震災雑感、そしてデマの訂正

3/11からこちら、情報収集と知人の安否確認、そして即応情報の発信と再配信に追われていた。
震災直後、はてなダイアリーは非常に繋がりにくい状態に陥り、現在も一部の画像が表示されない状態になるなど、非常に不安定だったため、主な情報発信はTwitterを利用している。


もしまだ校了していなかったら、やはり動揺して何も手に付かなかったかもしれない。ちょうど3/10で仕事がはねていたこと、そして自分の被害が今の所軽微であること、超心配性で真田さん体質な「こんなこともあろうかと」が疼くこと、静岡県人の遺伝子がそう囁くことなどから、「今必要なこと」「今できること」「自分の知識、体験、及び子供の頃から【そうせよ】と躾けられてきたこと」などから、幾つかの必要情報を発信してきた。


安全な所から余計なことを、とお叱りを受けるかもしれないが、今安全でない人を助けるのは安全な所に運良く立てた人間の義務だ
これから、物資、援助や復興に必要な資金、気力、いろいろなものが必要になってくるが、そのとき「少しでもマシで済んだ」「何もなくて済んだ」人間が動かなくてどうするんだ。そう思う。
しない善よりする偽善
今は何もしないのが最善、専門家に任せておいて一般人は手出しをするな。
それは聞こえがいいし、賢く冷静であるように思える。
そりゃ、今義憤に駆られた一般人ボランティアが福島第一原発に乗り込んでいってもできることなど何もない。
それ以外でも震災後のボランティアが受け入れ準備が何もできていない場所に乗り込んでいっても、誰も指示出しができない状況下では、現地の支援物資を食いつぶすお荷物にしかならない。
だから、今は動く時ではないが、動かなくても座視していて黙っていてじっとしていて頭を使わずにいて、そんなふうに無駄に過ごしていていい時間とも思わない。


被災地にあって必要なもの、被災地に送るべきもの、いろいろあるけれども、まず第一に必要なのは「正確な情報」だと思う。
先のNZ地震のときにも閉じ込められた被災者がNZ→日本の家族→政府→大使館→地元の警察というリレーで発見、救助された例があった。
また、日頃幅拾い情報をいつでも自由に手に入れることができて当たり前の生活を送ってきた我々は、「今すぐ必要ではないこと」は自分で覚えたり自分の手元に置いて備えたりはしないのが当たり前になっている。
わからなかったら調べればいい、なかったら買いに行けばいい。自分は手軽でいればいい。
その平時の効率的なスタイルは、情報入手がいつでもできて、流通が完全に生きているときにのみ有効だ。
そして被災している状態というのは、その両方が寸断されているということだ。


かつての震災では、個人が情報を入手する方法はテレビ・ラジオ、それ以前は行政からの連絡を待つよりなかった。
だが、1995年の阪神・淡路大震災以降に急速に発達したインターネットのお陰で、「いつどこで」「誰が何を」といったテレビ、ラジオ、行政のお達しでは行き届かないごく精緻な情報を、一般人レベルで応酬できるようになった。
「今何が足りないか」
「現地にいち早く知らせないといけないことは何か」
まずそうした正確な情報発信、情報収集があって、それに基づいて初めて「必要なもの、不足しているもの」といった物資を効率よく選別して送ることができるようになる。


お叱りを覚悟で言うが、今、千羽鶴は要らないのだ。食えないし、嵩張って邪魔だし、ゴミになる。それを折って勇気づけるのだ、というのは援助者の欺瞞だ。いずれ必要になる、それで心が安まるという意見もあるだろうが、優先順位は最優先ではない


麻生政権が4000億円設定していた災害対策予備費や、石油と塩の備蓄、自衛隊災害救助活動のために必要な防衛費、地震再保険特別会計、耐震補強工事費、そういったものを「今すぐ必要があるわけじゃない」とあらかた仕分けしてしまった*1おうとしているのは、民主党の愚策によるものなのは間違いないけど、それを今被災地に向けて発信する意味はない。
これも、言うのは自由だ。平時の僕なら最優先で言う。でも、現時点での優先順位は最優先ではない
民主を叩くのは今じゃない。
ここぞとばかりに反原発を云々する輩も、今は黙れ。最優先事項はそこじゃない。


正確な情報を発信すること、誰かが言ったことを何度でも繰り返しReTweetすること、自分で思いつかなかったことでも、自分がリレーし、ハブになること、被災地に誰か知り合いがいるなら、声を掛けること、欲しいモノが何が教えること。
現地の情報は激しく錯綜し、専門家や行政の上位指示者などでも正しく判断するための情報が足りない状況だ。


インターネットという共有知のバックアップは、そこに情報を送り込む人、情報をリレーする人、集積する人、そうした一人一人の動きで成り立っている。
物資を送る準備はしとけ。
金があるなら出す準備もしとけ。
必要になったら、すぐに出せるようにしておけ。
物も金もないなら献血に行こう。
今すぐでなくてもいい。全血は一度献血すると再献血できるまでに数カ月かかるが、血小板献血成分献血)なら二週間置けばまた献血できる。一度の献血に掛かる時間は全血より成分献血のほうが長いが、いつも足りないのは成分献血だ。
献血は金も物も要らないが、必要なものだ。二十歳過ぎているなら誰でもできる。


新潟地震のときは、「カイロが足りないらしい」というキーワードだけが一人歩きして、現地で受け入れきれないほどのカイロが届けられた。
不要ではないが、必要以上あっては意味が無い。
誰が何を欲していて、誰に送ればよいか、どこに送れば正しく配布されるか、誰が窓口か。そういったものをまず見極める必要があり、それを調べるための道具として、目の前の箱、目の前の板がある。怪談とエロゲとニコ動と2chをするためだけの道具ではないのだ。こういうときにこそ生かせ。


