ブーメランの典型例

民主がマニフェストを見直すそうなので、昔なんて言ってたかを発掘したものを並べてみる。

民主党:岡田幹事長「小泉マニフェスト2005と自民党政権4年間の総点検」発表
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16700
※ソースは民主党のホームページ。

 岡田克也幹事長は30日夕、静岡市内で記者会見し、「小泉マニフェスト2005と自民党政権4年間の総点検」を発表。郵政民営化に代表される「小泉改革」が看板倒れだと指摘するとともに、「消えた年金」「消された年金」問題への対応は明らかに公約違反であるとの見解を述べた。

 また、医療に対する地域住民の不安は増すばかりであり、待機児童が4万人、都市部では今も急増中という状況からも、医療や子育て支援策についての自民党の公約が進展したとは言いがたいとの考えを示した。

 岡田幹事長はこのほかの項目についても公約違反を報告したうえ、「4年前に約束したことが果たされていない。4年前に約束したことと、いま言っていることが全くちがう。その両面において、明日発表される自民党マニフェストは入り口から信用できないと言わざるを得ない」と強調。「マニフェストは国民に対する約束だ。この4年間をみるかぎり、ほとんど実現できていない。その部分をきちんと説明するところから明日の麻生さんの会見が始まる」と述べた。

 岡田幹事長は、記者の質問に答えるかたちで「マニフェストというものは期限を明示して財源の裏付けを持って約束をするのが基本だ」と、改めてその性格を示し、「自民党マニフェストという名前を使っているかもしれないが、実際は昔ながらの古い形の『公約』の域を脱していない」とも指摘。

 任期の間に大半を実行するという話でないならば、政権政策の名に値しないとしたうえ、「具体的な政策を期限、財源について説得力を持って語るマニフェストを期待したい。そうしないと政策論争にならない」と語った。

 会見の司会は榛葉賀津也静岡県連代表(参議院議員)が務め、福山哲郎政策調査会長代理(参議院議員)が同席した。


上記は、2009年7月30日付け、つまり2009年衆院選の選挙戦のただ中にあって、民主党岡田幹事長(2009)が、自民党の公約(マニフェスト)について述べた批判であって、2011年の民主党自身のマニフェストに対する批判ではない。
続いてこれ。

自民党による民主党マニフェストに対する批判
プロポーズ編(2009)

ラーメン編(2009)


2009年衆院選当時、自民党民主党に対して批判CM=ネガティブ・キャンペーンをぶつけてきた。
この「相手の不備を突く批判CM」というのは、アメリカの選挙では一般的で、スキャンダルを掘り起こしたり政策の一貫性の不備を突くことで不信感を煽るという効果を持つものなのだ。
ただ、2009年の衆院選ではというよりも日本では「悪あがき」「潔くない」という評価のもの、仕掛けた側の悪印象が先行してしまい、ネガティブ・キャンペーンCMの内容そのものは顧みられることがなかった。
今回改めて内容を見ればその後1年半の民主党政権の迷走、マニフェストに対する取り扱いなどを正確に予見していた、と見ることができる。
次に、2011年1月12日、つい先週の民主党岡田幹事長(2011)の会見。

民主幹事長、マニフェスト見直し表明へ  :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E3E0E2E2878DE3E0E2E3E0E2E3E39C9CE2E2E2E2;at=DGXZZO0195166008122009000000

 民主党岡田克也幹事長は13日に千葉市内で開く党大会で、2009年衆院選マニフェスト政権公約)の見直し作業に着手する意向を表明する。12年度予算編成に間に合わせるため、党政策調査会を中心にマニフェスト修正のための組織を設け、編成作業が本格化する夏までに結論を出す考えだ。12日昼の党正副幹事長会議でこうした方針を確認した。

 09年の(民主党の)衆院選マニフェストは「予算の総組み替え」や歳出削減で16兆円余りを捻出する方針をうたったが実現できなかった。目玉の子ども手当も、当初予定の月2万6千円の半額にとどまった。岡田氏はかねて「前提が変わったり、与党になって分かったりしたこともある。次期衆院総選挙、折り返し地点に来ているのでしっかりと見直す」と表明していた

