光化学スモッグと数字のマジック

土日、晴天に恵まれたものの、西日本を中心に光化学スモッグが発生していたらしい。
日本は高度成長期に大気汚染が進み、全国的かつ恒常的に光化学スモッグが発生していた時期があった。
が、工場の排出ガス規制、環境対策、環境技術*1の向上などによって、経済成長しつつ汚染物質の排出を低下させた結果、光化学スモッグの発生は限りなくゼロに近付いた。


が、この数日の光化学スモッグは日本の努力が怠惰になってきた……ということではなく、黄砂の飛来同様、中国の汚染された大気が気流に乗って日本側に流れてきた結果なのだそうな。
中国は現在、戦後最大幅のめざましい経済成長と工業力増強を遂げているのだが、それは高度成長期の日本にも似て、「環境配慮より経済効率」の優先に陥っている。
日本の場合は国土が狭いため「こんなことをやっていたら、すぐにゴミの捨て場はなくなる」ということに気付いたのと、元々の高湿度風土*2から環境対策が進められたのだが、なにせ中国は大陸。国土が広い。また、温帯にあって海に囲まれた高湿度の日本と違って、温度湿度ともに低く腐敗に対する警戒心はあまり重視されてこなかった。
そうしたいろいろな要因が重なって、今まさに中国の大気汚染が日本に流れてきて、日本に光化学スモッグを発生させている次第らしい。


大気汚染以外に、潮流海流の関係から韓国のゴミが日本海側の各県沿岸に漂着したり、黄海東シナ海の汚染が日本にエチゼンクラゲを大発生させたり……と、自国が原因ではない環境被害を日本が被るということは、今後も増えていきそう。


そういえばCO2排出規制に関連した京都議定書なんかの話題では、アメリカ、日本、中国、インドがCO2放出量の上位にある。京都議定書では中国、インドは「後進国」なので排出規制を受けないのだが、その放出量は凄まじい量。アメリカは先頃、経済成長を遂げながら排出量を軽減させることに成長したらしい。
一方、EU、日本はあんまり排出量の削減ができていなくてケシカラン……というような記事を見かけたのだが、EUはもともとCO2排出量を多くさせない政策を京都議定書より以前から行っており、日本は日本でオイルショック以降に叫ばれた「省エネ」により、各種の省エネルギー技術が発展していて、「これ以上ダイエットのしようがない」ほどにCO2排出量が抑制されているため、なかなか「さらなる劇的な圧縮」というのは難しいのだそうな。
体重100kgの人が20kg痩せるのと、体重40kgの人がさらに2kg痩せたのを比べて、「1/10しか痩せてない。ケシカラン」というのは筋違いなのと似てるんだけど、母数を見せずに「あっちは20kg、こっちはたった2kg」という数字だけ見ると簡単に「そうだそうだ!」と乗せられてしまう。


数字のマジックって怖い。

*1:こう総称してしまうのは少々乱暴だけど、例えば汚水を完全浄化して魚が棲めるレベルにするとか、工場から廃棄物を殆ど出さないリサイクル化の促進などなど、さまざまなベクトルの環境対策技術がある。

*2:日本人の潔癖症的気質というのは、この高湿度な風土から説明できる。だらしなくしているとすぐにモノが腐ってしまったり、病気になってしまうため、清潔にしていないとならない。ゴミもその辺に放置すると腐って流行性疾病の発生に繋がりやすいのでまめに片付ける、などなどの性質が育まれたと推測できる。狭い国土に過密な人口を抱えるが故の生活の知恵でもある。