2009/1/2のエントリにある予言

言論統制と政治的ロードマップの予想 - さぼり記
http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20090102/1230858872

僕は書き物を商売としているので、言論統制、禁止用語、自粛、そういったものに割と鋭敏なほうである、と自分では思っている。可能な限り正則で行きたいと思う反面、自分の要望では抗えない「大人の事情」がいつどういう形で来るとも知れない。
出版界はその辺、結構タブーが多い。
今でこそこうしてblog如きwに床屋政談的な政治観測を書き散らしたりもできるけれども、少し前までは政治について語るということそのものがタブーだった時代があるし、政治的な主張みたいなものを公的に書き散らしているとそれだけで仕事が来なくなったりする時代もあった。ホントですよ。
日本において、政治を漫画の題材に本格的に扱ったのは本宮ひろしではなかったかと記憶しているのだけど、今ではそういったタブーは霧散している。いいことだと思う反面、やはり「大人の事情」の制限は残る*1
政治以外にも様々な「触れられない大人の事情からくるタブー」というのはって、それを踏み越えないよう「配慮」するというのは致し方ないところ。*2


さて、枕が長い。
上述、今年1/2のエントリの末尾でこう書いた。

民主党左派が望まない右派有権者層が、その方針を変えないまま、「昔の自民党」を民主党に期待しているというのが現状なのだけど、その方向に進むことを、共産党社民党社会党から鞍替えして民主党に期待してきた左派有権者層は、それらと共存していけるのかな? というのが、たぶん最大の課題で着目点じゃないかなと思う。
でもたぶん、そこまでみんな考えてないので、「とりあえず今と劇的に変われば誰でもいい、うまく行かなかったら批判し倒して引きずり下ろせばいい。そして我々は非常に気が短い」という感じなんじゃないかなと思う。

総選挙を終えてみて、「自民党が歴史的に大敗した」「民主党が爆発的に議席を増やした」という結果が出たわけだが、では民主党に300議席を与えた有権者はどこから来たのか? と言われれば、それはもちろんそれまで自民党を支持していた人々である。
では、それまで自民を支持していた人々が、「宗旨替え」をして民主に入れたのか? と言われれば、これは明らかにNOだろう。


2009/1/2のエントリにあるように、それまで自民を支持してきた保守=右派有権者層が、突然左派に鞍替えするということは考えにくい。なぜなら、保守的=安定することで利益を得てきた人々なわけで、小泉改革がもし否定された結果の有権者大移動だとするなら、「昔の自民党カムバック!」というのが移動した有権者層の声ということになる。
つまり、民主に求められているのは、「昔の、良かった頃の自民党」であることなわけで、改革でもなければ左派的な振る舞いでもない。

これまで民主を支えてきた左派有権者層の得票はそのまま維持され、なおかつ自民的なことを民主に期待する右派有権者層の流入が現実に起きたのが今回の選挙だった、ということだ。


となると、民主は従来の支持層である左派層に配慮した政策を進めるのか、ニューカマーである「自民的な政治」を期待する右派層に配慮した政策を進めるのか、という選択を迫られることになる。
なるのではないか、と予測してきたが、やっぱり今後これを強いられる場面は増えてくる。
「とりあえずこれまでと劇的に変われば誰でもいい」
という情熱に後押しされた交代劇は確かに実現した。その点、溜飲は下がっただろう。
そして、これからは「うまく行かなかったら引きずり下ろせばいい」ということになるのだろう。
実際、民主は今後「スピーディな政策遂行」のために、自民党が用意しながら対決路線遂行のために民主が真っ向反対して潰したり引き伸ばしたりしまくってきた政策――自民党の法案・政策を、片っ端から名前を付け替えて「民主党の法案」として提出・成立させていくことになるのではないか。ま、コレは既に既出のエントリでも紹介してるように、北朝鮮の貨物検査法案などでやり始めている。
この北朝鮮の貨物検査法案は、2009年6〜7月に民主党側が審議拒否、参院では「審査せずに廃案にする」と輿石東が宣言して、民主党によって否定された法案なのだが、それをほとんどまったく同じ内容で民主党は提出した、とのこと。
自民としては「先行していた法案を横取りされた」ようなもんだが、右派有権者層としては、似たような法案が実現されるなら別にどっちの手柄でもいい、ということになる。
またこれは、よく言えば「現実路線」とも言えるw
ただ、左派有権者層はこれをストレートに評価するかと言われれば、あまりいい顔はしないだろう。民主党の対決路線(自民党案について、とにかくなんでも反対する)を、両手を挙げて応援してきた左派層としてみれば、これまで否定してきた自民案と同じものを可決成立させようというのは納得がいかないところだろうから。


そこで、「じゃあ今度は左派の顔を立てるために、やっぱりこれは引っ込めて」ということをやっていると、今度は右派がなんだそれはどういうことだ、と騒ぎ始める。
板挟みである。
参院多数派と衆院絶対多数を持っていても、党内にそうした右派・左派という一致しない支持層を抱え込んでしまった以上、党内で意見調整ができずに空転していく、という恐れはあるかもしれない。
しかも、民主党内のできごとは、「党内事情」であるわけで、有権者は一切コミットできない。


有権者は気が短い。
その有権者を蚊帳の外に置いてきたことが自民の寿命を縮めたが、民主は勝ちすぎたことによって同じ苦境に立つ可能性がある。
民主は勝ちに耐えられるか?

*1:大好きな「ムダヅモなき改革」に民主党の面々がほとんど(菅直人は別格w)出てこないのは、上り調子の権力者を敵に回さない、という配慮と言えなくもないかもしれないし、そのへんはわからない。タイミングを測ってるのかもしれないしw

*2:まあ、こと政治的云々については単なる趣味に過ぎず、金もらって何か言ってるわけではないのでw、今後、僕が言葉を濁すことがあれば、それはきっと政治的圧力か仕事が忙しいかどちらか