンを背景にした前回の参院選でも、民主は60議席の獲得にとどまっており、自民が単独で86議席を得ようと思ったら、民主から40議席、つまり民主の改選議席の4割近くを奪わなければならない。
これはいくら追い風であったとしても実現は難しい。2007年の惨敗が、かなり効いていると言える。

66議席――自民と公明が協力関係を継続する場合

自民は公明と長く選挙協力体制を取ってきた。
これは、組織力の問題であると考えていい気がする。選挙における組織力というのは、まとまった票数を確保できる、投票力、の問題よりも、どちらかというと選挙戦を戦う人数の確保のほうが大きいんでないかい、と思わなくもない。
選挙においてはウグイス嬢から電話番の人まで全てがボランティアというか、タダ働きをしなければならない。金を払って人を雇うと、それは公職選挙法違反になる。なぜなら、「お金がある人ほど有利」になってしまうからだ。*4
が、選挙のために平日昼間に何週間もタダ働きをしてくれる、動員されてくれる人というのは年々減っているわけで、その点で公明党の「選挙力」に頼らざるを得なかったというのはあったんじゃないかなと思う。
民主・社民・共産の場合は、この「タダ働きをしてくれる戦闘員w」に相当するのが労働組合で、票の組織的とりまとめ*5や、選挙運動支援などに労組が狩り出される*6
社民や共産が規模を縮小しながらも、ある程度の規模の議席数を確保できるのは、このあたりの支援を背景にしているため。風には一切頼れないが、いきなりゼロにもならない、といったところ。
かつて、共産・社民の支援組織あるいは票田だった左派票は、「強行的左翼ではなく、現実的に政権を取れそうなリベラル」ということで、民主に糾合されてしまった。旧社会党の大部分が民主に合流した後の社民はともかく、一定規模の議席数を確保していた共産党が瓦解しかねないほどの小政党になったのは、民主による左派糾合が大きい。故に、民主は選挙支援組織の性格上、左より政党であるわけだ。


で、公明が下野した後も自民とつるんで協力体制を維持し、民主に対して敵対的であり続けるとするなら、公明の議席数20を上乗せできるので、自民は今回66議席取れれば、自民・公明で参院与党に返り咲ける。
改選が45議席なので、20議席上積みできればよい。
とはいえ、前述のように社民・共産・公明などの議席が底を打っていると考えた場合*7、基本的に自民が議席を増やすためには、民主から削り取るしかない。

自民は右で民主は左、とは限らない

民主は左よりである一方で、前回の衆院選他での勝利をひもとけば自明の理であるのだが、民主が増やした議席は元々自民の持っていた議席、つまりは、自民支持層が民主に転じていると言える。
自民=右派、民主=左派、のはずなのに変じゃないのかということになるのだが、民主が「自民の支持層をはぎ取って議席を積み増した」という事実は動かない。
つまり、現在の民主は「かつて共産党などからはぎ取った左派系支持層」と、「ここ最近、自民からはぎ取った右派系支持層」が混在している、ということになる。
もちろん、自民=右、というのも実はあまり正しくはない。自民は「中道右派」ではあるのだが、それほど右翼右翼した政党というわけではない。*8
どちらかというと自民は、「安定志向=保守」政党であった、と言える。
安定志向の有権者というのは、つまり「現状維持を望む」または「経済的な不安が少ない」と言い換えてよい。
今のままでこれからも、という気持ちが強く、大きな変化は望まないから、今まで通りにやってくれる――という気持ちから、自民が選ばれてきた。
民主などがよく、「自民の間違い」「自民の過ち」を連呼するが、自民を支持し続けてきたのは、他ならぬ有権者自身であるわけで、自民の過ちを声高に叫ぶのは、そのまま「有権者の不明」をなじるのと同じことなのだが、なぜか都合良く「悪いのは自民で、有権者じゃない」とすり替えられてしまった。
というか、「保守の皆さんは悪くないですよ、悪いのは自民であってあなた方じゃないですよ」と、免罪を叫んだ結果、罪を免れたというか自分が悪いのではない、と許された「安定志向の人々」が雪崩を打って民主に付いた。
今の民主は、その民主自身が批判した「古い自民党」の中枢にあった政治家が執行部に居座っているわけで*9
だけど、「自民でなければどこでもいい」「悪い自民をやっつけろ」という単純なアレルギー意識と、「昔、うまくいっていたときに自民にいた人間に、改めて頼れば安定成長路線に戻れるのでは」という、高度成長期とバブルの夢再びと考える安定志向の人々の期待が、民主に注ぎこまれている。
この夢がどのくらい叶えられたのかについて言えば、少なくともこの半年では、どちらかというといろいろ変わったが良い方には変わっていない、というように思う。しかし、自分を免罪してくれた政党、自分が選んだ選択がまたしても間違いだった、ということを受け入れるのは難しく、
「おそらくは、民主が悪いんじゃない。鳩山と小沢が悪いのだ」
「鳩山を辞任させ、小沢を辞職させれば、民主はきっとフレッシュに生まれ変わる」
と考えている人が多いのではないかと思われる。
次は多分、菅直人。それがないとして、では前原、野田あたりが総理候補になるのかと言われれば、民主党内の派閥分布から言えば、鳩山/小沢の後ろ盾がなければ代表戦で一位にはなれない仕組みになっているわけで、やはり解散総選挙が行われるか、参院選で致命的な敗北をするかしない限り、小沢の影響力は衰えない、民主は変われない、ということになるし、実際そうなる。