記者から、マニフェストを見直すなら解散するのが筋だと野党が主張していることに質問が及ぶと
自民党さんご自身批判したマニフェストではないか。文句を言うほうこそ筋違いである」と岡田氏は独自の理論を展開した、らしい。


……( Д )
意味が分からない人のために、わかりやすい説明を拾ったので紹介。

自民「そんなマニフェスト無理に決まってんだろjk」
    ↓
民主「言われた通り無理だったので変えます^^」




自民「納期一カ月でいけるの?無理じゃない?」
民主「いけます!確実です!」
国民「じゃあ、それでやってみてよ」


斯くして国民は民主党に投票、民主に政権交代した、が……。
それから一カ月後。


民主「やっぱり無理でした^^」
自民「いや、だから無理って言ってたじゃん……。いったいどうすんのよ!」
民主「自民さんご自身、無理だと判断した納期ではないか。文句を言うほうこそ筋違いである。」


……(゚д゚lll)
現在、「嘘を付いた民主が悪い、俺たちは騙された!」という被害者意識からの民主批判が増加中なのだが、民主の嘘を事前に見抜けずに信用した人は、自分を騙した民主を恨むだけでなく、騙されるような自分を叱る、ということもすべきだと思う。
それをしなければ、今後何度も甘言で騙され、その都度【自分達は可哀想な犠牲者。いつか幸せにしてれる白馬の王子様が現れる。次の人はきっといい人】と繰り返し騙される。
世間知らずの箱入り娘が結婚詐欺に引っかかるのと、まったく同じ図式だ。


この期に及んで、「鳩山がダメだった」「菅直人がダメだった」と腐して、「まだ小沢一郎がいる」または「岡田克也がいる」「前原誠司ならなんとかしてくれる」という忘れっぽい人がいるので、一応2009年の岡田幹事長が何を言ってたかをメモってみた。
小沢一郎は2007年の参院選/2009年衆院選では民主党マニフェストとして農家の収入保障(農家保護)をぶち上げたのだが、民主党は現在TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)によって農業関税撤廃*1に向かいつつある。
また、前原誠司は「相手の言い分を鵜呑みにしすぎる政治家」で、永田偽メール事件では故永田寿康衆院議員の主張を精査せずに鵜呑みにした結果、責任問題に発展して代表辞任に追い込まれている。
この辺りはネガティブ・キャンペーンを企図したものではなく、「かつてどういう政治的公約を守れなかったか」或いは「かつてどのような政治的失策を犯したことがあったか」という事実の列挙であり、そこからはまた個々の有権者がそれぞれに判断を下すべきと思う。





2009年当時の自民党CMで歌が良かったのでもうひとつ。

ブレる男たち(2009)


興味深いことにブレる男たちのうち、2人までが首相就任済み。残りは小沢一郎岡田克也

仮に民主党がこの先も衆院解散せずに党内で権力たらい回し*2した場合、小沢一郎もしくは岡田克也が次の首相になる可能性は高い。小沢がおとなしくしていて、なおかつ民主に残るなら岡田首相だろうか。
小沢が民主を割ることができた場合(小沢と一連託生する覚悟が小沢派議員にあるとしたら)、日本の政治は三国鼎立状態になるわけなのだが、曹操劉備孫権ではなく、三国のうちのひとつを董卓が統べるような状態という。民主を割られる側はもちろん、野党だって小沢董卓と組もうっていうのはリスクが大きいわけで、解散総選挙が行われない限り(行われても)政治的混乱解消されない。
2013年の衆参同時選挙まで、今の混乱はまだ続くんだろうかなー。

*1:日本は人件費が高いので、関税で保護されない農業分野は競争力で負けて壊滅する、と言われてきた。小沢一郎及び民主のマニフェストは、農家を保護するというものだった

*2:これも民主が2007年の安倍政権以降の安部、福田、麻生政権に対して行った批判を、正確にトレースしている(^^;)