恐怖箱 蟻地獄


恐怖箱 蟻地獄
原田空×矢内倫吾×高田公太 著
https://www.amazon.co.jp/dp/4812438640?tag=kyofubako-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=4812438640&adid=0QA897Z1QT84E1S6ZPYF&

といったわけで、カバー出来。
あと3週間もしないうちに出ます。ええ出ます。
今回、関係者に起きた怪異または日常や人生に纏わる不具合・不幸・変化を累計すると、のべ5件くらい。
そういうものです。怪談というのは。


また、既刊の恐怖箱関連書籍は以下の通り。

怪コレ系(傑作選)

  • 超-1怪コレクション(2006)*1
  • 超-1怪コレクションVol.2(2006)
  • 超-1怪コレクションVol.3(2006)
  • 恐怖箱 超-1怪コレクション 黄昏の章(2007)
  • 恐怖箱 超-1怪コレクション 夜明けの章(2007)
  • 恐怖箱 彼岸花(2008)*2

遺伝記→怪集系(創作系傑作選)

  • 恐怖箱 遺伝記(2008)*3

単著系*4

実話アンソロ系*7

  • 恐怖箱 蛇苺(深澤夜,原田空,つくね乱蔵,2008)
  • 恐怖箱 老鴉瓜(鳥飼誠,矢内倫吾,藪蔵人,2008)
  • 恐怖箱 蟻地獄(原田空,矢内倫吾,高田公太,2009)

蟻地獄は、通巻で15巻目。
超-1を経て恐怖箱/「超」怖い話を経てデビューにこぎ着けた著者は、

  • 久田樹生
  • 松村進吉
  • 雨宮淳
  • 深澤夜
  • 原田空
  • つくね乱蔵
  • 鳥飼誠
  • 矢内倫吾
  • 藪蔵人
  • 高田公太

※単著デビュー順。単著デビューがまだの場合、共著記載名順。

現時点で上記10名。
実話怪談は何が大変って、「とにかくネタ(体験談)と出会う」ということに尽きる。長期シリーズが難しい*8。持ちネタはすぐに書き尽くしてしまうし、同じ話を何度もは書けないし、オーソリティのように言われてもネタの発掘に掛けられる時間が増えるわけではないし。
それが故に、片手間*9でせざるを得ない分野であるのは否めない。


かつては実話怪談が求められるのは夏場だけだった。というより、それ以外の時期に出しても売れなかったし、そもそも注文が入らないので書店に並ぶのは稀有だった。*10
が、「超」怖い話が1月発売で「冬でも売れる」ことが証明され、夏の怪談商戦が初夏に前倒しされ、本が売れない2月、怪談が売れない3月でも実話怪談本の需要は途絶しているわけではないことがわかり、これまた夏の怪談商戦終了後で需要が終わっていると思われていた秋でも、実話怪談本の需要*11があることが怪コレで証明され……。
そんなわけで、ほぼ通年、実話怪談が求められるようになった。この数年の話だ。
でもやっぱり、実話怪談専業では職業としては食えている人はほとんどいない。その点は今も昔も変わっていないと思う。
だから選択肢はふたつになる。

  • 書き物専業作家が手慰みに実話怪談も書く
  • 別の本業を持つ兼業作家が実話怪談を好んで書く

取材の手間や、取材にかけた労力がそのままネタの精度と比例するとは限らないリスキーさを考えると、専業作家が実話怪談にこだわることの難しさが、より鮮明になってくる。もちろん、兼業作家はそれぞれが個々の「本業」を持っているわけで、本業と作家の二足の草鞋を履くのは、専業作家とはまた別の意味で負担も多く難しいことかと思う。*12


恐怖箱は、元々は超-1→「超」怖い話のための共著者発掘に端を発している。今は著者の補充先を「超」怖い話に限らず、その受け皿として恐怖箱全体が機能している。
これまで意識して「兼業作家の発掘」、「長いスパンで書き続けられる人のための環境整備*13」、「複数作家で一冊でも商品化できる環境整備*14」を心がけているのだけど、実話怪談を書く必要がある人、書かざるを得ない人、書いても書いても書き足りない人などの受け皿になるのが理想だろうと思う。*15


また、実話怪談というか、怪談、怖い話、ホラーというか「他人の不幸を渇望する」というムーブメントというのは、世の中が不景気であるほど興隆するものであるらしい。戦後の混乱期のカストリ雑誌、高度成長期とバブルの合間の怪談ブーム、バブルが弾けた後、90年代以降のJホラーブーム*16などのように、世の中が不景気なときほど、怖い話というものの需要は高まる。
「景気が悪いから、パッと景気のいい話をしよう」というポジティブな方向には行かず、「誰かが酷い目に遭った話」を見聞することで、「それが自分に起きなくてよかった」とほくそ笑む暗い悦びを求める人が、一定数の実話怪談ジャンキーの上に上乗せされるからではないか、と思う。創作ホラーの市場は実話怪談の市場より大きいのではと思うのだけど、創作ホラーは作中登場人物は架空の存在で被害者は実在しない。実話怪談の被害者(体験者)は実在する。そこに意味を見出す人が、実話怪談を求めるのではなかろうか。
その意味で、この数年急激に実話怪談本の発行点数が増え、それを支える需要(市場)が膨れ、実話怪談のネタ元になる体験談の発掘数が増えたということは、なるべくしてなった必然なのかもなと思わないでもない。これからますます、今まで実話怪談と距離を取ってきたような人々が、これまでに聞いたこともないような実話怪談を発掘し、世に送り出してくるようになるのではないか。
実話怪談ジャンキーの皆々様におかれましては、たぶん嬉しい悲鳴なのかな、と。