そして、デマの訂正。
今、Twitterなどで飛び交っている情報のうち、明らかなデマとされているものが幾つかある。そのうちの幾つかは火消しReTweetによって「デマだった」ということが後から再配信されているが、その後に「デマじゃない」「デマだ」などが錯綜することで、本当にデマなのかそうでないのかが分かりづらくなっている。
現地にとって最優先で必要なのは正確な情報だ。
現地に情報を流す我々に取っても同様だ。

以下に、代表的なデマとその訂正事由を流す。


●千葉湾岸でコンビナートが爆発したので、有毒物質を含んだ雨が降る。レインコートは必須

デマ。
第一波発生直後にお台場と千葉で火災が発生した。お台場はテレコムセンターの隣のビル火災、千葉はコスモ石油の製油所の火災。
この火災ではLPガス(カセットコンロのボンベやタクシーの燃料)を備蓄していたタンクの液面が長振(長周期振動)によって揺れ、静電気で発生した火花から引火爆発した。
爆発したタンクの内容物はLGガスであって、これは人体に直ちに被害を及ぼす有毒物質ではない。
「千葉のコンビナートが爆発して〜」については、コスモ石油がデマ風聞を訂正するコメントを発表している。
http://www.cosmo-oil.co.jp/


ただ、その後福島第一原発の水蒸気爆発によって、外部に放射能漏れが起きた可能性があり、それらによる汚染などはないとは言えない。

ギークハウスで負傷者が助けを呼んでいる

デマ。
ドワンゴ社員の悪ふざけによるもので、早い段階でRTされ、また直後に当人からの謝罪があったものの、広く伝播されてしまった後だった。
http://digimaga.net/2011/03/miyagi-jishin-twitter-geekhouse-demagogie


ただ、実際に各地で負傷者、孤立者が助けを呼んでいる、手段がないなどの個別情報が出ており、それらの全てがデマなわけではない。
既に救助されたものもあれば、救助が間に合っていない、人手が足りないものもある。デマであっても確認が取れるまで黙殺できないし、確認が取れるまで動かないでいたら手遅れになるケースもある。

類似情報が流れていないか、発信時刻がいつか、消防などへの通知などをそれぞれ判断して行うしかないが、時間をおいて送られる重複通知を消防側が捌くためのシステム作りは必要かもしれない。既にあるのかもしれないけど、それらが周知されていないのであれば、今からでもそれを知らせ広める必要はあるかもしれない。

●トルコが100億円を支援する
デマ。
少なくとも現時点では確認できていない。
ニコニコ生放送2chなどを中心に広まったデマのようだ。
これに付随して「WCドイツ大会でトルコが日本を〜」のような裏付けのいい話が尾鰭として広まっているが、そこも嘘(事実誤認)でトルコはドイツ大会に出場していないそうです。そして日本はドイツ大会では一勝もしてない、とも。
http://togetter.com/li/110897


他にも、義援金募金詐欺が早くも登場している。
今回はネット募金も盛んで、Yahoo!ボランティア募金、@Nifty募金など様々な選択肢があるが、過去の実績から僕は今回も日本赤十字社による災害義援金への募金を推奨するし、僕もそこに出す。
他の募金を否定するものではないし、どこでも出しやすいところ、思いついたときに目の前にあるものでよいと思う。





日本には有権者――20歳以上の大人が、1億と440万人いるそうです。
仮にそのうち440万人くらいが今回の直接の被災者で援助が必要な人なのだとして……残り1億人。
一億人全員の財政状況は様々でしょう。
一山当ててウハウハの人。
失業中で他人どころじゃない人。
学生さん。
リーマン。
今、このページを見ている人。
飲みに行くのを一回我慢しましょう。
遊びに行くのを一回我慢しましょう。
昼飯のグレードをちょっと落としましょう。
もらった原稿料を一回分、「うっかり何かに使ったんだ、残らないものに使ったんだ」と思いましょう。
もらった印税を一回分、「実はそんな仕事はそもそも受けてなかったんだ」と忘れましょう。
それだけで、違うよ。随分違うよ。
一人5000円×1億人いたら、5000億円集まるよ。


政府の設定した今年の災害予備費は2000億円しかない。


でも、僕らが毎月1回自分の楽しいを我慢したら、毎月5000億円。
年間で6兆円を確保できるよ。
6兆円だよ?
それだけあったら、復興できるよ。
水浸しになった東北を、取り戻せるよ。



今、助けを求めている人は、いつか自分を助けてくれる人かも知れない。
その人を助けないと、いつか自分の番が回ってきたときに助けてもらえないかもしれない。
助け合い、ってそういうこと。
情けは人のためならず*2って、そういうことだ。


静岡県人は、常に東海地震のことを言われ続けて育ってきた。
どこかで地震が起きるたびに「次は自分」「次は静岡」と思ってきた。
駿河湾地震は軽微な被害で済んだけど、それだって運が良かっただけかもしれない。
だから、次に自分が困ったときに助けて貰えるよう、自分がそれほどじゃないときには誰かを助けに行かなければいけない。自分はいつでも動けるように、なんかいつもいろいろ備えてないと気が済まないのは、たぶんそういう後天性の県民気質だろうと、たぶんそう思うんだけど(^^;)







義援金のご協力をお願いします。

募金情報まとめ - 平成23年東北地方太平洋沖地震
http://sites.google.com/site/quake20110311jp/bokin

*1:確定事項ではないとの指摘があったので、未確定事項として訂正。2011/8/22

*2:「その人のためにならないから情けを掛けるな」とも受け取られるが、本則は「情けは誰かのために掛けるのではなく、巡り巡って自分に因果応報するものだ」のほう