東京都青少年健全育成条例改正案についての都議会質疑

青少年健全育成条例改正案について、最大会派の都議会民主党が賛成に転じ、民主、自民、公明の賛成多数で改正案が可決の見通しとなった。共産党生活者ネットワーク・みらいは反対する方針。


断片情報が飛び交っているので、一次ソースを当たっておく。

平成22年第4回東京都議会定例会 会議録〔速報版〕
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2010-4/d5140001.html

速報版:全項目
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2010-4/d5140201.html

以下、議論/考察のための材料として、関連個所のみを抽出。

酒井大史(民主)
 次に、青少年健全育成条例について伺います。
 都議会民主党は、青少年の健全育成を達成していくために、保護者や学校、地域社会、行政が青少年の成長をしっかりと支援する教育や相談事業等のサポート、性的被害に対する保護、回復といった総合的な取り組みが必要だと考えています。それは、メディアが発達し、迷惑、勧誘メールや有害サイトも多く存在する情報社会で、青少年が正しい情報を取捨選択して取得し発信するといった、情報社会における倫理や法の理解と遵守、危険性の理解を学ぶとともに、情報を活用する能力を高める支援をすることです。また、青少年の発達段階に応じて、病気も含めた性に関する知識を理解させるとともに、人を尊重する健全な性の考え方に基づいて望ましい行動をとることを身につけ、自己決定能力をはぐくむことを支援することです。
 都内公立学校において、情報リテラシー、モラル教育や性教育を教える上で、専門家や医師など外部人材を招聘し、子どもたちを守るための教育を充実させていくことが必要だと考えますが、都教育委員会の見解を伺います。
 一たび、性的虐待や、それに準ずる心身に有害な影響を及ぼすような子どもの権利の侵害が起きてしまうと、回復には非常に時間がかかります。虐待は、子どもに対し、大人になってもいやされない傷を抱かせる重大な犯罪です。都は、虐待を受けた子どもに児童精神科医や心理職員などによる心のケアを行っていますが、本当に一人一人に向き合い時間をかけるケアには至っていません。こうしたケアの充実については、さきの定例会でも質問し、今回も拡充を強く求めているところです。被害に遭う子どもを一人でも少なくするために取り組むべきだと考えます。
 今回の条例改正案を含む都の取り組みによって、都は、子どもたちの権利を擁護するため、都民に対する普及啓発にどう取り組み、青少年の性的被害をどのように防いでいくのでしょうか、都の見解を伺います。
 都における図書類の不健全図書指定は、現在、青少年健全育成審議会において、自主規制団体からの意見聴取を行った後、出版関係者も含めた委員の皆さんが一冊一冊を青少年に見せるべきではないものかどうかを審議、その結果を踏まえて都が不健全指定を行っています。指定に当たっては、意見聴取と出版関係者が審議を行うことで客観性を担保するものであり、改正案があいまいで意味不明だと懸念を抱く方々に対する保障にもなるため、今後、審議会の運営をより丁寧に行っていくことが重要と考えます。また、個別指定は、東京の地場産業である出版、販売業界の産業振興のためにも有効な制度です。そのため、都がページ数や全体の分量という一定の基準をもって自動的に不健全図書類を指定する包括指定の導入は慎重であるべきと考えます。
 今後も、都における不健全図書の審議は個別指定方式で行うべきと考えますが、都の見解を伺います。
 前回否決された条例改正案において規定されていた青少年性的視覚描写物の蔓延の抑止は、青少年への閲覧などを規制する健全育成の目的を超えた、成人も含めた図書類に対する販売規制であり、表現の自由を侵すものではないかといった懸念が多くの方々から提起されました。議会においても大きな議論となり、我が会派議員からも疑義が示されました。
 今回の条例改正案では、この青少年性的視覚描写物の蔓延の抑止に関する条文がすべて削除され、青少年の健全育成の範囲が限定されましたが、多くの方々からの懸念を都はどのように受けとめたのか、都の見解を伺います。
 都議会民主党は、最も憎むべき犯罪である強姦や児童買春を不当に賛美して描いている図書類について、それらを青少年が容易に読むことはよくないと考えています。また、今回の条例改正に関して、表現の自由を殊さら強調されている方もおりますが、私は、表現の自由を主張する者は、その表現に対して社会的責任を負わなくてはならないと考えています。しかしながら、一部出版社から不健全指定となる図書類が発行されている現状があるため、それらの図書類が青少年の健全育成を阻害するか否かを審議することが必要とも考えています。
 今回、都は、現状をどう認識し、現行条例での対応ではなく条例改正を行わなければならないと考えているのか、都の見解を伺います。
 各業界も青少年の健全育成のために自主規制に取り組んでいます。私たち都議会民主党も、出版、販売関係だけでなく、映画や放送、映像ソフト、家庭用ゲームソフト、コンピューター用ソフトの倫理団体や審査機関の取り組みを視察し、各業界の取り組みに対する見識を深めてまいりました。
 出版、販売関係業界は、青少年に見せたくないコミックに対する自主規制の徹底を行うと述べるとともに、映画業界等で行っているレーティングのような新たな自主規制の検討を始めています。都は、出版業界と日ごろから十分な連携をとるとともに、業界の取り組みへの支援も行うべきです。青少年の健全育成のために、都は出版など関係業界の自主的取り組みを尊重し、ともに協力して取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。
 平成十一年に成立した児童買春・児童ポルノ禁止法における都の責務は、児童買春や児童ポルノの頒布などの行為を未然に防ぐための教育及び啓発、行為の防止に資する調査研究の推進に取り組むことです。
 今回、児童ポルノの根絶に向けた都の取り組みを改めて都条例に規定する上で、国会において議論が継続している、新たに冤罪を生むのではないかと我が会派が懸念していた単純所持の規定を見送ったことの理由について、都はどのように考え、結論に至ったのか、都の見解を伺います。




