雪を見ると脳裏に浮かぶもの

雪が降ってくる、しかも積もる、というシチュエーションは、太平洋側海沿いの平野部にある実家では「数年に一度のイベント」だった。(山間部に行けば万年雪があるんですがね。静岡は)
でも、東京は多かれ少なかれ毎年必ず雪が降ったり、ほんのちょっと積もったりするわけで、たった100kmちょいであっても「北(というか東)にあるんだなあ」と実感する。
 
で、「雪が降る」といえばここ10年くらいはFairchild(昔、YOUがまだアイドルだった頃にボーカルをやっていたバンドだ(笑))の「小さな星」という曲が頭に浮かんだりしたものだった。Fairchildは「さがしてるのにぃ」とか「スキスキ有頂天国」だとか、妙に冬っぽい曲が多かったと思うのだが、作詞があの巻上公一ヒカシューのボーカル)という特異さもあってか、「小さな星」は僕にとって初雪の定番BGMなのだった。
 
最近、タイムマンの常連のサイトーくんの「願望」を聞かされた。

僕が店のスタッフと冗談のひとつふたつも交わしているうちに、彼女はドアを押して店の外に出た。
風はない。
かじかんだ手のひらに息を吹きかける。
――はぁぁぁぁ。
吸い込まれるように暗い冬空に星はない。
ときおり、街灯の明かりの中に星のように煌めくものが舞っている。
白い、綿毛のように軽いそれがひとひら。彼女の手のひらの上に舞い降りてきた。
「あ……雪」
「どうしたの?」
スタッフに挨拶をしていた僕は彼女の呟きを聞き漏らしていたのだと思う。
「今、何か言った?」
彼女の肩にそっと手を回す。少し冷えたようだ。
彼女は笑みを浮かべて、言った。
「……ううん。なんでもない」

↑こういうシチュエーションが、彼の願望らしい。
これを聞かされてから、夜空を見あげたりすると「あ……雪」が頭をよぎるようになってしまったのだが、今年の初雪では10年続いた「小さな星」から「あ……雪」に脳内映像が切り替えられてしまった。