梅酒

去年はばたばたしていて珍しく忘れていたのだが、今年はばっちり仕込んだ。
例年、6月の5日から14日の間くらいに梅酒を漬けている。
日付を決めてそうしているわけではなく、青梅が出回って、そこそこ値段が安くなりかけた時期に、ふつふつと梅酒を漬けたくなってくるのだ。年によっては梅干しを漬けたくなってしまう場合もある(3年ほど前に漬けたのを今も食べてるので、今年も梅干しは漬けないと思うが(^^;)。僕しか食べないし)。
そんなわけで、梅酒。
自分で漬けるようになったのはこの20年ほど。
実家にいた頃は、親が漬けていたと思う。
ただ、それほどまめに毎年漬けてた、今も漬けてる、ということではなく、数年おきに思い出したように漬けていたようだ。特に大きなブーム(笑)は僕が幼少の頃であったようで、僕が酒を飲むようになった中学生の頃には、「昭和42年、43年」に仕込んだ、14〜5年物の梅酒が実家の箪笥の隅から発掘されたりした。
「発掘」というのはどういうことかというと、もずのはやにえやリスのどんぐりと同じで、漬けるだけ漬けてしまいこんでしまうと、漬けた事実をすっかり忘れてしまうらしく、何年もそのまま放りっぱなしになっているのである。
埃まみれになった瓶を発掘して、「うわっ!」となることしばしばだった。
古い梅酒は僕が中学〜高校の頃に密かに飲んでしまったりしたので、あまり残ってないが、実家から「奪ってきた」古酒の中にあるもので、現在僕が所蔵している一番古い梅酒は、確か昭和45年のもの。35年モノである。
梅酒は漬けたら早く飲める果実酒と言われている。普通は3ヵ月も待てば飲み始めるものだが、僕は最初から「古漬け」の梅酒を味わってきたので、あんまり若い梅酒は好みではない。最低でも3年は漬けないと、角があって美味しくない。
実家の梅酒を奪うだけではいずれ将来の楽しみが……というわけで、上京してからこっち、ときどき抜けたりしてはいるが、ほぼ毎年梅酒を仕込んでいる。
梅酒は、ホワイトリカー+氷砂糖+青梅が基本だが、梅をおろし金の上で転がして全面に穴を開けるとか、2年目くらいで追い梅をするとか(しないことも)、ホワイトリカーでなくスイートブランデー/ホワイトブランデー(果実酒用ブランデー)で漬けるとか、今までに教わったいろいろな方法をそのときどきで使い分けている。
ホワイトリカーで漬けたものは長期保存にまわし、ホワイトブランデーで漬けたものは翌年くらいから飲む、というのが定番。でも、親と同じで、冷暗所にしまい込んだが最後、漬けた事実を忘れてしまう。
斯くして、梅酒瓶ばかりが家のあちこちに増えていくことになる。
 
ところで、10年を経過した長期熟成の梅酒がどんな味になっていくか、というのはあまり知られていない。
ワインのように酵母が生きてるわけでもなければ、ブランデーやウィスキーのように樽で寝かせるわけでもないから、長く寝かせたところで味に代わりはないだろう、というのは素人のあかさたなという奴で、1年、3年、5年、10年、15年と、節目事に味を確かめてみると、「まったく別の飲み物」に変わっていくことがわかる(だいたい3〜5年目くらいで梅を抜いて一升瓶に移し替える)。
だんだんコクが増していって、12〜3年を越えると今度はアルコール度数はさほどでもなくなってくる。ただ、コクだけはどんどん強く深くなり、20年近く経ったものに至っては「神様からお裾分け」とも言うべき恐るべきシロップに昇華する。
ワインのそれとはまったく違う楽しみが、梅酒にもあるのである。
 
 
でも、自家用の梅酒は手を付けるのが惜しいので、梅酒を飲むときはチョーヤやサントリーのパック梅酒である(笑)<しみったれ