青少年・治安対策本部長倉田潤
 まず、青少年の性的被害を防ぐための都の取り組みについてであります。
 都においては、警視庁等関係機関と連携し、性的被害を含めた青少年の犯罪被害防止のため、防犯リーフレットによる啓発や小中学校のセーフティー教室における犯罪被害防止教育等を行うとともに、児童ポルノにつきましては、関係団体と連携し、STOP児童ポルノ官民合同会議を設置して、被害防止に向けた普及啓発などを行ってまいりました。
 今回の条例改正案におきましては、児童ポルノを根絶するための環境の整備に努める都の責務を規定しており、児童ポルノの根絶に資するさらなる広報、啓発活動を通じ、児童ポルノの被害防止を図ることとしております。
 さらに、青少年が児童ポルノの対象とならないよう、また、十三歳未満の青少年が、水着や下着姿等で扇情的な姿をとらされる写真集等の対象とならないよう、保護者が責任を持つ規定を置くほか、事業者に対しても、青少年がこのような写真集等の対象とならないように努める責務を置き、青少年が性的対象として扱われることによる心身への有害な影響の防止を図ることとしております。
 今後とも、関係機関等と連携し、青少年の性的被害を防止し、青少年がその尊厳を保って成長できるように努めてまいります。
 次に、不健全図書の個別指定方式に関する都の見解についてであります。
 都においては、条例制定以来、不健全指定基準に照らして個別の図書類を審査し、第三者機関である青少年健全育成審議会に指定の是非を諮った上で指定を行う、いわゆる個別指定制度をとることで、慎重かつ公正性、客観性の高い指定手続をとってきたところであります。
 一方、包括指定制度は、区分陳列の対象となる図書類について、性的描写の分量のみによる基準に基づいて判断する制度であり、その判断は、図書類販売業者が行うものであります。これにより多種多様に販売される図書類を幅広くかつ迅速に区分陳列の対象にできる一方で、図書類販売業者の取り組み次第で区分陳列の取り扱いにばらつきが生じ得るものであります。
 都としては、現在の個別指定制度は、図書類発行業者等が自主的に取り組む表示図書制度と相まって有効に機能しているものと考えており、包括指定制度を導入することは考えていません。
 次に、蔓延の抑止に関する条文についてであります。
 さきの改正案におきましては、青少年の健全育成を図る観点から、青少年をみだりに性的対象とする図書類を、青少年が容易に閲覧することのないよう、その蔓延を抑止するための環境の整備に努める都の責務を定めていました。
 しかし、蔓延の抑止という文言が、青少年にとどまらず成人に対する流通や、そのような図書類の創作自体の規制を企図しているように見えるとの意見が、これまでの議会での議論などで示されたところであります。これを踏まえ、蔓延の抑止に関する規定を設けないこととしたものであります。
 次に、都の図書類についての現状認識と条例改正の必要性についてであります。
 現行基準の著しく性的感情を刺激しとは、閲覧する子どもの性的感情の刺激度合いに着目するものであります。
 一方、強姦や児童買春、近親相姦等をあたかも社会的に是認されているものであるかのように描写したり、これらの性行為が特別なものではなく、通常あり得ることとして受けとめられるほど必要以上に詳細に、または執拗に反復して描写する漫画等は、閲覧する青少年に対し、そのような性行為に対する抵抗感を著しく弱め、健全な性的判断能力を著しく妨げるおそれがあるものであります。
 しかし、このような漫画等は、必ずしも性的感情を刺激する度合いが強いとは限らず、現状においては、青少年が容易に手にとることができる一般書棚に陳列されています。このため、そのような漫画等については、性的感情の刺激度合いに着目した現行基準とは別に新たに基準を設けて、区分陳列の対象としていくことが必要であると考えたものであります。
 また、このような漫画等に関する区分陳列への取り組みを進めるに当たっては、従来と同様、関係業界の自主的な取り組みが重要であります。
 しかしながら、現行基準に基づいて、平成十六年度以降現在まで不健全指定された図書類の約五一%は、自主規制団体に属さない、いわゆるアウトサイダーの出版社により発行されたものであります。このようなアウトサイダーについては、積極的な自主的取り組みが期待できないものであることから、自主規制団体による自主規制だけでは十分ではありません。
 これらのことから、条例を改正し、青少年の健全な性的判断能力の形成を妨げるおそれのある漫画等についての区分陳列を、実効性をもって推進しようとするものであります。
 次に、出版等関係業界の自主的取り組みについてでありますが、都では、条例制定時より、図書類発行販売業者等による自主規制を基本とし、自主規制から漏れた中でも、著しく悪質なものに限って都が不健全指定を行う仕組みをとっており、出版等関係業界の自主的な取り組みを尊重してまいりました。このため、出版、販売業界において、青少年への図書類の販売等に関する適切な自主規制が徹底されること、さらに他のメディア業界の取り組みを踏まえた新たな取り組みを検討することは望ましいことであります。
 今後とも、関係業界による自主的な取り組みの成果が上がるよう、図書類の実態に関する意見交換や、都の取り組みに関する情報提供等をきめ細かく実施することで、関係業界と協力し、青少年の健全育成に努めてまいります。
 次に、児童ポルノの根絶についてであります。
 さきの改正案においては、何人も児童ポルノを所持しない責務を有するとの規定を設けていましたが、児童ポルノの所持を処罰する規定は設けていませんでした。しかし、国の児童ポルノ法改正論議と相まって、さまざまな議論があったところであります。
 こうした経緯を踏まえ、今回の改正案において、児童ポルノの根絶に向けた責務を設けるに当たっては、都が教育、啓発活動等を行うのみならず、都民みずからも児童ポルノを根絶することについて理解を深め、さまざまな取り組みを積極的に行うことが重要であることから、このような自主的な取り組みを進める努力を都民に求める規定に改めたものであります。
 最後に、青少年のインターネットの適切な利用に向けた民間事業者等との連携についてであります。
 都においては、これまでも、インターネットの利用に関する青少年の健全な判断能力の育成を図るため、事業者とも連携して、フィルタリング等に関する普及啓発や教育を行ってまいりました。
 改正案においては、青少年のインターネットの利用により、青少年の犯罪被害等さまざまな問題が生じている実態を踏まえ、関係事業者や関係機関に対しフィルタリングの性能及び利便性の向上等に努めることを求める規定を置いたところであります。
 これを踏まえ、都の相談窓口等を通じて把握した青少年のインターネット利用に関する被害やトラブルの実態について、関係事業者等に対し適切に情報提供を行うことなどにより、事業者の取り組みの実効性が高まるよう連携協力に努めてまいります。




