日本と核
先日の「日本軍最強伝説」のようなコピペ。
日本が核保有しないのは世界の謎
- プルトニウムを約43.8トン保有し、うち約5.9トンを国内保管し、
- 国内に核燃料再処理工場施設を持ち、核濃縮も可能で、
- 高度な冶金技術も持ち、
- 人工鉱石作成の為の精密圧縮レンズの技術開発を高いレベルで行い、原子炉級プルトニウムでも核爆発可能な精密爆縮レンズを容易に設計可能な技術力を持つと言われ、
- 旧ソ連の核兵器解体に無理矢理参加させられ、構造を知らなければ解体出来ない為、「構造はこうですか?わかりません」とやったら米露からOK or Да*1と言われ、
- 高速増殖炉を動かせば、MOX燃料のU238を純度98%のPu239に変換出来、年間62kgプルトニウム239を生産可能で、
- 核シミュレーションに必須なスーパーコンピューター技術をトップレベルで持ち、
- 実際には年単位の時間がかかるのに、「その気になれば3ヶ月で核武装可能」と牽制&超過大評価され、それを日本人自身も信じる間抜けさ*2を持ち、
- 現状では発射まで2ヶ月かかるとはいえ、精密誘導可能な世界最大で低軌道投入能力(公称:1.85t 実際:2.3t)を持つ個体ロケット技術を持ち、
- 飛翔体の大気圏再突入データを持ち、
- やたらと正確なレーザージャイロ技術を持ち、
- 原潜に応用可能な原子力船用原子炉のノウハウを持ち、
- 旧ソ連の原潜解体にやはり無理矢理参加させられた時に、原潜建造ノウハウ得ていて、
- 最後にバケツで臨界を起こす、
そんな日本がなぜ核持たないのかは世界の謎。
答えは簡単かつ他国人には理解出来ない。
「核兵器が大キライ」だから。
持つなら、持たないとしょうがなくなってしぶしぶ。
「日本は今は核保有をするつもりはないが、核保有についての議論はしてもいい」
という発言が論議を醸しているのだが、これは先のblogでも書いたように、
「北朝鮮の核を中国が本気でどうにかしないんだったら、日本が核保有を考えちゃうかもよ? そうなったら困るのは誰かな?」
という外交戦術としてのブラフだと思う、というのはすでに触れた通り。
ライス国務長官は「大丈夫。日本が持たなくてもアメリカの核があるから」と保証し、日本の反核(だったはず)の人々は、「アメリカの核の傘があるのだから、日本は持たなくていい」と、ライス女史の発言を評価。中国は大あわてで北朝鮮に高官を派遣。「日本が核保有したら困るでしょ?」という発言は、対北朝鮮核問題について、周辺国を大慌てかつ本気にさせる効果があることは、すでにご覧の通り。
その背景にある「日本は核保有する能力があるのか?」という裏付けについて、事実関係をサラーリと流したのが、上記に挙げたコピペで、「バケツで臨界*3」に至るまで、基本的には「三ヶ月で可能」という誤解を除けば事実。ただ、その「三ヶ月で可能」という誤解も、日本の民生品の技術力に対する信頼が裏打ちになっての過大評価と言えるかもしれない。
普通、技術というのは軍用品のものが最高品質であるのが当然らしい。そのうち、軍事機密に抵触しない程度のものが民生用に転用される。普通の国家は概ねそうだ。
日本の場合、もちろん自衛隊の装備性能は高度なものに保たれているのだが、それが民生品からの転用であったりするケースもあるらしい。*4そういうところが日本に対する過剰な信頼と警戒心の源になっているのかもしれない。
常駐してるあるスレ(笑)では、「もし、日本が核保有について本気になった場合に周辺国がもっとも恐れるのは、日本が核を保有することではなく、日本がいつもの癖で【小型化に成功してしまう】可能性が高いこと」という指摘が出ていた。
核兵器がテロリストの手に渡るという設定の映画は数あれど、実際にそうならないのは小型化が難しいから。(ミサイルに積む核も小型化されなければ弾頭に出来ない)
日本が核保有を始めたら、「核ライフル弾」とか「核手榴弾」も可能かも、なんていう無茶なことを考えている人が、反核系反戦平和団体やテロを恐れる団体にいそうな気がするが、そういうアホなことが起こり得ないということを理解するためには、やっぱり「核の性能、運用方法、維持(メンテ)、特性」というものを、もう少し突っ込んで議論してよく咀嚼理解する必要がありそうな気がする。
それにしても、保有は真っ向否定しつつ、いつでもそれが可能な技術の開発温存は「平和利用」を口実に続けているというのが、周囲から見たら一番イライラするというか腹立つんだろうな、ということはなんとなくわかる、というお話。
*1:「それでよし」の意。
*2:実際の開発&動作保証込みの実装備はそんな簡単には行えないのは当然なのだが、「日本はできるらしいよ!」と【他人】に言われると、ついその気になってしまう自分の潜在能力に対する期待値の高さをよくわかってないのが日本人(笑)
*4:そういえば、陸自の偵察用バイクは民生用の250ccのオフロードバイクに保安部品とアクセル固定用の部品を追加してオリーブドラブに塗った以外は、ほぼ無改造なのだと聞いた。80年代、アメリカと日本が技術交流したときに、「電波を反射せずに吸収するステルス用塗料」の開発に米軍が四苦八苦していた頃、「電波が乱反射して住民から苦情が来るので」という理由で、鉄橋に塗装して電波の乱反射を防ぐ塗料というのを日本では町工場のおっさんが開発していた、とか。同じく、電磁波が漏れないようにするパッキンの開発に四苦八苦していたのに、日本は民生品の電子レンジのフタと覗き窓用にその技術が高精度廉価で実現されていた……なんていう、ありふれていすぎてピンとこないものの技術が高信頼度を誇っていることを、僕等自身はあまり知らない。