そういうわけで、恐怖箱 蟻地獄。
恐怖箱の役目は、市井から実話怪談を汲み上げる井戸であろうと思う。
井戸の周囲で桶を手繰るのは、市井の人であるのが望ましい。
本書の井戸番3人は、たぶんその期待に応えてくれると思う。





PS.
ところで、Amazonの予約はぼちぼちできるかな? と思って、そっちのデータを漁ってみた。
http://www.amazon.co.jp/dp/4812471036/


……。違うから。
おーはしるいさん、書いてないから。
コミックじゃないから。
おーはしさんのファンの方、驚かれてたらすみません。僕も驚きました。
おーはしさんもお気づきの様子で、6/10付けの日記でネタにされていたw
http://blog.ruimaru.hacca.jp/


PS2.
そういうわけで、正しくはこちら。
https://www.amazon.co.jp/dp/4812438640?tag=kyofubako-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=4812438640&adid=0QA897Z1QT84E1S6ZPYF&

*1:当初恐怖箱に含まれていなかった(レーベル成立前)ものの、怪コレ初期3巻は、超-1の傑作選であるので恐怖箱に含む

*2:もちろんこれも怪コレなのだが、あまりにもタイトルが長くなりすぎwなので、怪コレでありながらタイトル圧縮がされて、「超-1怪コレクション」の部分の書体が小さくなった。

*3:実話怪談ではない創作ホラー小説コンテストの傑作選で、当初は恐怖箱に編入されていたが、実話と創作は分けたほうが混乱が少ないかもということで、次年度(今年)からは「怪集」に改められて恐怖箱から暖簾分けした。が、これも一応恐怖箱関連作にカウント。

*4:タイトルが、「怪○」の二文字造語になっているもの。

*5:形の上では「超」怖い話レーベルに含まれているが、超-1出身者が執筆しているので「怪歴」「怪記」「怪逅」ということで恐怖箱関連作にカウント。

*6:実は元々は、「怪歴」「怪記」「怪医」で怪が付く三部作の予定だった。これ豆知識。

*7:超-1選抜著者3人でひとつのチームになる試み。内実としては、「最低限70頁分以上」「それ以上は良い作があればそれを優先掲載」のバトルロイヤル制。編制は毎年変わる。タイトルには一応ルールがある。

*8:「超」怖い話新耳袋などの例外を除いて、多くの単著系実話怪談で単一長期シリーズはほとんどない。

*9:というと叱られそうだけど、実話怪談を書いている現役のベテラン作家も、多くの場合は小説やルポやその他の本命仕事を持っている。

*10:その昔、「超」怖い話が竹で復帰するより以前に「スキー場の怪談」という文庫本をコンビニで見かけたことがあって、アレはホントに画期的というかターニングポイントだったと思ったんだけど、今検索したら登録されてなかった。うろ覚えの正式書名が違うのかもしれない。

*11:の、底

*12:取材をしている間というのはどこからも費用は出ないわけで、それはほとんど持ち出しに近い。書いて出してやっと元が取れるかどうか、といったところだし。ネタひとつで一冊書ける本と、小ネタ一杯でようやく一冊の実話怪談本の性質の違いも関係してそうな気はする。

*13:専業作家はそれだけで食えなければならず、それだけで食える専業作家というのは毎年ミリオンヒットを出すか、隔月で新刊が出るか、毎月複数の連載があるかでなければ難しい。そういうことを踏まえると、本業があって年に一冊くらいのペースで続けられる兼業で書ける体制作りという選択肢もあっていいと思う。

*14:今は不景気のおかげで怪談需要が増しているからできることではあると思うけど、これも兼業作家の露出機会確保のため。専業作家でも気ィ抜いたら使い捨てになってしまいかねない昨今、食べるために才能やネタを短時間で使い切ってしまうのではなくて、再充電をする期間をたっぷり取りつつ、続けていけるというのがよいのではないかと思う。このへん、編集者的な発想かもだけど。

*15:実話怪談は、次のステップへの足掛かりという人ももちろんいるだろうし、それはそれでよいのではないかとも思う。求める真理はひとつ、というようなけちくさいことは考えずともよかろうw

*16:新耳が90年、「超」怖い話が91年、稲川淳二は93年頃から、リングが93年刊、95年TV化、98年映画化