小政党の動きと連立組み替え

みんなの党が仮に自民と協力体制を取った場合、みんなの党の獲得議席もこれに加えることができるかもしれないのだが、みんなの党の規模が未知数であること、渡辺喜美代表が昨年の衆院選後に「民主党との協力」をほのめかしたりしていること、みんなの党は民主離脱組の受け皿を目指している様子でもあることなどから考えると、あまり都合のよい期待をするのは望ましくないので、ここでは員数外として考える。


自民が例えば公明と協力して過半数に届く議席数になった場合、つまり民主+社民+国民新の連立では、参院過半数が確保できなくなった場合。
その場合、民主には三つの選択肢がある。


まずひとつは、社民+国民新との連立を解消し、代わりに公明と連立する、というもの。公明が単独で20議席を維持できるなら、社民5+国民新4の合計より多くなる。2009年衆院選直後にも公明との連立の噂が立ったが、その噂が立った直後に社民・国民新は民主の要求をのむ形で連立政権に参加した。おそらく公明との連立は、社民・国民新をねじ伏せるためのブラフだったのだろうと思う。これは単純に推測。
だが、民主は公明と手を組めばいつでも社民・国民新を切ることができるわけで、それを社民・国民新との間の意見調整/脅しのカードにはしてきていると思われる。


二つ目の選択肢として社民か国民新のどちらかを残しつつ、一方は切り捨てて公明と組み替えるというもの。または、社民・国民新を連立政権に残しつつ、公明「も」加えるというもの。
公明は政策的には民主と協調できるものが多い。例えば外国人参政権などがそれだが、これは社民は賛成で、国民新は反対している。
沖縄普天間基地移設問題では、公明・国民新のほうが足並みは揃いやすいが、社民はこれに否定的だ。
公明は、社民・国民新、どちらに対しても当て馬にできるわけで、参院選保有議席数だけが連立政権での価値となっている社民・国民新両党にとっては、公明の連立参加は事実上の塩漬けを意味する。
「それが嫌なら議席数を伸ばす」しかないが、与党の評判がよければ票は連立している社民・国民新には流れず、民主に流れてしまう。与党の評判が悪ければ、民主からはもちろん、社民・国民新の議席が増える理由がない。
どちらに転んでも、社民・国民新にはあまり未来はない。

大連立の可能性

第三の選択肢は、民主と自民による大連立。
これはかつて福田政権のときに実現しかけて、民主党内の反対によってご破算になっている。
このとき、大連立を持ちかけたのは小沢一郎だったと言われている。
こうした大連立構想が再び実現する可能性が、第三の選択肢となるのだが、これはそのまま自民と民主が連立する、というような話にはなりにくいとは思う。
民主が衆院単独安定多数を持っている以上、仮に自民が参院で民主と逆転したとしても、かつての自民がそうしたように民主は「衆院2/3」を駆使して独自政策を可決し続けることが可能だ。参院民主がこれまでそうしてきたように、参院自民があらゆる政策に待ったをかけ続けたとしても、最大2カ月遅れで法案は可決できる。

