チビ麟太郎と今の麟太郎

麟太郎は2002年の9月頃に老夫婦の飼い猫の子供として生まれた。
そこに2カ月ほどいて、老夫婦がお子さんと同居するに当たって仔猫を飼うことができなくなり、里親ボランティアの方がそれを預かり受けた。
その里親ボランティアの方のところで二カ月ほど暮らした後、里親ボランティアの方のお住まいが火事に遭ったとかで、猫達ともども焼け出されてしまったらしい。
里親ボランティアの方は、それでもなお猫達をアパートの一室で養っていた。三畳間に20頭近くいたそうな。


僕らは紆余曲折あって、その里親ボランティアの方から麟太郎を貰い受けた。
それが2003年の2月頃。
「もう避妊手術もワクチンもやってあるから」
という仔猫を新宿三丁目当たりまで迎えにいくためだけに、キャットキャリーを買った。
開店前のパブかどこか、薄暗いお店の中で、初めて麟太郎とご対面。
「大人しい子だけど、人見知りするのよ」
里親さんには懐くけど、僕らの顔を見るなり店の隅に走って逃げた。
それから麟太郎は大江戸線に揺られて今の家に引き取ってこられた。
そのときに撮った写真が残ってた。
携帯のデジカメで撮った一枚。何しろ6年半も前だ。携帯のデジカメの性能も今よりずっとしょぼい。

この後、新しいデジカメや、新しい携帯を買うと、とりあえずまず最初に麟太郎を撮った。6年半で麟太郎フォルダはパンパン。猫飼いならきっとみんなそんなもんなのだろう。


麟太郎はあれから一歩も家から出てない。6年半近くずっと家猫。箱入り猫。
脱走しようとしたこともなく、家出もなく。
一日のほとんどを仕事部屋のPCの前で過ごす僕の視界に、必ずぴったり収まってきた。
最初の一週間ほどは全然慣れてくれなくて、餌と水は減っていてトイレも使ってるので、確かに室内にはいるんだけど、テレビの裏やカウチの裏に逃げ込んで息を潜めているので、気配はすれども姿は見せず、といった具合。ようやく慣れたのは、友人が遊びに来ているときで、僕らより先に初対面の友人に撫でられていた。
以来、客好きは変わらず。特に男性客が好きで、初対面でも膝に乗る。この男好きめ。
思えば、麟太郎といる時間は家人と一緒にいる時間より長いかもしれない。
飯の時間には居間に付いてきて、料理をしていると台所に付いてきて、風呂に入ろうとすると脱衣所まで付いてくる。浴室には何度かチャレンジしていたが、浴槽までは入れない。水も湯も嫌いで、シャンプーは絶対にさせてくれない。
その割に毛艶は良くて、ふかふかしていつもいい匂いがした。


麟太郎は今、本郷の東大農学部付属の動物医療センターに入院中。
昨夜、病院から電話があった。それは家人が受けた。
MRIをしたい、とのことだった。
費用は掛かるが、了解することにした。


病院の待合室で、携帯のデジカメで麟太郎の写真を撮った。
これは検査入院直前の、最新の写真。

うちに初めて来たときに撮った一枚と比べると、携帯デジカメの性能ってよくなったんだなあと感心してみた。
いや、もらってきたときと同じキャリーなんだけど、麟太郎はパンパンに詰まってる感じ。体重落ちてまた2.95kgしかなくて、身体は大きくなったけど今はむしろ痩せていて、それでも仔猫の頃に比べると大きくなったなあ、と思った。


麟太郎が帰ってくるのは、短く見積もっても来週の前半頃。
帰ってきたら、どうしてくれよう。