薬害肝炎訴訟の背景の覚え書き

身内に肝炎の方がいるので*1、覚え書きとして。

http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1198164925/657
657 名無しさん@八周年 2007/12/21(金) 02:06:16 PtTvPpT20 mailto:sage


私的まとめ (各地裁判決の区切り年度の根拠背景)

(1)当該血液製剤開発〜1985年
1977年アメリカでB型肝炎ウィルスが原因でフィブリノゲンの販売禁止。
日本ではB型肝炎は不活性化されていたため販売継続。
(ここを知らない、又は意図的に混同している人が多い。)
ちなみにこの不活化処理がたまたま存在が知られてなかったC型にも効いていた。


(2)1985年8月〜
それまでB型肝炎不活化処理に使っていた物質に発ガン性が発見され使用禁止に。
そして偶然、新しい方法ではC型肝炎を不活化できなくなった。


1987年 血液製剤由来と思われる非A型非B型の未知の肝炎の集団発生を受けて厚生省とミドリ十字が調査開始。
調査中の感染拡大を懸念し原因は不明な段階ながら予備的措置として過熱化を決定
1987年4月20日 ミドリ十字 非加熱フィブリノゲン自主回収開始
1987年4月30日 厚生省 加熱フィブリノゲンの製造承認


(3)1988年5月〜
1988年5月 厚生省 加熱フィブリノゲンの回収等を決定
1988年6月 ミドリ十字医療機関フィブリノゲンの返品を要請


1989年 アメリカでC型肝炎ウィルス発見


マスコミ報道で言われるところの、
「1977年にアメリカでは血液製剤フィブリノゲンが販売禁止になったのに、日本はその後も販売を継続していた」
というのは、(1)の誤解、或いは(1)〜(3)の経緯を知らないが故の誤認であるらしい。
薬害肝炎で言われている「C型肝炎」ウィルスが発見されたのは1989年(3)で、それ以前(1985年以前)の血液製剤はA/B型肝炎のための対策が施されていた(偶然、未知のC型にも効いていた)が、1985年以降の製法変更で未知のC型を抑止できなくなった。
アメリカが販売禁止を定めた後も売っていた1977〜1985年」については、C型肝炎が知られていなかったため政府の責任を問うのは難しい(C型肝炎ウィルスの存在が発見されるのは1988年)。


と、そういうことらしい。


薬害以外の理由(例えば輸血血液とか、その他の理由とか)で、当時の方法や所見では未然に回避できなかったものについてまで、一律に政府の落ち度として対処するのは難しい、というのが政府裁判所の拒否理由。

※ここはちょっと書き方がアレだったので、訂正。政府の主張を司法が法に照らし合わせて致し方ない、と判断。三権分立を考えれば、行政に落ち度がなかったことを法に照らし合わせて司法が判断した、というのが現状。和解を受け入れない原告側は「司法の判断がどうあであろうと政府に責任がある」という主張をしているわけで、これは司法判断を蔑ろにするというのは、原告圧力が司法判断に従わない、つまりは三権分立を軽視し脅かすということでもある。
福田総理の「一律救済を検討する」というのは、民意尊重姿勢とも言える反面、司法判断の軽視、司法や行政に干渉する第四の権力としてのマスコミ圧力*2の事実上の影響力拡大を裏付けているものとも言える。
現状、マスコミという権力を規制する法は皆無に等しいわけで*3、これはなんとなく戦前の煽動報道の復活の兆しのようでいてちょっと怖い。


350万人いると言われている全ての肝炎患者/潜在的肝炎患者の全てを一律救済するとして、その費用を政府が捻出するためには、医療・福祉に関する予算を拡大する必要がある。
現在、日本の国家予算の大多数を占める借金の返済(国債の利息支払いなど)を除くと、国家予算(政府支出)のうちもっとも大きな負担となっているのは医療・福祉(年金、医療費、生活保護費)などということらしいので、350万人分の救済を全て政府が受け入れるということが実現するとなると、結果的に「政府の支出の財源不足=調達予算増のため、増税」ということになるわけで、政府を負かしてやった!還元しろ!救済しろ!というのをやんややんやともてはやしていると、結局は「じゃあ、その費用はみんなで折半ね」というところに回ってくるんではなかろうか、と思えてくる。