ただこれは、今後も民主が一枚板であり続けるならば、という前提に立っている。
現在の民主は「政権を取る」「選挙に勝つ」という、この目的のためだけに一致団結した選挙互助組織で、選挙に勝つために小沢一郎の権限を与え、実際それによって小沢一郎は党内独裁者になり得ているわけなのだが、小沢一郎が作ったシステムが、小沢一郎の一存でのみしか動かないというものであることを、民主の全ての議員が納得ずくかといえば、まあそれはないだろう、と。
小沢システムに対して反旗を翻すことは、現状では政治的な蟄居と同義語になるので、誰も声を大にしては言えない。


しかし、それを覚悟の上で「党を割るつもりで小沢派(主流派)と対決する」としたら。このケースの場合、例えば岡田・前原・野田・枝野などが小沢と決別して民主を割った場合、最大野党である自民と連立することで、小沢派を擁した民主よりも多数派を形成することが可能になる、かもしれない。これは単純に「二つの派閥に党が割れた」からといって、構成員が1:1に等分されるとは限らないためだ。


そして、党を割った場合に最大野党と手を組もうとするのは、反小沢グループだけではなく、当の小沢派側も同様だということだ。
民主党小沢一郎を腫れ物を触るように扱い、ある意味好き勝手を許している最大の理由はといえば、小沢は党を割ることに何ら躊躇がない、ということに起因する。新生党自由党など、自分が作った党を壊すことに小沢一郎は何の迷いもない。党を割れば、解党時の残金をネコババするくらいの勢いなわけで、民主を割れば同じことをする可能性すらある。
その上で、やはり小沢も最大野党・自民との大連立を視野に入れるだろう。
単独で衆参多数が維持できないとなれば、そうするしかないからだ。


与党転落ばかりがクローズアップされがちな自民だが、今以て最大野党であることも揺らいではいない。
自民は「最大野党という最大派閥」を、割れた民主のどちらに対しても高く売ることができるわけだ。

高値で売るなら

では、どちらに売りつけたほうがメリットが大きいのか?
民主が割れた場合、現状の派閥構成から言えば、最大のカケラは小沢派であり、これが主流派たり得ることはおそらく動かない。
また、民主が割れるような事態が起こるとき、果たして小沢一郎は世論の支持をキープできているのかどうか。
小沢が今と同じような支持率だった場合、その小沢と組んではメリットは小さい。むしろデメリットが大きい。
また、誰が首相を務めるときに民主が割れるのかにも注目しなければならない。
鳩山が続投して、主流派が鳩山のままで党を割るとしたら、小沢は主流派側になるが、鳩山が辞任した後、小沢派ではない側が政権につき、反小沢派内閣ができた時点で民主が割れた場合、自民はどちらに付くべきか。


自民がここで、「高値で大連立を売りつける」のであれば、参院選ではぎりぎりで肉薄するところまで攻めて近付かなければならない。
ここで議席数の話に戻る。

48議席或いは54議席での抵抗

現在の民主と自民の議席は、それぞれ110:82。
民主は現状で110議席なので、あと12議席得れば、連立を解消した上で単独過半数を得る。
田村耕太郎議員の移籍で民主+社民+国民新+無所属の合計が122に達しているらしく、現状でも与党は一応ぎりぎりで過半数に届いている。
2010参院選ではなんとかこれを、社民・国民新に頼らずに過半数にしたい、というのが小沢の狙いだろう。
そして自民はこれを阻止して現状の「民主だけでは単独過半数たり得ない」を実現するなら、改選45議席を、あと2〜3議席積み増すだけでよい、ということになる。この場合、48議席
社民・国民新を無効化するなら、あと9議席の積み増し。これだと54議席となる。


