柳沢発言

流行ってるので押さえておこう。


この問題はいくつかの要素を含んでいて、情報の受け取り手がそのうちのどれに興味を抱き注目するかで、要点が変わってくる。
マスコミによる報道と、その尻馬に乗りたがっている夜盗、野合……野党の反論は、ほとんど言葉尻を捉えての尻馬に過ぎないので、そのノイズの中から発言の本質を考えてみる。


(1)少子化問題を解消するべきだ
まず、本来の柳沢大臣の発言意図はこれであるということを念頭に置くと、
少子化(人口減少)は回避されなければならない」
少子化担当大臣/政府としての目標は、人口回復(人口増加)である」
「国民の人数(人口)が減り続けると、国力が衰え財政(納税、消費、保険他)が厳しくなるので、人口は増やさなければならない(少なくとも減らないように維持しなければならない)」
人口増のためには子供が生まれなければならず、一組の夫婦から最低二人、それ以上が生まれなければ人口は減る。
人口減少が問題だというなら、人口を増やすためには出産の機会/人数(絶対数)は増やさなければならない。

ということで、特に発言趣旨に問題はない。「産む機械」発言は、発言要旨ではなくて原文を読むと「女性は機械」とは断言していないことがわかるため、問題視する必要はない。


(2)子供を何人産むか産めるかは、個人の自由である
これは社民党他フェミ系議員の主張。
これはこれで、確かに「個人の自由」「意志の強制」をすべきではない、個人を尊重すべきだという立場に立つなら正しいが、その結果として少子化が進行し、国力が衰え、財政(極論すれば、税負担増と福祉負担増、福祉配給減だ)が進行する。
国力=国民の人数と所有する財産とそれを使ってできる余剰力であるわけで、決して「国=政府の贅沢」ではないのだが(政府というのは国民の生産力によって得た利益を、公共のために再配分する装置であるわけで)、社民党が「税負担が増えてもいいから個人の自由を尊重しろ」という主張の政党であるなら、社民党の主張もアリかもしれない。
でも、「個人の自由である」ということを、「少子化を食い止める」ことよりも優先させるのなら、「負担増については文句を言わない」くらいの誓約が必要なんじゃないのか、とも思う。


(3)出産の条件が整っていない
これは、産みたい、産めないの問題ではなく、「出産の条件が不十分であるために、産みたくても産めないのだ」という主張。
柳沢大臣のもともとの発言は、そうした次の問題点に繋げる為の枕の部分であるわけで、「そういう現状だから、これからこうします」の、そういう現状の部分のみが一人歩きしている。
情報が切り貼りされて一部分しか伝わらないことによって、そこから続く「その後に言うべき部分」がなかったことにされていた、ということのようだ。
ちなみに、出産の条件を言う人が挙げるものには「金銭的負担」「子育ての時間・精神的負担」「社会復帰の難しさ」などが多いようだ。出産費用、養育費などに金がかかるというのは当然の話で、そのへんいろいろ難しいところなのだろうが、「金やるから産め」とか「タダにしてやるから産め」とか、そういう単純な対策では解決しづらいので、いろいろこれからやっていきますよ、という話に繋がる講演であったようだ。


(4)出産の強制は女性の社会進出を阻む
このへんは女性による出産を期待すると、フェミ系議員から必ず出てくる反論のひとつで、「子育てによって女性の社会復帰(職場復帰)」が難しくなる、というもの。
社会復帰が難しくなるから、出産を強制するなー! という主張で、これは70年代のウーマンリブの時代から何度も繰り返し言われてきた。
女性差別は、それこそ明冶大正時代に比べればかなり緩和されてきているし、その上で女性尊重・男性に比べた場合の女性保護も、昭和時代にかなり進んでいる。むしろ、保護されすぎてねぇかー、男性は女性から逆方向のハラスメントを受けてねぇかー、靴下と女性は強くなったが、強くなりすぎてねえかー、という気がしなくもないのだがw、角が立つとアレなので以下略。
個人的には、女性は強くなったんじゃなくて、明冶大正の一時期だけ公民権の一部が制限されていたような感じで、元来母系社会であった日本では伝統的にも歴史的にも女性の力(地位でも権力でもなく、影響力)は強かったんじゃないかなあ、という気もする。
カカア天下と空っ風ですよ(笑)*1


