神楽坂大島
大島在住喫茶店経営なのに、年の1/10は江古田界隈をうろうろしている、やたら交友関係の広い病人のFridayくんが、「日曜に神楽坂でサザエを焼くんですよ」という。
「壺焼き食い放題」
「行く行く！」
ということで、行ってきました神楽坂。
当日は神楽坂の商店街の縁日に、大島観光協会も参加という形の催しだったらしい。
いろいろな出店が出ていたが、サザエの匂いを頼りに坂道を上るとはっぴ姿のFridayくんを発見。
「どもー！」
とばかりに早速バックヤードに招かれ、観光協会のFridayくんのお父さんにご挨拶。昨年、家人が一人旅で大島に行った折、たいへんお世話になった方なのだ。
大島と言えば椿油、あしたば、塩、なんかが最近の産物だが、島だし魚もうまいし焼酎もいいのがあるし、海水浴場もあるし、そしてあまり知られていないのだが「砂漠」があったりする。家人はFridayくんのお父さんが経営しているレンタサイクル屋さんで原付を借りて大島一周をしてきた（そして阿修羅男爵のような日焼けをして帰ってきた）のだが、あのあたりはかなり「イイ」らしいという話を聞いて、僕も結構羨ましくなっている。
もちろん目的はG-Motion。
ここ最近の怪我は、コンクリートの護岸から転げ落ちただの採石の道路に放り出されただの、固いものがあるところでコケるから。広くて、人いなくて、砂漠……対向車がほとんどこない10kmの道。日陰のない炎天下*1などなど、G-Motion乗りには垂涎のスポットなのではないかと狙っている。
最近は竹芝桟橋から１時間半くらいで行けるジェットフォイルも出てるそうだし、どうにかして大島でG-Motion乗れねえかなあと画策しているところだったので、この日は大島事情を伺うために神楽坂に駆けつけた。
はずだった。
はずだったのだが、「まあまあどうぞどうぞ、はいこれ」とビールを手渡されてしまい。
ゴザや段ボールを敷いた裏手に回ると、「はいはい、まあまあどうぞどうぞ」とサザエの壺焼きを手渡されてしまい。
あの、これは売り物なのでわ。
「いや、どんどん食べてください。じゃんじゃん焼いてますから」
なんでも、10kg入りトロ箱を10個、計100kgのサザエを持ち込んだらしい。
「昨日持ってきたときにはまだ全部生きてたんですけどね。持って帰っても商品にはできないしねえ、いやもう、そういうわけだからどんどん食べてください」
次々に差し出されるサザエ。はい焼けました、はい焼けましたと、Fridayくんから繰り出されるわんこサザエ。
最近は滅多に食うもんでもないけど、こんな怒濤のサザエ攻撃は田舎にいたときだってなかなかない。至福。
……あ。違う。僕は大島でG-Motion載るための相談を。
「ああそうですね。大丈夫っす。ばっちりですよ。くさや食べますか」
くさやは好きな人は好き。ダメな人はダメ。僕はどちらかというと後者。
ムロアジやトビウオを原料にするこの干物は、伊豆七島島嶼部では盛んに作られる特産品で、大島、新島、三宅島、八丈島、青ヶ島と、あのあたりの島ではどこでも作る。魚を200何十年間も使い続ける伝統の漬け汁*2に漬けて干したものである。
僕は静岡県は沼津の漁港の出身なのだが、沼津ではくさやはほとんど見かけたことがない。伊豆半島でもあまり見かけないような。やはり島特有のものなのかも。
が、内陸で海の幸に乏しい埼玉で育った家人一家はこれが大好物らしく、ばくばく行ってた。数年ぶりに僕もチャレンジしてみるも……うううう。口から、う(ry
最近はくさやも「あらかじめ焼いたものを真空パック」にしたものが出回っている。これは焼かなくてもすぐ食べられる上に、匂いも控えめなので初めての人にも食べやすい。味はいいんですけど、息は止めて食え、と。
「今日は生くさやも持ってきてるんですよ」
いや、それはいいです。焼くところないです。
と全力で遠慮などするが、好きな人にはたまらんものなのでしょう。好きでない人にも別の意味でたまらんのですが。
「そういえば、【あおちゅう】の伝承*3っていうのを買ってきたんで飲みましょう！」
あおちゅうというのは青ヶ島産の焼酎のことで、サツマイモと麦醪を同時に仕込む独特の製法で作られる青ヶ島特産の焼酎なのだそう。
僕は普段は焼酎はあまり飲まないのだが、奨めを受けてあおちゅうを頂いてみた。
なんというか、「液体状の焼き芋」といった感じ。基本は芋焼酎なのだがサツマイモの香りが強烈で石焼き芋のような芳香が漂う。口に入れると甘みすら感じるほど。やはりくっきりとサツマイモの味がする。度数30度の本格焼酎なのだが、氷も入れず割りもせず、そのままぐいぐい行ける。なんというか、うめえ。
逆に家人は「味はいいけど匂いが……」とたじろぐ。いや、これは匂いもうまいっすよ。いや、大島サイコー！ あ、これは青ヶ島だっけ。でもサイコー！
ところでね、G-Motionのね、持ち込みとかね、船のね、
「ああ、どうにかなりますよ。平気平気。サザエ食べますか？」
大島の人は、ラテン系らしい。
なんか納得いく。
この日、僕はたぶん人生でいちばんたくさんサザエを食べたような気がする。
そういうわけで、怪我が治ったら（そして仕事が一段落し、先日ぶっこわれたトレーラーの改造に目処が付き、大島がシーズンオフに入ったら）、大島にG-Motion乗りに行く予定。
細かい予定はなんにも立ってないが、きっとなんとかなる。
大島はきっといいとこ。
