自炊試行:廉価本、文庫本

トラックボールのホイールが壊れてPC関連作業一切が、ヒジョーに不便というかむしろ不愉快な状態なので、新品が届くまでの間なるべくPCに触らないで他の溜まってるリアルでアナログな作業を片付ける。
とりあえず、紙ゴミの類を片しつつ、そういや明日は可燃ゴミの日だった、と思い出す。
……どうせ紙ゴミが出るんなら、いっちょやってみるか――ということで、2冊ほどバラして自炊してみた、記録。

基本手順のおさらい

  1. まず、電子書籍化したい底本を用意する。
  2. 底本をカッターなどで裁断、分解して全てのページをバラバラにする。
  3. 猫を机から降ろす。
  4. ScanSnapでスキャニング。
  5. ScanSnap OrganizerでPDF化。
  6. iPad→i文庫HDに吸い取り。

ケース1:廉価本

本の山の比較的底のほうに埋まっていた、学研・ムー編集部編の「図説:イエスの謎」を吸ってみた。


この本は所謂中質紙というか、藁半紙というか、ざらざらした安い紙で作られた暑さ2.5cm、総ページ数276頁の廉価本。所謂コンビニ・ワンコイン本の類。巻頭と中程にグラビアページがある他は1色印刷。
装丁カバーなし無線綴じ接着剤で折を貼り合わせたものなので、接着剤部分をカッターで切り離す。
……やり始めてすぐに挫折しそうになったw
まず、ページ数が多いのと中質紙の切りにくさと、紙埃の多さでげんなりした。ただでさえスキャナは紙埃を嫌うのに、カッターでざっくざっくやってると埃出まくり。しかも「別にバラしても惜しくないや」という本や「もう随分読んでないな」という本はもともと埃を被ってることが多いので、もう埃も出まくりというか……。スキャナによろしくないなあ。


そして机の上で作業していると、猫が寄ってきて参加しようとする。カッター作業は危ない上に猫毛が混じるのは嫌なので下りて下さいね、と猫を机から降ろす*1
ここまでおよそ10〜15分。


ScanSnapで取り込み。
最近のスキャナは、紙の重複を超音波で検知して二枚重なってないかどうかを調べるらしく、4色カバーと4色グラビアページと1色オフセットページの厚みの違う紙を重ねて読ませてもジャムらないらしい。凄いなー。
ScanSnap S1500の取り込み速度は1枚3秒。両面同時取り込みをするので3秒で2頁取り込み可能。連続取り込みするので1分間に40頁分取り込む。一度に取り込める枚数はおよそ25枚前後(50頁分ほど)。これ以上詰めるとジャムる。
ScanSnap側の設定で、取り込みを途中で止めて(給紙切れ)も、続きから継続取り込みができるのは便利。
276頁の本なので、取り込みに掛かる時間は414秒。およそ6.9分。途中で給紙しなおしたりするので、7〜8分くらい。


取り込んだデータはScanSnap Organizerで圧縮されてPDF化。ここまで自動でできるのは楽。
ただし、上下が逆になってたり、倒れてたり、微妙に傾いていたり……と取り込みデータに荒れがあるので、これをSSOで直していく。
また、ページ抜けがないかどうかの確認、広告ページなど不要ページの削除など、諸々の補正作業で10〜15分くらい。


のべ、30〜40分くらい。ちょっと掛かりすぎorz


取り込んだデータサイズは43.4MBになった。
取り込み後の底本は紙ゴミになった。

ケース2:文庫本

今度はグラビアや図版がほとんどない文庫など吸い込んでみよう、ということで、これまた本棚の上のほうに突っ込まれたままここ数年読んだ記憶のない文庫本、小学館文庫・野平俊水の「日本人はビックリ! 韓国人の日本偽史」を文庫の底本にしてみた。
1色オフセット印刷、224頁。文庫判。カバー4色。



手順はケース1と同じ。
まずカッターでバラしていく。今度はカバーがあるのだが、折り返しに著者紹介が入ってるので、これは表1*2と一緒にしておく。
これも無線綴じなので、接着剤部分をカッターで切り離す。グラビアがない分、バラすのは楽だったけど、何度もカッターを往復させると紙埃が出る点は同じ。面倒。心が折れそう。やっぱ裁断機欲しい。
そしてやはり「何をしてるんですがそれは私の手伝いが必要なことですか」と机の上に乗ってカッターの刃先の匂いを確かめようとする猫を、机の上から降ろす作業が5回くらい。
バラしたページに糊が残っていないかどうか確かめるために紙を捌いていたら、なんでかコピー同人誌を作っていた頃の高校の部室を思い出したwww
ここまで、今度はさっきより慣れたので5〜10分程度。


