本作り

本を作ることを生業にしている。
普通、本を作ると一言で言っても、その作業工程は多岐にわたる。
企画、人材確保。
コンセプトを改めて詰めて、企画を進めつつ、編集者は社内工作も進めなければならない。
編集長を口説き、営業部を口説き、社長の首を御前会議でタテに振らせる。
この社内工作は版元所属の社員編集者でないとできない仕事であるわけで、僕を始めとするモノカキや外部スタッフが「仕事は本作り」なんて言ってみたところで、実際にはこの社員編集者さんの側面・後方支援に過ぎない。
かつてとある大手出版社の結構奥深いところwを垣間見せていただいたことは、その後の僕にとって大いに肥やしになったなあ、とあの狂乱の90年代を今は懐かしく思ったりもする。
んで、僕が普段している本作りというのは、「企画立てて、原稿書いて、或いは原稿を発注して、仕上がってきた原稿に直しを入れて、レイアウト組んで、必要な写真撮って、それをDTPソフトで組版して、校正紙出して自分でも校正ゲラ読んで、直して、DTPデータを印刷所に納品〜というようなこと。これの合間に、版元編集さんによるチェックだったり、発注先(外注)との事務交渉だったり、カバーなんかを外注する場合はデザイナーさんとの連絡や交渉があったり、等々、まあコマネズミのように働いている。
のだが、データ納品をした後の作業は印刷所が行う。
かつてはデータ納品してポンで終わりではなくて、原稿を版下屋さん(印刷所の下請けだったりした)に投げて、上がってきたものに赤入れして戻したり再校もらったり、というようなキャッチボールがかなりあったのだが、今はデータ納品してしまった後は版元編集さんによる青校か面付け確認くらいで責了になってしまうらしい。(会社によるw)
データ納品された後の印刷所では、データを元に出力用のフィルムを作り、凸版や凹版を作り、印刷機で折りごとにダーッと印刷、こいつをまた折りごとにだーっと折って、重ねてのり付けして、裁断して、カバー付けて帯付けて……という作業を経て完成する。(途中だいぶ端折ったけど、まあだいたいこんな流れ)
昔は印刷してすぐにはインクが乾かないので、インクを乾かす時間というのをたっぷり取っていたらしい。今のインクはかなり早く乾くようにはなったらしいのだが、それでも「インク乾燥時間を短縮した本」というのは、ごく稀にインクが裏移りしてることもあったりするらしい(笑)
で、そうやってできあがった本は取り次ぎさんのトラックで本屋さんへ……と運ばれていくわけで、実際僕なんかはデータ納品してしまうと、もうホントにやることがないのだった。
本作りというのはこれだけ多くの人の手間が掛かっている。印刷機の予約、オペレーターのスケジュール確保、配送トラックの予約、などなど、一歩遅れるといろいろなところに影響が出るので、原稿を用意する最発端部分にいるライター、作家、編集者は責任重大ですよー、ということ。


さて。
そういうわけで、普段は本作りと言いながらも、実はコンテンツのみを作っていて本そのものを実際に物理的に作ってるわけではない。
ので、作ってみた。
現在取り組んでいるとある仕事で、ちょっとパイロット版というかサンプルを作ってみようかなー、という気になった。
とりあえず、InDesign CS3の練習も兼ねているので、ああでもないこうでもないとソフトを弄りつつ、納品用と同じデータを作ってみる。
なんだかいい感じにできたので(といってもたいしたことはしていない)、A6くらいの大きさに出力してみた。二つ折りして、裏側を軽くのり付け。最近のスティック糊は、乾燥後にゴワゴワにならないんですなあ。
ページを揃えてステープラーでガチャコと綴じてみる。


調子に乗って、装幀もしてみた。
百均で売ってるB6サイズのリング綴じのメモ帳の一頁目に、出力して製本したパイロット版の本文部分をペタっと貼り付ける。
でもこれではなんともショボい。
そこで、再び百均でデニムの端布を買ってきて、サイズ図って裁断。
両面テープと接着剤で端布を貼り付け、縁の部分を折り返して接着。
一緒に買ってきた二枚百円の色紙をメモ帳の表紙と同じ大きさに切りそろえ、折り重ねる外蓋部分を作り、これまた両面テープと接着剤で端布に貼り付ける。
ただ貼るだけだと浮いてしまうので、色紙の端切れと洗濯ばさみとダブルクリップなんかを駆使して圧着させる。
貼って塗って貼って塗ってを繰り返すうちに、有機溶剤が室内に充満してなんだかいい気分に(ry


……くらくらするので換気する。
いい歳ぶっこいてアレでナニだったorz


メモ帳を台紙として使ってるので、パイロット版+書き込み可能な御本となった。
装幀までやるのはもう何年ぶりかというくらい久しぶりなので、うっかりしてて接着剤の量が多すぎたorz
こういうこともときどきやんないと忘れちゃうなあ(´・ω・`)


というわけで、とりあえず2冊作った。
1冊にしようと思ったら、束が出過ぎてステープラーの針が通らなかったので、二分冊ということで。それぞれ、扉に赤・緑と書いておいた。ちょっとポケモン的。

一品モノ。出来もなかなかいいのでご満悦。まあ、多少接着剤はみ出してるとこもないこともないけど、そこは御愛敬で。


が、ここまで作ってから気づいた。
何カ所か難読字にルビを入れ忘れてるorz
仕方ないので鉛筆でちょいちょいと書いておく。ショボーorz
えー、職業は本作りですが装幀は職業ではありませんのでそこはひとつ。


後は読後注意と奥付を入れて完成。
なんか久々に本をちゃんと作ったぞ、という感じ。
やってることはプラモデル作るのとあんまり変わらないけど(^^;)




PS.
換気しても換気しても部屋が有機溶剤くさい……(´・ω・`)
そりゃそうだ。接着剤生乾きの本を机の上に並べてニヤニヤしてんだもん。
というわけで、本を部屋の外に出したら、有機溶剤の匂いが若干薄らいだような。
シンナーとか溶剤とか接着剤の匂いを嗅ぐ度に思い出す。子供の頃住んでた実家の隣で、伯父さんがペンキ屋やってたっけなあ。
有機溶剤は郷愁の香り(悪い意味でなく)。