民主党のはマニフェストじゃなかったらしい
時事ドットコム:国・地方協議、公約に追加=「27日発表分は正式ではない」−民主代表
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009072900687
民主・鳩山代表「マニフェスト正式ではない」 麻生首相「聞いた方は混乱する」と批判(フジテレビ系) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn/20090729/20090729-00000999-fnn-pol.html
7/27の民主党「マニフェスト発表会」には、確かに「マニフェスト」「発表」と書いてあるのになあ。
http://www.dpj.or.jp/news/files/m2.jpg
orz
なんという後出しジャンケン。
20兆円の予算規模とか言ってたのが16兆円になったり、インド洋補給活動について何も言わないので継続かと思ってたら、来年1月で終了して、今度は地上戦が続くアフガンへの貢献策とか。
オバマ大統領はイラクからの撤退派だけど、アフガンについては地上戦力増強を唱えるアフガン増派を主張している最中であるわけで、民主が日本によるアフガン貢献策を主張する場合、NPOの護衛とか(もちろん、武器使用は免れない)では済まされないわけだけど、そんなところにon the bootsでOKなんでしょうかね?
時事ドットコム:撤退後は対テロ貢献策として、アフガニスタンへの経済・人道支援などに積極的に取り組む
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009072900606
イラクもそうだったけど、経済・人道支援というのは、ある程度の治安が回復されている状態でないと、「金をばらまいてもどこに消えたかわからない*1」になってしまう恐れが高い。
その意味で、民主が想定しているのが「陸上部隊(陸自)」を送り込んで行うイラク型派遣になるのか、シビリアンを送る、NPOを支援するなどになるのかで、貢献の意味は違ってくる。
NPO支援やシビリアンを送って意味があるのは地域の治安維持を行う段階まで進んでからの話で、アフガンは未だその段階ではない。
元々、陸自を地上戦の終わってない地域に投入させずに貢献するための方法がインド洋海上補給であった。
これは、アフガンへのテロリストの武器補給、またはアフガンからのテロリスト重要人物の脱出(いずれも海上ルート)を海上監視する多国籍艦隊のパトロールを維持する*2ためのものでもある。
ソマリアの海賊対策もそうだが、日本はペルシャ湾・インド洋を経由する、自国民間船舶(タンカー・貨物船)の海上航行ルート*3を確保する意味でも、海の安全(公海上の安全確保)には積極的に協力すべきだし、アメリカ以外では日本しか海上補給を行う能力とキャパがある国はないわけで、ここから日本が撤退することについては、ブッシュがオバマに変わってもアメリカは絶対に譲れないところではないかと思われる。
日本ではこれらの海上補給について、「日本がタダで使える便利なガソリンスタンドにされている」という揶揄ばかりが広まり、実際に海上補給を行う能力を持つ国が他にはあまりないこと、海上補給を受けた多国籍軍による掃海行動が、ヨーロッパ(製品輸出)〜中東(原油輸入)〜日本を繋ぐ重要な民間船舶航路のガードに当たっているということの意味が、理解されていなさすぎる気がする。
2008年に原油価格が1バレル$180まで急騰し、小麦から何からあらゆるものの物価が爆上げしたことは記憶に新しい。このときの原油価格高騰の原因は、リーマン・ショックに続くサブプライムローンバブルの予兆であった*4が、中東〜日本の間のシーレーンが怪しくなって、原油輸送に不安が生じるようなことがあれば、やはり同様に原油価格は高騰する。*5
このルートの安全確保、死守というのは日本の全ての企業・生活者にとっての生命線とも言えるものなのだが、その点についての理解がこれから政権与党を担おうかという党にすら理解されていない。*6
オバマ大統領は確かにイラクよりアフガンへの戦力増強を主張しているわけだが、オバマですら地上戦の出口が見えないアフガンへの戦力投入増派を言っている段階。そんな所に向けて「代わりにアフガン貢献しますから」と言われたら、陸上戦力を要求されてもおかしくない。
「でも日本は専守防衛なので、陸自は送れないし、送れても戦闘はできませんから守って下さい」などと言われたら、「帰れ」と言われるのがオチ。*7
「オバマは民主党であって、湾岸戦争のときのブッシュ父は共和党なので、きっとわかってくれるはずだ」という甘えがあるのかもしれないけど、米民主党というのは別に反戦的な党では決してない。アメリカは、共和党も民主党も、どちらも「戦争を道具にする愛国的*8な政党」であるわけで、たぶん同じような対応をされる可能性があるんではなかろうか。
その意味でも、やっぱりペルシャ湾・インド洋の安定*9 *10のために、オフェンスに出られない日本が海上補給というディフェンスに徹するのは必要を満たした正しいことだと思うのだが、そこんところ辞めちゃっておきながら、「シーレーンの安寧の責任は他国頼み」ってのは、通用するんですかね?
鳩山代表は「ブレているのではない! 進化している!」ということですが。
*2:補給港に戻る間、海域に空白ができてしまうのを防ぐため。そして、海上で航行しながら艦船に補給する能力とその余剰能力を持っている国は、英国、米国、日本しかないため。
*4:サブプライムローンという右肩上がりを続けてきた投資先が怪しくなってきたので、金融資本が中国などによる買い占めで値段が上がり始めていた中東原油先物への投資に転じてきた。その結果、過度に価格が上昇した、というのが原油価格高騰のからくりで、バブルが弾けた結果、世界各地の購買能力が激減したので、買い手がいなくなって(需要が減って)原油価格も落ちた。
*5:日本に原油を輸送するのにリスクが高まり、輸送コストが上がる、実際に輸送される量が減るなどすることになるため。
*6:そういえば、ソマリア海賊対策について、「海賊など漫画でしか知らない」とか言った民主幹部議員がいたなあ。
*7:1991年の湾岸戦争では、コレを当時自民党幹事長だった小沢一郎の旗振りで、「金だけ出す」という貢献策を採ったら、まったく感謝されなかった上に「金で済ます気か。人を出せ。汗を流せ」とバカにされた。小沢一郎はこれでメンツを潰されたことをずっと根に持っていて、アメリカを困らせたいがためにイラク、アフガンではアメリカと足並みを揃えない貢献案ばかりを出している、という話もあるくらい。
*9:海賊やテロリストが跋扈しない海を維持する、という意味で。
*10:ちなみに、安倍政権のときにサウジと話が進んでいた、「沖縄の石油備蓄基地を、サウジに無償提供する」という話は、そうした中東〜日本のシーレーンに不安が生じ、原油価格が高騰しそうなときに、沖縄の備蓄タンクのサウジの原油を日本が優先的に買うことができ、そうではない平時は日本の原油管理の下、サウジは東アジアで原油売買をするための基地として使用できる、というもの。沖縄には在日米軍基地もあり、他国の物理的攻撃を被る可能性もごく低いことから、Win-Winの案として高く評価されていた。これ、民主党になっても引き継がれるのかな? 民主党の手柄として。