カバー以外はサイズが完全に揃っているので、ScanSnapで取り込む作業もサクサク進む。
今回は事前に「傾き補正」を自動補正にしておいた。
224頁+カバー2頁*3で、のべ226頁。取り込み所要時間は339秒=5.65分、給紙の手間を入れたとしておよそ6分弱。


SSOで取り込んで、補正。自動補正が奏功しているようで、傾き補正はほとんどなかった。また、グラビアや画像・ページ全体を覆うイラストなどがないためか、ページの転倒もほぼなし。
一応、全頁検査してページ抜けの検査もして(目視)、所要時間は5分程度。


ここまで15〜20分ほど。だいぶ圧縮できた。
手間が掛かるのはほとんど裁断作業なので、確かにこれをカッターによる手作業ではなく、裁断機でドーンとカットできれば、さらに時間短縮は可能かも。


データサイズは44.5MB。増えてるorz
グラビアも図版もないのに、なんで? と思ったのだが、取り込み時の認識モードが自動になっていたため、各頁がスーパーファインで取り込まれていた可能性がある。また、ページの背後にうっすらと網版の地紋が敷かれているページが何カ所かあったようで、そのページがモノクロなのにカラーページとして取り込まれていたっぽい。そういや何カ所か焼けた紙色(クリーム色)でカラーページ認識されてる。これかorz
次からは400dpiくらい、グレースケールにしたらもうちょっと小さくなるんじゃないのかという気がする。
カバーだけ別取りして、PDFにする時点で合体編集とかできないのかな。後でSSOのマニュアルを調べてみよう。


同じ本をもう一度別の設定で取り込んで比較すべきなんだろうけど、面倒だからパスw

底本選び:どの本を電子書籍にするのか

本を買って所有する人というのは、本棚の背表紙を眺めて充足感を味わうっていう性質があると思う。よく「その人の職業・人柄・性格は、その人の本棚を見ればわかる」っていうじゃないですか。ホームズあたりが。
読みもしないけど、持ってるだけで満足する本wなどもあって、本棚は無駄に埋まっている。だったら、電子書籍化しちゃえばいいじゃない、と思って本棚と対峙してみたら、それはそれで「この本をバラしてゴミにするのはちょっと惜しい」という気持ちがもたげてきて、なかなか底本を選べなかったwww
読むためだけなら、中身さえわかりゃいいんだから、パッケージの形なんかどうだっていいだろ、というのが電子書籍の合理性だと思うし、それはそれで納得している。共感もしている。
だけど、いざ自分の蔵書を「バラして分解して終わったらゴミになる」という前提で選び取ろうとしたら、選べないwwwww


結局、「持ってるけど随分読んでなかった」「なぜこんな本を買ったのか自分でもよくわからない」「読み終えて、大しておもしろくなかった」「高い本じゃないから悔しくない」などなど……どちらかというと、優先順位の低い本が底本候補になった。
当たり前の話なんだけど、単に単価が安かった本はともかく、そんな何年も積読になってて手も付けなかった(そして今後も読みそうにないw)本や、読んでつまらなかった本を電子書籍にしたら、電子書籍だからっていう理由で積極的に読むかと言われたら、ますます読まないんじゃないかという気がする。
そうすると、電子書籍化したメリットは、「本棚の空きが何センチか増えた」ということだけで、読み物としての利便性が高まった、ような気が全然しないwww
おもしろいと思わなかった本を電子書籍化したって、読み返さないよなあ(´Д`)
どちらかというと、本棚浄化のための証拠隠滅に近いというか……。


