Androbookの覚え書き

すったもんだのIS03もようやくセットアップが一段落し、「使い込む」というフェーズに突入した。
さてここで、IS03購入以前から、ずーーーーーーーーっと試してみたかったツールに挑戦してみることにした。


竹の子書房では主にiPhoneiPadiPod touchでの閲覧を念頭に置いたPDF版電子書籍を作っている。
PDF版のメリットは、グラフィックデザインを優先できる、オーサリングソフトとして市販の(そして使い慣れた)InDesignを利用できる*1、という点が大きい。それと、縦書き、ルビ・圏点、柱などの表示が自由である、デザインが崩れないなどなど。
いずれePub3.0が策定されればそちらにシフトしていくのだろうなと思わなくもないが、現状では「本を作る人」としては現行のePubにはあまり満足できないので、選択肢からは外している。


PDF版電本はPDFが表示できるなら、そのままAndroid機でも閲覧可能なはずなのだが、今のところしっくりくるPDFリーダが見つからない。
そこで、@fukuyuki氏開発によるAndroidアプリ自動生成ツール【Androbook】によるAndroidアプリ版電本を作ってみることにした。


従来のiOS向けPDF版では、「iPhoneユーザーが最大派閥である」という前提に立ち、iPhoneでの閲覧に最適化する、という考えで作られている。判型は960×640/72dpiのRetinaフォーマット。iPadで1頁表示すると文字が大きくなりすぎるのだが、i文庫HDで見開き表示するとぎりぎり見られなくもない大きさになる*2
作業の手間を減らすということで、これまでiPhone/iPad/touchは1個のファイルで全ての端末に対応、ということにしてきた。


IS03iPhoneと同じく960×640の液晶を持つが、アプリなどでいろいろ制限を受けたりするので、実際に960×640の全てをアプリの有効表示画面で使えるわけではないらしい。


あれこれいろいろ試してみたところ、IS03で頁表示後にズームアウトせずに読めるサイズは、【373×249px/28dpi】という微妙な数字になった。
ただこれだと、960×640/72dpiのiOS向けPDFファイルフォーマット用のオーサリングデータが、そのまま流用できる。
Androbookでは、連番JPEGをZIPに固めたもの+48×48のPNGファイルをアイコンとして利用するのだが、InDesignでは完成済みの頁を出力する方法としてJPEGが選べる。このとき、判型は変えられないが出力dpiは変えられるので、基本72dpiを28dpiまで下げると、天地373×左右249で出力したJPEGが出力できる。


これを全頁分出力してZIPで固め、アイコン付けてAndroid向けアプリにしてみたのが、これ。

そのままapkファイル(アプリ)がDLできるので、Androidユーザーの方はQRコードリーダーで読み取ってDLをお試しいただいて、ご感想などコメント欄にお寄せ下さい。
Androbookそのものがまだ開発が始まったばかりのα版に近い状態のものであるのだが、それを置くにしても、オーサリング済みの資産をそのまま使ってAndroid版電本が作れるというメリットは大きい。
また、iPhone向けに調整された「25字×10行」の竹の子フォーマットだと、なんとかルビも読めなくもない。作り直さないで済むのはありがたい。もう37冊も出てるし、全部ゼロから作り直すのは絶対嫌だったのでw


ともあれ、ここら辺りが解決できると、Androidマーケットに電本を載せることができるようになる。現状のPDF無償版は今後も無償で配信するとして、その他の版をその他のインフラに、というか何かと審査がうるさいiTunesを使わずにAndroidマーケットに作品配信ができるようになるのは、大きいと思う。
絶版本や、絶対に正気の出版社じゃ売ってくれないような本wを売る道も開けるし。


Androbookは現状では480〜960px、ZIPの最大サイズは9MB前後まで対応しているらしい。今回、36000キロの瞳/Android版は頁サイズが違うものが3種類作られたのだが、ジャストフィットの最終版のファイルサイズは2.5MB。PDF版が2.4MBなので、十分許容範囲。
表紙以外はシンプルな造りが多い竹の子書房の本の中にあって、36000キロの瞳は総頁数54頁、イラストは10点以上……と、若干ヘビーウェイトな造りになっている。これは近々予定している別の本のための技術試験を兼ねているためでもあるのだが、次は「何ページくらいまで対応するか」なんかについても実証してみたい気がする。
350P超の「麟太郎のこと」が、一冊で出せるのか分冊しないとダメなのかは気になるところ。

*1:極論すればInDesignではなく、よくあるPDF生成ツールでも問題ないといえばない。

*2:それでもまだ大きめ