この手の話では必ず「官僚を減らせばいい(人件費削減)」「武器・兵器を減らせばいい(防衛費削減)」という対抗案を挙げる人が出てくるのだが、外務省の対アフリカ工作(中国によるアフリカ浸透が日本より遥かに先行していて、国連対策やエネルギー政策などが須く後手後手に回って支障が出ている)、防衛装備品*4の調達・更新について言えば、ついこないだのF-15の全面飛行停止によりスクランブル対応機がF4ファントムに戻っただの、F22の調達難航によりFXが決まらず、中国の新型機に対抗できる機体が遅れてるだの、米軍の朝鮮半島撤退との連動だの、アメリカの政権交替、オーストラリアの政権交替により、これまでの同盟国が親中姿勢に回った場合の防衛政策だの……まあそういうミリヲタ的なことに限らず、「安い武器をいっぱい並べれば、高い武器より効果がある」「どうせ専守防衛で撃てないんだから、鉄砲の弾なんぞ抜いてあっても支障ない」的な頭痛のする誤解を元に防衛費削れ、というのはいろいろ問題ありすぎる。*5


この話題、民主党で厚生相を経験した菅直人議員が何か一家言持っているんじゃないかなと思ってるんだけど(だいたい、薬害肝炎問題が進行していたのは、菅直人議員が与党・厚生大臣だった時代だ)、動きなし。近い将来の衆院選で万一民主党が政権を取った場合、今度は政権としてそれらの解決に当たる立場になるんじゃないかと思うんだけど、「前政権の責任であり、我々のせいではない」は通じないわけで*6




総じて素人の床屋政談的な話ではあるけど、新聞の見出し、電車の中吊り、携帯の一行ニュース、コメンテーターの物知り顔の煽動的スローガンに乗っかって顔を真っ赤にしていると、いつか自分のケツに火が点くんじゃないかな、って思えてくる。
自分もキャッチコピーとか書いたりしているから余計に思うことだけど、最近は見出しが記事内容と180度逆になってたり、もっとも重要な点がそっくり抜け落ちているもの、ほぼ全文が又聞きと推測と願望作文になっているようなものが増えている。素人の政治解説以下のものだって珍しくない。というより、情報の考察と解釈と発信をする機会が、本職以外wにも等しく与えられたことで、相対的に「プロのプロたる由縁と威信」は低下しているのかもしれない。あらゆる分野において。


僕の本業も同様であるわけで、こりゃ尻に帆を掛けて火を点けて頑張らなきゃ、と思う次第。



……えーと、薬害肝炎の話はどっか行っちゃいました。

*1:薬害とは違うけど

*2:民意を代弁している、と主張しているのは実際には原告弁護団ではなく、それを正義として扱うマスコミだ

*3:先の放送法改正も、実質骨抜きにされている。民主党放送法改悪を叫んで、この法案を否決すべきだけど、叫ばないだろうし無理だろうねw

*4:自衛隊の戦車や戦闘機、銃器は「武器・兵器」ではなく装備、と言います。

*5:こういう話は、シミュレーションゲームのひとつをやってみるだけでもわかる話だと思うんだけど、軍事嫌いな人ほど軍事について無知無理解無頓着でアレルギーだったりするのでタチ悪い。僕の知る限り、ミリヲタ自衛官に実戦好きは少ないんじゃないかと思うんだけど、ミリヲタ自衛官は戦争したくてうずうずしてるという誤解をしてる人が多いのもまた……。

*6:こういう内政問題は、与党であれ野党であれ、保守系なら誰が政権についても求められる解決策は自ずと決まってくる。なので、与野党超党派で解決してくんないと困るんだけど、民主党は対決好きだからなあ……。また、外交問題与野党で対決材料にするのも凄く問題がある。幕末の戊辰戦争は、フランスに助力を求めた幕府とイギリスの助力を得た官軍による英仏代理戦争であった、というのがその実態なんだけど、米ソの代理戦争であったベトナム戦争朝鮮戦争の例を見るまでもなく、外国の都合や顔色を国政での対立点にすることは、結局は国内が代理戦争の舞台になってしまうだけで、国を二分する愚でしかない。だから外交政策に限っては与野党が一致するのが上策なのだが(ry