棒手振り、振り売り

今し方、表通りを「ぺー、ぷー」というラッパの音が通り過ぎていった。自転車売りの豆腐屋と思われる。
これからの時期なんかは、「カッ、カッ。カッ、カッ」と、火の用心の拍子木の音が聞こえてきたりもする。
もちろん、「いしやーきいもー」も来る。これはカマドを積んだ軽トラだ。
「ぎょうざー、ぎょうざー」なんてのも来る。これは軽バン。
それから、テケタカテケタカとオルゴールのようなものを響かせながら流していくトラック。これは灯油売りであるらしい。
別のメロディでテケタカテケタカと牛乳売りが行く場合もある。こちらも軽トラ。
売り声はないが、ワゴンを押していくヤクルトおばちゃんはしばしば見かける。
ワゴンというか、カーゴを力一杯走り込んで押しながら、ときおりそれに乗っかって移動している作業服の人、これはクロネコヤマト。近所に配送センターがあるのだが、近場は歩いて配っているらしい。


僕は座業であるが故に、しばしば通販を利用する。ポイントがあっても、交通費をさっ引けば近くで買うのとあまり変わらないという話を数日前に書いたが、同様に、ケースによっては通販で買っても大して変わらない場合が多々ある。本なんかそうだし。また、「凄く重い物」なんかもそうだし。例えばダッチオーブンとか。


江戸時代はと言えば、総菜・寿司売りや、風鈴・金魚・鈴虫などの嗜好品売りが、天秤棒に売り物をぶら下げ、売り声を響かせながら長屋の入り口まで売りにきてくれたという。町内を往来する車の振り売りは、そういう風情に通じるものを感じる。ピザや寿司などのケータリングサービス、出前なんかも、振り売りの延長線上だと考えられないこともない。(ラーメンの出前は店で食べるのとほとんど変わらないのに、ピザの出前があの値段なのは納得しかねるのだが)


が。
人んちのインターホンを鳴らしてまで売りに来るものには、ロクなものがない気もする。
生長の家ですが」「ものみの塔ですが」「KDDIですが」「信用金庫ですが」
だいたい、宗教系が多い。KDDI信金は飛び込み営業らしい。そういえば、新装開店したファミレスの店長かなんかが割引券を配りに来たことがあったなあ。
で、昨日も来た。
「えー、近くを回っておりますが、姓名鑑定などにご興味は」
占いはいらんなあ。というか、売りにくんな。