高橋かずみ(自民)

 次に、青少年健全育成条例の改正についてお伺いいたします。
 本改正案は、インターネット上の有害情報の蔓延や、子どもへの強姦などを描いた漫画などを子どもでも容易に手にとることができる現状から子どもを守るため、本年第一回定例会において提案されたものであります。
 我が党は、子どもを取り巻く環境を改善することを目的とした本改正を全面的に支持しましたが、残念ながら継続審査となり、さらに、その目的を実現すべく公明党とともに提出した修正案も第二回定例会において否決されることとなりました。
 しかし、その後もインターネットに関連する子どもの被害が頻発するなど、子どもを取り巻く環境に依然として大きな問題があり、一刻も早い改善が望まれる状況にあります。
 こうした中、改めて青少年健全育成条例改正案が提出されたところでありますが、幾つかの団体から、表現の自由を侵害するといった反対の声が上がっています。
 そもそも、子どもに見せたくないとだれもが思うような漫画等を成人コーナーに区分陳列して販売することは、最高裁判決でも合憲とされており、決して表現の自由を侵害するものではありません。尊重すべきは次代を担う子どもたちの育成であります。改めてこのことを肝に銘じ、都議会として結論を出さなければなりません。
 そこで、改正案提出に当たって、知事の基本的な考え方について伺います。