出産をすると社会復帰するのが難しい、という意見がフェミ系議員の熱弁にしばしば登場する(それが、出産を手控えさせる原因のひとつだという反論もある)のだが、僕の知る限り出産を終え子育てが一段落した人々は、だいたい社会復帰してるような気がする。職を持つ人、派遣で登録し直す人、子育てしながら会社に戻る人、子育ての為に爺婆を活用する人、子育ての為に実家に戻る人などなど、そのへんは多様だけど。
「出産すると子育てで仕事復帰できない」というのは、「都市部」「核家族」を念頭に置いた発言なんだと思うんだけど、「じゃあ実家で」というと「嫁姑問題が!」「夫婦のプライバシーが!」という次の反論が来る。



本日の結論。
個人の確立とプライバシー、個人の自由を尊重すると、少子化は進む。
二者択一なので、どちらに立つか自分の立ち位置を決めてから尻馬に乗らないと、主張が破綻します。








……と、ここまで書いて少子化対策を何も挙げないのは片手落ちかもしれないと思ったので、ちょっと解決策を提案。ただし、SFだと思って欲しい。


(5)出産する能力を持つ人間を増やす
現在、15〜50歳あたりの女性にのみ出産能力があるとされているので、出産の意志がある人であればその年齢外でも出産できるようになればよいのではないか。
例えば、0歳から14歳までの女性、及び51歳から100歳以上の女性。
または、出産意志のある男性でも0歳から100歳以上であっても出産可能になれば、人口増殖の機会は増えるのではないか。
科学技術の発展に期待する。


(6)人工受精、クローンなどによる生殖を法制化
夫婦であるかどうかに拘わらず、嫡子を欲しいと考える人間が、いつでも嫡子を手に入れられるよう、人工授精及びクローンによる生殖を容認するのはどうか。
一歩進んで、収入当たりの比率に応じて、一定年齢以上の成人に嫡子扶育義務を持たすのはどうか。扶育のために結婚、という捻れ現象はすでに起きているが(できちゃった婚)。
科学技術の発展と法倫理制限の緩和に期待する。


(7)人間の小型化/省力化
扶育に手間と費用がかかることが、出産と育児を困難にしている。子供のそばを離れられないのが社会復帰/職場復帰の障害となっているならば、子供を小型化して携帯性を高めてはどうか。
出産時、新生児が小さいほうが出産が楽であることは広く知られている。また、成長後の人間そのものも大きく育たないようになれば、社会全体の消費エネルギーも省力化できるのではないか。
さしあたっては1/8程度に縮小することを提案する。
科学技術の発展と特撮趣味迫害の緩和に期待する。




そんなわけで、全国の出産を控えた皆様。犬の出産のように安産になりますように。




PS.
この問題の、本当に問題な所について、わかりやすい例えを拾ったのでメモ。

691 :名無しさん@七周年 :2007/02/08(木) 07:09:52 id:MUB9lUbX0
>>663
柳沢「多くの若者が子供を二人以上持ちたいというのは健全な状況だ」
福島「子供が二人以上いない人は不健全だというのか」


柳沢「納豆は健康にいい」
福島「納豆を食べない人は不健康だというのか」

柳沢「おはよう」
福島「これから夜勤で寝る人もいる、その人たちに対する差別だ」

柳沢「紀子様、ご懐妊おめでとうございます」
福島「妊娠するはつらいことだ、それに対しておめでとうというのは女性蔑視だ」

柳沢「今日もいい天気ですね」
福島「雨が降らないと砂漠は大変だ、環境問題を軽視している」

*1:江戸時代の江戸は男女比が圧倒的に女性が少ない都市であったが故に、市井での発言力(もしくは家庭掌握力)はもっぱら女性のほうが強かったそうな。