今後、資料本の類の電子書籍化も考えてはいる。むしろ資料本こそ、タグ付けて電子化したほうが便利はなのは間違いないのだが、資料本の多くはそれなりのお値段がする本だったり、並べてあることに意義がある本だったりwするので、それが例え文庫版の守貞謾稿であっても、バラした後にゴミになってしまうことに、大きな抵抗感がある。
コミックの類はもっとも場所を食うものであるわけで、それこそ電子化しろよという話になってくるのだが、これまた「なんか惜しい」という気持ちが勝って、なかなか手を出せない。
ブックオフに持っていっても10円か値が付かない本だったら、躊躇なく吸えると思う反面、「20数年前の本で、これはもう絶対に再販も文庫化もされる可能性がゼロ!」というような稀覯本の類となると、これまた電子書籍化に抵抗感が。
例えば学術的・芸術的・経済的価値は一切ないとしても、イマドキ誰も名前を知らないような作家wの30年前の単行本に手を掛けることに、どうにも罪悪感が働く。竜巻竜次は今どこで何をしてるんでしょうか。*4
同人誌なら行けるんじゃね、と思う反面、これも「紙の本のカタチ」「紙というパッケージにするための労力」を考えるとなかなか踏み切れない。踏み切れるような同人誌だったら、別に今まで手元に残してなかったと思うし。


要するに、電子書籍化の最大の敵は「本というパッケージを愛でる気持ち」であり、電子書籍化がもっとも必要な(蔵書保有量が膨大な)人ほど、このペーパーパッケージへの執着から離れがたい、というジレンマがあるわけだ。


今回潰した文庫本は確か手慰み用にブックオフで買った本だったかと思うのだが、これはあまり躊躇せずにバラせた。
自分が持っている本はそのまま保存用にして、同じ内容の本をブックオフで手に入れて電子書籍化……という、要するに「買ったCDの内容をiTunesに取り込む」みたいな、原盤も持ってるから安心みたいな意識でいる限り、「吸ったら元の本はゴミ」というのを受け入れなければ、蔵書の電子化は進まないような気がするorz

もしくは、コンビニ売りの総集編的なワンコインコミックが、電子書籍化底本用に売れたりするかもしれない。
底本専用本、とか……だったら最初から電子書籍で売れば、普通に買うよなw
そういう試行錯誤を経て、電子書籍は緩やかに普及していくんだろうかなー。


とりあえず、

  1. 巻数が揃ってないコミック
  2. ここ5年以上読み返してないコミック
  3. コンビニで買った廉価コミック
  4. 一巻本
  5. 古本屋で買った文庫本(資料以外)

この辺りを重点的に進めていくことにする。
一番電子書籍にすべきクッキングパパ(現時点で120巻越えてる)は、非常に残念なことに一巻も欠けてないので、手を付けられずw
これに踏ん切りが付いたら、本棚二段分空くんだけどなー。

裁断機選び

そして課題となったのが裁断機。
今回は試しということでカッターでざくざく切ってみたが、確かにこれは面倒だ。
楽天ヤフオクなどを見回してみると、裁断機の相場は大きく分けて価格帯的には3種、能力的には2種、製品的には4種ある。

  • 3万円以上
  • 1万円台
  • 5000円以下

と、

  • 200枚以上切断可
  • 20枚まで切断可

と、

  • 日本製高級機(直線カッター)
  • 中国製高級機(直線カッター)
  • 中国製廉価機(直線カッター)
  • 中国製廉価機(円盤カッター)

自炊のために裁断機は、文庫本やコミック、雑誌の裁断が中心になる。
平均して厚みは文庫が224Pで10mm、コミックが20〜30mm、雑誌はものによるが最大で100mm*5。100mmは論外としても、30mm台は珍しくない。分冊裁断すれば済む話だろうけど、やはり一気にカットしたほうが早くて楽で綺麗……と思うのなら、高額高性能な日本製高級機を選ぶことになる。
廉価機はそのまま裁断能力の低能力化でもあって、一度に20枚しか切れないとなると、文庫本でもさいてい5回に分けてカットしなければならない、ということになる。これは大変な手間。

冊数があるから時間を節約したい、ということであれば、結局は高級機を買ったほうがいい、という話になる。

売れ筋は3万円台の裁断機と、8000円以下、3000円前後の廉価機、というところになるようだ。楽天で1万円台の裁断機は、同型機がヤフオクで7掛けくらいで即落だったりするので、よく調べてから。
また、当たり前だけど高級機高性能機は「収納場所に困る」という大きさだったりもするので、置き場所を確保してから。


後でコミックをバラしてみようと思う反面、コミックはなかなか踏ん切れない。どうしよう。

*1:5回くらい繰り返す

*2:カバー表紙のこと

*3:表紙と裏表紙に分けたため

*4:ファンでした

*5:レディコミとかアフタヌーンとか