石原慎太郎都知事

 次いで、青少年健全育成条例改正案提出に当たっての基本的な考え方についてでありますが、子どもたちを取り巻く状況を一刻も早く改善することが必要であるということは、ご指摘のとおりであります。今回の条例改正案も、さきの改正案について議会の議論を聞きまして、わかりやすく明確になるようにしたものであります。
 子どもを守ることは、私たち大人の、ひいては社会の責任でありまして、子どもを取り巻く現況の改善にこれ以上猶予の余地はないと思います。改めて、ゆえにも、条例改正を提案したものであります。
 私の体験を踏まえて申し上げますと、先般、オリンピックの問題で何度かドイツを含めての北欧に参りました。北欧というのは趣味が少ないせいか非常に性的な開放が進んでいますが、こういった性風俗に関する商品を売っている雑誌、本も含めて、あるいは映像も含めて、これはかなり日本に比べると進んでいるというか、驚くほど開放的でありますが、子どもを対象とした変質的な製品は全然ないですな。これはやっぱり、ある意味で向こうの宗教がしっかりしているから、宗教に基づいた倫理観がはっきりしているというか、私はさっきも総監に申し上げましたけど、日本とヨーロッパの対比というものを、向こうの担当者に意見を聞いて、向こうがどういう原理原則、どういう信念で子どもに関するこういう出版物、映像というものを禁止しているかということを対比的に説明することで、わけのわからぬ反対をしている、わけのわからぬやからにも説得が及ぶんじゃないかと思っております。




畔上三和子(共産)
 最後に、青少年健全育成条例の改定案についてです。
 前回の改定案は、広範な都民、国民の皆さんと、漫画家、作家、出版界、そして法曹界などからも強い反対の声が上がり、否決されました。今回、再び提出された改定案は、行政による恣意的な判断によって図書規制の対象を拡大し、創作活動の萎縮をもたらす危険、インターネットや携帯電話について、家庭教育に行政が介入する危険が強く、前回案と本質的に変わらないものです。現に知事自身が、実質的には前と同じと発言しているではありませんか。
 知事、多くの批判を浴びた問題点を反省していないのですか。議会が否決したものと実質的に同じ条例案を再び出すのは、都民と議会の意思を無視するということではないですか。
 さらに、今回の改定案では、規制の基準に刑罰法規を持ち込んだために、青少年健全育成条例のいわゆる淫行処罰規定までが適用され、青少年の性や愛を描いた作品がどこまで規制されるのかわからなくなります。また、不当に誇張した描写という規制基準も、漫画表現を強く萎縮させることになります。これでは、創作、表現活動を前回改定案以上に抑制することになるではありませんか。
 知事は、表現を拘束するわけではない、目に触れないところに置けといっているだけだと発言しました。しかし、漫画家の皆さんは反対表明で、新たな規制により作品が一般の販売場所から撤去されるのではないかと心配すること自体が創作活動の萎縮につながるんだと訴えています。新聞の社説も、産業でもある漫画は、流通にかかる圧力が表現にはね返りやすいと指摘しています。だからこそ、作者も読者も強く反対しているのです。
 そもそも表現の自由には、発表、出版の自由の保障が不可欠です。知事の見解を伺います。
 知事は、所信表明で、目に触れさせてはならない漫画が店頭に置かれている状況の改善は猶予は許されないと強調されました。しかし、日本PTA全国協議会が実施したアンケートでも、父母が望んでいるのは自主規制が第一で、有害図書等の範囲を現状より拡大するは最下位でした。規制第一ではなく、中高校生が自分で考え、判断する力をいかに培うかにこそ力を注ぐべきではありませんか。
 今回の改定案に対し、日本漫画家協会日本ペンクラブ出版倫理協議会、日本弁護士連合会を初め、広範な皆さんがこぞって反対しています。先ほど、知事は反対している方々を、わけのわからぬ反対をしているやからと発言しましたが、とんでもない暴言です。撤回すべきです。
 知事、反対の声を真摯に受けとめ、改定案は取り下げるべきです。知事の答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。




石原慎太郎都知事

 次いで、青少年健全育成条例の改正案の提案についてでありますが、大人の責任で子どもたちを守っていくという条例改正のねらいは、今回の改正案においても変わっていません。あなたはどういう家庭か知らぬけど、自分の子どもにあんなものを読ませられるんですか。(発言する者あり)
 これまでの議会での議論や、関係各方面の意見などを踏まえ、わかりやすく明確に改めて提案したものでありまして、都民と議会の意思を無視するようなものでは毛頭ありません。
 この改正案は、インターネットや図書類に関する環境を改善するためのものでありまして、子どもを守るためにぜひとも必要であります。改正案の取り下げは全く考えておりません。




