鳩山論文

鳩山論文の要旨(産経新聞 - Yahoo!ニュース(引用)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090901-00000065-san-pol

 一、日本は冷戦後、グローバリゼーションと呼ばれるアメリカ主導の市場原理主義に翻弄(ほんろう)され続け、資本主義が原理的に追求されていく中で人間は目的ではなく手段におとしめられて、人間の尊厳は失われた。

 一、道義と節度を喪失した金融資本主義、市場原理主義にいかに終止符を打ち国民経済と国民生活を守っていくかがわれわれに突き付けられている課題だ。

 一、今回の経済危機は、アメリカ型の自由市場経済が普遍的、理想的な経済秩序を代表しており、すべての国が経済の伝統と規制をグローバル(むしろアメリカの)スタンダードに合わせて修正すべきだとの考え方によってもたらされた。

 一、グローバル経済は日本の伝統的経済活動を損傷し地域社会を破壊しており、グローバリズムが進む中で切り捨てられてきた価値に目を向け直すことが政治の責任だ。

 一、もう一つの国家目標は、「東アジア共同体」の創設だ。むろん、日米安保条約は日本外交の礎石であり続ける。
われわれは同時に、アジアに位置する国家として、地域の経済協力と安全保障の枠組みを築き続けなければならない。

 一、金融危機は多くの人々に、アメリカ一国主義の時代の終焉(しゅうえん)を予感させ、ドル基軸通貨体制の永続性への懸念を抱かせた。私も、イラク戦争の失敗と金融危機で、アメリカ主導のグローバリズムの時代が終わって世界が多極化の時代へと移りつつあると感じる。

 一、現時点では、支配国家としてアメリカに代わる国も、世界基軸通貨としてのドルに代わる通貨も、一つとしてない。
だが、中国が軍事力を拡大しつつ世界の主導的経済国家の一つになることは明らかだ。

 一、世界の支配国家としての地位を維持しようと戦うアメリカと、これから世界の支配国になろうと狙う中国との間で、日本はいかにして政治的、経済的独立を維持すべきか。これは日本のみならずアジア中小国の悩みであり、地域統合促進の主たる要因である。

NYT*1の電子版に掲載されたものらしく、情報を整理すると原典は「Voice」9月号掲載の鳩山論文から、対米関連部分を抜粋したものらしい。
民主党は「NYTには出してない」とはいうものの、Voiceにはこれを補完した全文が出ており、そっちには出してるようなので申し開きはできなかろう。「おまえに向かって言ったわけじゃないが、おまえのことは言っている」であるわけだからして。


要旨をさらに超約するwと、

日本は戦後、アメリカに酷い目に遭わされてきた。
でも、アメリカいろいろポカやりすぎ。
アメリカ、オワタ\(^o^)/
だから日本はもうアメリカに付いていかない。
これからはアメリカの代わりに中国に付いてく。

アメリカでは、NYTだけでなく、WSJ、WPなどの主要各紙が社説で一斉にこれに反応していて、共和党関係者だけでなく、どっちかというと米民主党よりだったり、自民党批判を繰り返してきた知日派のコラムニストなども一斉に反発している。
そりゃまあ、この恐慌で喘いでる最中に「アメリカは終わってる」と同盟国の次期指導者に名指しされたら、共和・民主に拘わらずアメリカは猛反発するわな。アメリカはそういう国だもの。


なんで鳩山民主は、組閣前からアメリカとの関係をややこしくしたいのか、その意図がよくわからない。
たぶん、意図はないのかもしれない。


この抜粋論文がNYTに流れた理由などを考えてみたのだが、もし本当に鳩山が与り知らないのに掲載されたのだとすると、誰がリークwしたのか?
日本のフレームが変わったのだから、そりゃ新たな指導者の考えをいち早く知りたいと思うのは当然で、誰かが好意で? それとも、「おまえら次の鳩山はこんな奴ですよ」とネガティブ・キャンペーンの一環として自民関係者がw*2
どっちにせよ、「自分はそんなつもりじゃない」というのが通用しないのが外交であるわけで、「相手はいつも自分のことをわかってくれてる、そして自分に甘えさせてくれる」という前提に立った友愛外交が、どのような実効を見せてくれるのか、その最初の見せ場になるのかもしんない。
民主党繋がりってだけでオバマ大統領と仲良くして貰えるのかどうかは、甚だ不明。*3


民主党というのは、伝統的に日本を商売敵、ライバルと考えるので、日本をパッシングして中国と親密になる、という展開を警戒しなければならない。日本の民主党民主党で、対米より対中重要度を上げる、と最初から表明しているので、中国としてはキッシンジャーの手を捻るより簡単に両国を天秤に掛けられることになるわけで、割とウハウハ。
さらには、民主党の対米態度と「埋蔵金捻出手段」から、民主が米国債を売りに出すというようなことが起きれば、下落中のドルは壊滅する。以前、橋本内閣はその可能性を口走っただけで潰された、という噂があるくらい。
それを武器にして米中接近を阻止するなら、そりゃ外交技術としては凄いもんだが、逆にアメリカから何をされるかわかったもんじゃない。劇場版ドラえもんを見ても分かるとおり、「ジャイアンは味方にいてこそ頼もしい」のである。


どうする。どうなる。
相手がいる外交。

*1:ニューヨークタイムズ

*2:でも、ネガティブ・キャンペーンの一環だったら、あと一週間早くやったほうが効果があったはずなので、その路線は一応外して良い気がする。

*3:以前、ケリーが大統領選を戦っていた頃、日本の民主党が飛び込みで米民主党大会を訪ねていったら、「忙しいからアポがない人と会う暇ない」と、袖にされ、仕方なく一般の観客席から見て帰った、という話がある。菅直人の頃だったかなあ。小沢は小沢で湾岸戦争(1991)でメンツを潰された恨みがあるわけで、今後アメリカが頭を下げてくるようなことがない限り、金正日なみの「会わない外交」を展開する可能性もある。「所詮日本もアジアの一国」と思われたら、それはそれで福澤諭吉が草葉の陰で泣くと思うよ。