怪ダレ5【悪霊の教科書】

あかね書房より刊行している児童書怪談「怪異伝説ダレカラキイタ? 悪霊の教科書」*1が、ようやく完成。
見本誌をいただく。
今回は完成までにたっぷり時間を掛けたこともあって、気付いたら11月になってました(^^;) というか、恐怖の教室*2以来、一年半ぶりの新刊。
その間、既刊各巻は着々と版を重ねていたようで、図書館版*3に、また重版掛かってました。
今回も大人げない怖い話と、岩清水さやか先生の不安を煽るイラストがマッチして、いい感じに怖い本ができました。


「子供というものは、親、大人の目が届かないところで、やっちゃいけないを言われたことに精を出す」
自分の子供時代を思い返してもそうだったし、子供の勇気というか蛮勇というか、「自分だけは大丈夫」という出所の分からない自信みたいなものは、時代が変わっても大して変化はしてないだろう、と。
むしろ、「親や大人や社会が守ってくれる」「自分が酷い目に遭ったなら、それは自分の不注意が悪いのではなく、加害者が悪いのだ」という意識は昔よりずっと強くなっているんじゃないか、とも。
「被害者に落ち度はない、悪いのは加害者だ。だから加害者に向かって強く出られる、被害者になったほうが何かとお得だ」
そんな考え方をしている輩すら珍しくない。酷い目に遭っても賠償金を取ればむしろトクをする、みたいな考え方の親を間近に見て育てば、子供だって同じように考えて当然だし。
でも、死んじゃったらその賠償金は自分のモノにならない。金をいくら積まれても取り戻せないものと引き替えに、若い頃から残りの人生を泣き暮らすようなことはしてほしくない。
派手な事故や大病を患わなくても、例えば家の中で階段から転げ落ちただけでも、道路で仰向けに転んで頭を打っただけでも、人間というのは案外簡単に死んじゃうものだ。
「でもまさか、それは僕にだけは起きない」
と、ぬくぬく守られている子供ほど、自分の強運を過信しがちなわけで、自分で自分を守ることを放棄する子供は長生きできない。


怪ダレは子供のための怪談・噂集である。
子供だましはしない。大人用の怪談本と同じ作法で書かれている。不思議話も怖い話もいろいろ詰め込んだ。
怪ダレ5は、恐怖箱が誇るガチ怪談の雄・雨宮淳司とつくね乱蔵のお二人も参加している。
子供相手でも手抜きなんかしないのである。大人として、大人げなく子供を怖がらせたいわけなのである。
恐怖――「恐ろしいものから自分を遠ざけ、自分の身を未然に守る」という習慣を身につけるための予行演習としての怪談本、実用品としての怪談本。
「怪異伝説ダレカラキイタ?」は、そういう一冊です。
親御さんは「怪談本なんて!」と顔を背けるかもしれないけど、親御さんの目が届かないところで、自分で自分を守れる子供達を育てるための実用書として、怪談本をどうぞ。

あかね書房【悪霊の教科書】
2010/11/20発売

http://akane.bookmall.co.jp/search/info.php?isbn=9784251044457

監修/著者 加藤一
執筆協力 雨宮淳司、糸井賢一、上原尚子
     つきしろ眠、つくね乱蔵、久田樹生
     深澤夜、矢内りんご
画家   岩清水さやか

*1:第五集

*2:第四集

*3:上製本