青少年・治安対策本部長倉田潤

 まず、創作、表現活動への影響についてであります。
 いわゆる淫行処罰規定も含め、刑罰法規は社会生活において違反しないように努めるべき、最も明確で社会的合意の確立した規範であり、対象が不明確との指摘は当たらないと考えます。
 また、不当に誇張するように描写とは、例えば強姦の場面を全編大部分にわたり、必要以上に延々と微に入り細に入り描いたり、執拗に反復して描いたりし、そのため、読み手である青少年のこれらの性交等に対する抵抗感を弱めてしまうようなものであり、漫画において当然に伴う誇張的な描写、いわゆるデフォルメ一般について述べているものではありません。したがって、創作、表現活動を抑制するようなものではありません。
 次に、発表、出版の自由についてでございますが、条例が定める仕組みは、青少年の健全な育成を妨げるおそれのある図書類を青少年の目に触れないよう区分陳列することであって、漫画等の発表の場をなくしたり出版できなくしたりするものでは全くありません。
 また、同種の仕組みは、長野を除くすべての道府県の条例に規定されており、岐阜県の同種条例に係る最高裁判決においては、このような仕組みについて、憲法第二十一条第一項に違反するものではないと判示しています。
 この区分陳列の仕組みは、条例制定以来、五十年近く第三者機関である青少年健全育成審議会への諮問などの慎重な手続を経て運用されており、今回の改正によってもこの慎重な運用に変わるところはございません。
 最後に、中高生の判断能力の形成についてであります。
 まず、ご指摘のアンケートは、全国のPTAとしての図書類に関する取り組みのあり方についての設問であって、そもそも東京都の条例改正について尋ねたものではありません。
 他方、今回の条例改正については、都内の多くのPTA関係団体から条例成立に向けた要望をいただいています。
 なお、都以外の道府県では、性的描写の分量による基準に沿って区分陳列の対象を図書類販売業者が判断する包括指定制度を導入しており、これらの道府県の保護者を含めたアンケートにおいて、業者による自主規制の徹底や強化を望む声が多いのは当然であります。
 さらに、このアンケートは複数回答であり、ご指摘の有害図書の範囲の拡大を求める回答のみならず、条例による規制を求める回答も含めると三六・二%に上るものであります。
 中高校生が自分で考え、判断する力を培うことは重要ですが、その力が培われる前に、大人が知らないところでその判断能力の形成を妨げるおそれのある図書類に触れないようにするため、条例改正を提案するものであります。




畔上三和子(共産)

まず、青少年条例問題について、知事に二問、再質問します。
 第一に、知事は記者会見で、わけのわからない言葉を削除しましたが、実質的には前と同じと述べました。ところが答弁では、条例改正のねらいは変わっていないと、ねらいにすりかえました。
 前回の改定案が否決されたのは、行政の恣意的な判断で漫画やアニメへの規制を拡大し、創作表現の萎縮をもたらすという問題を抱えていたからです。今回の案もこの本質は変わらず、さらに規制が拡大されます。口では幾ら否定しても、条文そのものは恣意的な規制ができるようになっています。
 国旗・国歌法が制定されたとき、小渕首相は国民に義務づけないと答弁しましたが、現実には、この法律ができたことによって、石原知事は学校現場での日の丸・君が代の強制を激しくしました。これと同じことが行われる危険が強いのです。知事、いかがですか。
 第二に、日本漫画家協会日本ペンクラブ日弁連などがこぞって反対しているのですから、知事は条例改定を強行するのではなく、みずからこれらの方々とひざを交えて議論する場を設けるべきではないでしょうか。知事、お答えください。


青少年・治安対策本部長倉田潤

大人の責任で子どもたちを守っていくという条例改正のねらいは、今回の改正案においても何ら変わるものではございません。しかし、これまでの議会での議論や各方面から示された意見なども踏まえ、規制対象の明確化、法律との関係の明確化などを図り、改めて提出したものであります。
 この条例に定める区分陳列の仕組みは、条例制定以来、第三者機関である青少年健全育成審議会への諮問などの慎重な手続を経て運用されており、恣意的な運用をしているものではございません。今回の改正によってもこの慎重な運用に変わるところはございません。
 条例改正案に関する説明等でございますが、これまでにも各団体のご意見は承ってまいりました。条例の運用に当たりましては、施行前に必要に応じて丁寧に説明してまいります。

2010年12月7日の都議会議事録(速報版)のうち、青少年健全育成条例改正案に関する質疑は上の通り。