島寿司
今から10ウン年前に、小笠原諸島を旅した事がある。
そこで、「島寿司」と呼ばれるものを食した。
そこで食べた島寿司は、酢飯に醤油で締めたカンパチが乗り、当地では育てられないワサビの代わりに和辛子が乗ったものだった。江戸前鮨の原形がヅケ(醤油に漬けたもの)を乗せた酢飯だったことは知識として知っているが、今の内地でそれを食す機会は極少ない。
清水の次郎長で、大政・小政が舟に乗り合わせた旅人に「江戸っ子だってね、鮨食いねぇ」と奨める下りがあるが、ここで登場する「鮨」は、今の江戸前寿司(にぎり寿司)ではなく、醤油でヅケにしたネタを握った「ヅケ鮨」だという話がある。
小笠原で食べた「島寿司」にはそれが残っていて、本土との連絡船が入港すると、それを祝って「島寿司」という鮨を振る舞う。僕が小笠原父島を訪ねたときもそうで、無事の入港を祝って、カンパチを醤油でヅケにしたネタを酢飯に乗せて握り、ワサビの代わりに和辛子を添えた「島寿司」が振る舞われた(すし桶に、それだけがぎっちり入っている。他の鮨はないのだ)。
今日、打ち合わせの流れで立ち寄った和食系チェーンで、「鰺の島寿司。からしがポイント」とメニューに銘打たれた一品が出ていた。
もちろん、注文した。鰺であっても、島寿司は島寿司である。あれはうまいのである。
が、注文して出てきた一品には、からし(和辛子)ではなく、おろし生姜が乗っていた。
違うのである。
そーじゃないのである。
猛烈に悔しいので、クレームを入れて和辛子を付けて貰った。
こういう席でクレームを入れるのは、なんかDQN臭くて悔しいのであるが、島寿司はやっぱり和辛子だろ!これは譲れない!ということで、粘ってみた。
果たして、和辛子は「別添え」で出てきたのであるが、やっぱり島寿司は和辛子である。
サイコーに「島寿司」っぽかったことを添えておきたい。