ただ、その場合は民主が公明と連立する可能性が高まり、少々の議席増では民主政権の存続を阻止できない。

鳩山内閣総辞職と小沢一郎議員辞職

小沢一郎議員辞職は、そのまま田中・金丸の後追いになりかねないので、クロをシロだと言い張ってでも現職にしがみつくのではないかと思う。それでも、参院選前の幹事長辞職ぐらいはあり得る。
また、鳩山由紀夫の総理辞任も、参院選前の戦術としてはあり得る。
もし4月か5月くらいまでに鳩山内閣が退陣した場合、おそらく次のような評価が下される可能性がある。

  1. 鳩山・小沢の更迭スキャンダルによって、民主への不信感が募る。民主惨敗により参院与党から民主転落
  2. 民主への不満が、鳩山・小沢の更迭によって精算される。新生民主への期待とご祝儀から、参院選民主勝利
  3. 政治不信が高まり、投票率が下がる。無党派投票率は下がるが、組織票の影響力が高まり、箇所付けなどで組織引き締めを行った民主が結果的に勝つ

可能性として、自民支持層や自民自身がいちばん期待しているのは(1)だろうけれども、現実に起こり得るのは(2)か(3)の可能性が高いと思う。


(2)の場合、民主支持層は、「悪いのは鳩山と小沢であって、民主が悪いわけじゃない」という理解をすることによって、2009年衆院選で民主に投票した自分は間違っていない――と、なお期待を寄せることができる。旧弊は一掃されたのだから、民主に期待しようじゃないか、と民主に入れ、そして実態としての民主内部は何ら変わっていないわけだから、期待はまたしても裏切られる。
その怨嗟が民主に鉄槌を食らわすのに、あとなお3年が必要で、3年後には今の怨嗟を忘れている。


(3)の可能性はさらに高い。
自民を否定して民主に投票した層の投票行動、投票原理は、「民主が良い」ではなくて「自民が嫌だ」であった。自民でなければどこでもよいが、死に票は嫌だから民主に入れた。そして、多数派に与することで自分は正しい、という安寧を手にした。また、そうした自分を「正義の側に立った」と思うことで、自己正当化をした。有権者として正しい、と。
現状、「自民じゃダメだ」という呪いが継続したまま、なおかつ「民主もダメだった」となった状態で参院選に突入した場合、今度は「有権者として政治そのものに抗議を表明する」という大義名分から、

  • あえて無効票*10を入れる
  • あえて投票に行かない

という行為の正当化が行われる。
「自分は有権者として、政治にNOをたたきつけてやったのだ」
といういいわけは非常に甘美で、「政治にちゃんと参加した上で、政治を批判したのだ」という立派な行いであるような心地よい錯覚に身を委ねることができるわけなのだが、これは大いなる間違いであると思う。
投票に行かなければ投票率が下がり、引き締めによってまとめられた組織票・票田票の占める割合が相対的に大きくなる。無効票を投じた場合も同様だ。
この場合、白票や投票拒否をした人間が、その後に権力を得た政治の束縛から逃れられるのかといえば、そんなことはあり得ない。投票に行こうが行くまいが、政策の影響は受けるし、新しい法案が定められたら、反対であろうと白紙投票していようと、それは守らなければならない。
つまりは、白票/投票拒否というのは、抵抗や批判ではなく白紙委任に他ならない。意気揚々と白紙委任をするのは、この上なく間抜けだと思う。負け票、死に票よりタチが悪い。


しかしながら、「自民はダメ、民主もダメ、そもそも政治がダメ」というような情報を流し込まれ続けたら、自民にNOを突きつけたのと同じ勢いで、政治そのものにNOを突きつけることでうっとりする、それを肯定してしまうような雰囲気作りが行われてしまう可能性は少なからずあり、今現在、鳩山・小沢両者への批判が高まりつつあるのに、民主の支持率そのものは徐々に下がりながらも激減はしていない、という当たりに、(2)(3)の気配が感じられる。
(2)なら鳩山/小沢がいない民主に票が入り、(3)なら民主を否定したように見えて、結果的に民主の勝つ確率を押し上げることになる。

