「野党は与党に協力すべき」という誤解

んなこと書いてる場合じゃないんだけど、書いておく。


「自民は不信任など出している場合ではない」「政局どころではない」という、野党向けの批判について。
与党は震災対応のための予算として第一次補正予算を組み、これは先頃承認されたのだが、この第一次補正予算の中には津波で決壊した堤防の修繕費用、破壊されて機能停止した(というより事実上廃墟になっちゃってる)病院の改修費、流されてそのままの鉄道の補修費用も、

盛り込まれていない。

これは野党の反対で盛り込まれなかったとかではなくて、政府民主党の提出してきた一次補正予算に、盛り込まれてこなかった。
主な理由は予算のための原資の当てが付かなかったからではあるんだけど、原資についても盛り込まれてこなかった。

野党が協力しようにも与党がそれを出してこないから、議論にならない。自民・公明など野党も補正予算案を出しているのだが、もちろん与党はそのまま野党案を採用するわけにはいかない(それなら与野党交替しろ、となるから)。

それで、菅首相は二次補正予算(復興のための追加予算)を決めないまま、国会を閉会しようとした。
つまり、民主党は「一次補正だけで十分足りた、二次補正は不要」と判断した、ということになる。
既に台風は2個発生しているが、今後ますます雨量の多い大型台風が増えてくる、それも日本には毎年必ず20近くの台風がやってくるにも関わらず、流れた堤防は土嚢のままだ。
民主党政府案は、「土嚢で凌げ」「鉄道はなくても困らん」「病院は後回し」これで台風に備えろ、と。


野党が不信任案を出さないというのは、この政府案を承認した、ということになり、今後発生する二次災害について与野党が共同責任を負うことになる。


野党は「いや、それじゃイカンだろ!」そして「菅内閣じゃ話が進まないだろ(前言撤回が多すぎ、会議が多すぎ、党内掌握ができていない、という指摘)」があり、

事態を進展させるためには菅内閣の総辞職を求める。

ということになった。
で、実際のとこ不信任案に棄権した共産・社民を除く野党は賛成し、与党民主党他は反対した。
不信任案の否決は与党判断によるもので、与党は「このままでいい」と判断した、ということになる。


自民党民主党の足を引っ張って政局を仕掛けるなんて!」

というのはかなりの誤解か、車内吊りしか見ていないかのどちらかで、

「不備の多い民主党案に対する批判から出た不信任案を、民主党は反対して菅政権を支えるなんて!」

というのが正しい。

そして「菅直人はペテン師!」とかいうのに憤慨するのは、これまた

お前は今まで何を見てきたんだ。

という話で、これは民主党の主立ったというかテレビ映りのいい名前の知れた議員のほとんど全てに当てはまる話で、菅直人だけが特別おかしいわけでもない。
ついでに言うと、民主党が野党時代、党内の若手に対して「議論の仕方」「批判の仕方」「目立ち方」を指導していたのは菅直人で、対立者を罵倒するスタンドプレイで総理大臣にまで成り上がった実例がいるわけだから、そら民主党全体がそういう性質になるのは無理からぬ話。
攻める側ならまだしも、攻められる側、守る側が罵倒の限りを尽くすということなどできないわけで、結果的に「スタンドプレイで成り上がった議員は、さらなる罵倒の機会――事業仕分けという舞台を作って批判的罵倒者*1のポジションを生かそうとしたわけなのだが、震災を経て実務に駆り出されることになると、そうした罵倒機会は先細ってしまい、威勢のいいことを言っていた人達は形を潜めてしまった。長妻さんて今何してるんでしょうね。


ともあれ、そういう民主党に権力を与えたのは多数の有権者であるわけで、僕は悪役ラスボス的な高笑いとともに、
「己が不明を悔やむがいい!」
と、あと2年間、遊び半分で民主にBETした自分を悔やみつつ今を堪え忍ぶことをお奨めしたい。

*1:罵倒的批判者ではない