対価としてのパッケージ購入の限界値とiTunesへの進出

CD買いました。

先日、デPCD「DeadBall Project Vol.1」を通販で購入。1,470円(税込)、送料600円。
http://www.toranoana.jp/mailorder/cit/pagekit/0000/01/35/0000013598/index.html
続いて、目玉PCD「目玉合宿」「めだま羅針盤」「めだま1号」「めだま格納庫」を通販で購入。一枚500円(税込)、送料800円。
http://p.e-meet.jp/shop/products/list.php?category_id=6


いずれも大好きな曲を世に出してくれた人々の怪作が詰めこまれた逸品であり、楽しませて貰ったお礼として買わせていただいた。


「メルト」「歌に形はないけれど」などの殿堂入り曲も次々にCD化されつつあり、それらは通販(主にとらのあな通販w)で購入することも可能だ。モノによってはメッセサンオーなど、これまた同人系物販を扱う店の店頭で買えたりもする。ごく少数の例に過ぎないけど。
それはいいことだと思う。
思うのだが。
いずれも同人CD。インディーズ盤と同等並みなので、月に1回か2回買うくらいなら、別にそんなに辛くはないからいいんだけど、これからこういう形での同人CDの流通が増えて行くとなると、「一曲単位で売れ」「送料払いたくねえ」っていう不満も出てくるかもしれない。
枚数が数十の場合はCD-Rをちまちま焼いて通販でもいいのかもしれない(目玉合宿はそっち系でした)。千とかいう単位で売れるものということになれば、プレスして通販専門サイトに委託して、というのも選択肢としてはよかろう。売る側の手間を考えれば。
しかし、買う側としてこの送料600円とか800円ってのは、結構な金額だよなと思わなくもない。


個人的にw、というか自分がそれが一番楽だからという理由で敢えて言うけど、DL販売にしてくんないかなあ。
iTunesから1曲150円単位で売ってくんないかなあ。
すでにDLして聞いている曲でも、もっと高音質のものがあれば金払ってでも欲しいし、一度気に入った作曲者の曲やボーナストラックは、金払ってでも聞きたい。ジャケ買いが当たりだったら、そこに集中投資をするというのは、インディーズ廃人でも同人誌漁りでも基本姿勢としては変わらないw


CDが、即売会に行かずに通販で買えるのはいいことだ。
でも、数百円〜千数百円+送料と、百数十円程度で送料なしとだったら、どっちのほうがハードル低いんだろう。

CDであるべき理由は本当にあるのか?

先頃「音楽をDL購入する人は少数派であり、大多数はCDから聞いている。だから、CDを作ることを考えたほうが一般化できる」という論を伺う機会があった。これは、取り立てて珍しい考え方でもなく、ボカロ系の考察をしているサイト以外でもしばしば見かけるものだ。
確かにそうなんだけど、それっていうのはCDが「全国のどこのCDショップでも普遍的に手に入る」という流通のユニバーサリティが確立されているからこそ言える話で、「即売会でしか買えない」「ネット通販でしか売ってない」「ライブに行くしか」「本人手渡しで」となったら、CDがCDたるメリット、手に入りやすいからこそPCに疎い人でも聴ける……という最大の「CDであるべき理由」は消えてしまう。
CDを入手するためのハードルが高くなるほど、プレスしてパッケージメディアにする意味が薄れていくんじゃないんだろうか。


とらのあなでなくAmazonで買えるようになるというだけでも、CD流通としては大きな進歩かもしれない*1
でも、通販という特殊な手段*2や即売会という限定的な場所に出向くという手間を経ないで買えるのでなければ、CDがCDたりうるメリットを活かせないのではないか。

iTunesで買いたい聴きたい

でも、そこまでの全国発売みたいなユニバーサリティを同人音楽に求めるのは非常に難しい。プロに求めるような作り手側のリスク*3を、同人音楽家/アマチュア楽家に求めるのは酷だ。
だったら、やんなきゃいい、というのももちろん選択肢のひとつだから否定しないけど、個人的にはやっぱりiTunes当たりでのDL販売にコマを進めてほしいよな、と思う。


iTunesを推奨する理由として、パッケージ作成・在庫管理のリスク*4がなく、ロングテールに耐え、購入者側の支払い方法が確立していて、作者への報酬(購入対価)の支払いが確実で、音楽を積極的に聴くリスナーが多く、ボカロ発祥の音楽に対しての抵抗感も少ない、ということが挙げられる。
CDを山ほどプレスしても損が出ない、超有名PはCDでも構わないと思うのだが、知られるようになるのに長い時間が掛かるかもしれない埋没系名曲を作るPの曲は、CDをプレスして売るにはリスクが大きすぎる。
DL販売なら、プレスした現物在庫を抱えるリスクも、それを捌く営業リスクも小さい。現状では既にドワンゴが着うたの形で配信しているけど、アレはiPodなどのシリコンプレーヤーには入らないんだよなあ(^^;)<そこがネック