それでも、法の秩序には従わなければならない

この半年のスラップスティック政権運営と、与党要職議員の見識などを見てきて、正直、評価できるものはほとんどない。僕などは安全保障趣味者であるので、「まず、安全の確保について、どの程度労力を割いているか」を考慮しているわけなのだが、それは単純に自衛隊の装備の充実という話ではなくて、それ以外の外交戦略から国内のインフラ、技術開発への投資に至るまで、良いと評価できる政策はほぼまったくない。
安全保障政策以外でも、少なくともメリットを感じられるようなものはなかった。
そして、このままこの政権が続くことで、ますますデメリットを感じる層が増えることは想像に難くない。電車、駅、雑踏、商店街、喫茶店、飲み屋などで聞き耳を立てていても、入ってくるのは大概は民主党への怨嗟。自民党への期待や評価はほとんど聞こえてこないのは、それらについての紹介や報道がほぼ皆無であるせいもあるだろう。
自分達で否定した自民に改めて縋るには、まだ早すぎるということもあるかもしれない。

それでも、「多数派が支持して権力を与えた政権」が決めたことについては、従わなければならない。
自分が乗りもしない高速道路の維持費を、車を持たない国民全員の税金で頭割りして、高速道路を無料化するのだということになれば、それに協力しなければならない。
一票の格差が問題になっているのに、この上、不都合があればいつでも日本から出て行くことができる外国人にも選挙権を与えることで、ますます一票が軽くなっても、外国人に都合のいい政策が日本人に利益のある政策より優先されるようなことになっても、それが多数の有権者が支持した結果決められた政権による決定なら、従わなければならない。
増税についても拒否できない。環境税という、CO2排出量25%削減を名目上実現するために、海外からCO2排出枠を購入するための費用を徴収する制度が、いずれ「呼吸により排出されたCO2に掛けられる税金」という人頭税に変わったとしても、それをさせる政権を多数派が支持したのだ、ということであれば従わなければならない。

言いたいことが言えるうちに

実は、遠からず、民主党はインターネットについて何らかの規制を行うのではないか、と思っている。
民主政権が手本としている中国がそうであるように、ISPが規制されるかもしれない。または、韓国がそうであるように実名制が強要されるかもしれない。特定の主義思考、政府の決定に疑問を呈するような発言を行うと、たちどころにホームページは閉鎖され、ブログは削除され、罰金刑が科され、人権委員会が飛んできて、社会的に抹殺されてしまうようになるかもしれない。
「信じてくれというだけでは、同盟は維持できない」と訓辞を行っただけで自衛隊指揮官が処分されてしまうような状況が、官僚に対してだけではなくあらゆる場所、相手に及ぶかもしれない。
考えすぎと言われればそうだろうけれども、まさかそれはやらないだろう、ということを民主党は政権を取ってからことごとくやってきた。主に自民もやらなかったような、権力の暴走ばかりを。


政治に限らないが、しかし特に政治というのは、常に「考え得る限りの最悪を想定する」「考え得る限りのあらゆる選択肢・可能性を想定する」その上で、大多数が空振りに終わっても、備えていたどれかひとつが役に立てばOK、というようなものであると思う。
だからここでも、民主党政権という厄災が考えつく限り最悪の政治を行う、という前提に立ちたい。次々に厄災を実現している現状から言えば、そういう考えに立たざるを得ない。
もちろん、これは恣意的すぎる考えで、民主はまだまらこれからだと期待したい向きもいるだろうことは否定しない。誰だって、いい夢を見ているときは、朝など来て欲しくないに決まっている。
しかし、さめない夢はない。
悪夢ならば、むしろ早くさめてほしい。


言いたいことを自由に言える時間は、皆が思っているよりずっと少ないかもしれない。
さあ、どうしましょうかね。
参院選

*1:これは郵政選挙の時の得票数差でもそんなもんだったらしい

*2:グラフと数字が異なるのは、田村耕太郎議員が民主に移籍したため

*3:議席動いているのは、田村耕太郎参院議員が自民から民主に移籍したため。田村議員は2010年改選。

*4:同じ根拠から、ハガキの枚数、ポスターの枚数なども決められている

*5:本来は違法

*6:教員組合や公務員組合などがこれに荷担するのは本来は違法

*7:社民、国民新はなんとなくさらに議席を減らしそうな気はする

*8:むしろそれはかつての民社党のほうがw

*9:鳩山由紀夫は自社さ連立政権のときの幹事、小沢一郎田中派竹下派の自民幹事長で、金権政治の申し子

*10:白紙投票