僕などは一種の音楽廃人でもあるので、「量が入る、いつも聴ける」ということでiPodを重宝しているんだけど、現在の主立った「音楽を商品として消費する層」が、自宅のラジカセの前でだけ音楽を聴いているということは、ちょっと考えにくいとは思う。ポータブルCDプレーヤーという商品は、一時期に比べて製品流通量そのものが減っている。量販店に行くと、ポータブル音楽プレーヤーとして売られているのは全体の半分がiPodで、残りの半分がその他のメーカーのシリコンプレーヤー。もちろん、MTRプレイヤーなんかほとんど見かけない。
シリコンプレーヤーを使っている人の多くは、もちろんまだまだCDからのエンコをしているのだろう。パソコンを使ってか、直接吸い出しかはわからないけど。
が、CDから吸い出して聴く使い方は、今後減ることはあっても増えることはなさそうだ。これは販売されているシリコンプレーヤーの普及バランスと、パソコンの普及ペースと、CDの売り上げ規模の推移からの推測。パソコン*5の普及が進むことはあっても、後退することはないと考えれば、今すぐではないにせよいずれは音楽は「ネットから手に入れて聞くもの」になっていくのは否めない。
Napsterの登場初期からネット経由の音楽も聞いてるけど*6、ネットからの【音圧】は増しこそすれ減じているという印象はまったくないし。

底辺から空へ!

弱小……というと語弊があるので、敢えてこう言おう。
底辺。
底辺Pこそ、iTunes Music StoreiTMS)に進出すべきなんじゃないかなー。売れても売れなくてもいいけど、在庫リスクを負わずに済み、超長期にわたるロングテールに耐える、いい曲を作っている人こそ。


もちろん、ここには「作った音楽を売買するに当たっての、クリプトン&ヤマハとの契約上の制限」という別の課題が生まれてくるんだけど、
「だったら、オケ作って、初音ミクで歌わせたものはニコ動やピアプロyoutubeや自分のサイトで無償配信、歌ってみたって人と組んで初音ミクを外して歌入れしたものを、iTunesで売ればいい」
とか思ったりもする。
殿堂入り名曲と言われる曲をざっと挙げると「メルト」「コンビニ」「恋するVocaloid」などがあるが、これらは、初音ミクが歌ったモノである限りクリプトン&ヤマハとの契約上の制限から自由に商品化できない。作者もその気はあまりないらしい。
でも、halyosy歌和サクラが歌ったメルトをiTunesで買えるなら、僕は迷わずに買うし、友だちにも勧めて回るだろうなと思う。halyosy版のアコギアレンジ「コンビニ」も同様。halyosyに限った話ではなくて、みたにの「幸せの種」、雌豚閣下の「不思議な幸せ」、ヤマイの「恋は戦争」などなど、挙げたらきりがない。
そういう形であるなら、オケを作った作者と歌ってみた歌手の間で合意さえできれば、クリプトン&ヤマハのことはとりあえず考慮することなく、純粋に【低リスクでの、楽曲の有償配布】の機会が見えてくるのではないか。


初音ミクが歌った底歌のVer.は、DL販売と並行してニコ動なりピアプロなりで二次創作制限なしで配信していれば、「別にお金払いたくない」という人には、何の影響もない。
そういう形で、「初音ミクが」ではなくて、「ボカロで音楽を作った、作者自身、歌い手自身」が、世に出て行くというのもアリじゃないかなあ。

*1:「歌に形はないけれど」の次からのdorikoの曲はAmazon取り扱い+全国発売になるらしい

*2:CDでしか音楽を聴かない、通販は怖くてできないという層=一般層ならば。

*3:金銭的・コスト的、そして事務処理の手間的な

*4:売れないCDの山をどこかに保管しておく倉庫代などw

*5:や、それに類似したWebクライアントツール。UMPCスマートフォンも携帯もデジタル家電全般もここに入れていいだろうとは思う。

*6:そしてライブにも行くし、ライブでCDも買うし、インディーズジャケ買いもするw